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楽しい楽しいダンジョン攻略

 

 翌日には、ボスが考案した戦闘訓練プランによる地獄のダンジョン攻略が始まった。


 より実戦に近い形の方が覚えも早いだろうとガウルが進言したため、居住区を除くダンジョンの地下一階から十四階までを踏破する事となった。

 目標タイムは五時間。時間内にクリア出来なければこの訓練は永遠に続く。


 それに加え、ルールが一つ。


 武器を使っての攻撃は禁止。


 要はあの自爆魔法のみで勝負しなければいけないということだ。


 俺は三階層までしか行ったことがないが、スケルトンやグールくらいなら武器なしでどうにか出来る。

 けれど、それ以降の階層は未知数だ。

 どんな敵が出てくるかもわからない。わからないものには対策のしようがない。


 一応、使えそうな魔法は事前にピックアップしておいた。



 一、炎、火炎魔法。


 二、氷、凍結魔法。


 三、爆発、バースト魔法。


 四、重力操作魔法。



 思い浮かんで、尚且つ実用出来そうな所だとこのくらいか。

 炎は言わずもがな、他の三つも悲惨な状態になるのは目に見えている。


 本当なら戦闘訓練前にすべて試しておくべきだが、そんな勇気は俺にはなかった。

 確実に痛い思いをすると分かっていて試せるほど肝が据わっちゃいない。


 というわけで、ぶっつけ本番になるわけだが保険は用意してある。



「それじゃあ僕は、戦闘の邪魔にならないようにジェフの影に入ってるから頑張ってね。ヤバそうだったら死ぬ前には助けてあげる」


 それだけ言い残して、ロベリアは俺の影の中へ沈んでいった。


 一人でダンジョンに挑まなくて良いのは精神的に楽だ。

 実力不足は即、死に繋がる。


 その手前で助けてくれるというのなら多少の無茶も許されるというもの。

 再生能力に優れているからと言って死なないわけではない。頭や心臓を潰されれば即死だろうし、毒や窒息などの死因もあり得る。


 そう考えると、死ぬ手前で助けて貰えるのはまさに地獄に仏なのだ。




 ダンジョンは五階層毎にエリアが区切られているらしい。


 一から五階層までは死人や死霊。アンデット系の魔物が出現する。


 六から十階層は森と沼地のエリア。

 潜んでいる魔物は不明だが、ボスがダンジョン内へと繋げたエリアは外の世界の一部。人間の居住外に生息している魔物のテリトリーだ。

 もちろん、野生の魔物は弱肉強食が掟であるから、ダンジョンの上層にいるスケルトンやグールなどとは比べものにならないほどに手強いのは簡単に予想が付く。


 こればっかりは行き当たりばったりになりそうだ。


 十一から十四階層は古代遺跡のエリア。

 これもまた生息している魔物の予測が付かない。遺跡というのだから魔物の群れが居住していても不思議はない。


 そして、各エリアの最後には次のエリアへの侵入を阻むように手強い魔物が立ち塞がっているという。

 何がいるのかは行ってみてからのお楽しみ、とボスに焦らされたが悪い予感しかしない。



 準備するものは身一つで始まった、地獄のダンジョン攻略。


 足を踏み入れると早速、スケルトンとグールに囲まれた。

 熱烈な歓迎に吐き気がするが、幸い、こいつらのような死霊系の魔物は炎が弱点だ。

 物理攻撃で倒しても、ダンジョンの魔素を含んだ地面ではすぐに復活してしまう。

 けれど、焼き殺してしまえば再生時間を大幅に遅らせられる。特にグールやゾンビ等は死肉をたっぷりと付けているから良く燃えるのだ。そのぶん、臭いは強烈だが。


 というわけで、気は進まないが昨日習得した火炎魔法の使いどころだ。


「はあ……嫌だなあ」


 独り言を呟いて、襲ってきたグールの頭を鷲掴む。


 そのまま意識を集中すると、俺の右手ごとグールの頭が炎に包まれた。

 腐敗した肉は延焼も早いらしく、瞬く間に火だるまになっていくグールを一瞥して、ダンジョンの奥へと歩を進める。


 こうなってしまえば時間との勝負だ。

 炎が腕を燃やし尽くす前に地下五階まで駆け抜ける。

 アンデットどもは俺の炎を食らっただけで延焼して勝手に自滅するから、出会った敵を片っ端から殴りつけてどんどん進んでいく。


 こんなでは戦闘訓練、なんて言えないがまだ序盤だしウォーミングアップには丁度良いかもしれない。



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