さぁ、未来に続く終焉が迫り来る
シャングリラ・フロンティア型超大型サーバー。
その名の由来であるシャングリラ・フロンティアを除けば現在世界にこのサーバーを使ったゲームは二作しか存在していない。
そのうちの一つがネフィリムホロウ2であり、そのサーバーと繋げてのイベントという事は今この無印ネフィリムホロウは限りなくシャングリラ・フロンティアに近い自由度を疑似的に獲得しているということだ。
『……明らかに挙動の自由度が上がっている。公開デモプレイの時よりも』
理想郷の流れを汲むネフィリムホロウ2の摂理、その一端を見逃すようでは無敗の連覇を成し遂げられるはずもない。既にランカー達は追加されたパーツやアイテムを吟味しつつも、なによりも自身の「操縦勘」を次の世界の風に適合させるべく動き始めている。
『……モルド、今回のイベントどう思う?』
『ネフホロ2のお試し、って以上に無印と2の間の時系列をファイナルイベントにしました、って感じだよね』
ネフィリムホロウは現代文明の崩壊と共に三つの勢力が台頭する物語だ。それに対してネフィリムホロウ2は宇宙から落ちてきた超巨大三角柱の激突によってそれまでの勢力図が物理的にリセットされた世界だ。
言うなれば、結末の決まったシナリオ……プレイヤーがどれ程の戦果を上げたとて「大質量の激突と共に全てが終わる」という敗北の決着。終焉を前に、それでも楽しく踊り果てる最後の祭り。
『……でも、』
『でも?』
『……シャングリラ・フロンティアに触れて分かったことがある』
未だ完成を見ぬ、未完成の試作機でミッションボスを撃破したルストは四つ腕のネフィリムを足蹴にしながら己の推測を口にする。
『……あのゲームエンジンは……恐ろしくリアリティに固執している。だから、同じものを使ってるネフホロ2は……ううん、このイベントはきっと、記念撮影』
『記念撮影?』
『───未来の世界に、過去の私達が、何かを遺す為の』
『それは……そうだとしたら、素敵だね』
『……そうでなくとも関係ない。運営が用意してくれた総決算………全てを注ぎ込んで、生涯の思い出にする』
『人生のハイライト早くない?』
『……人が脚光を浴びる瞬間は、アイテムのドロップテーブルよりもなおランダムで難解』
◆
やぁ、俺だよ。グレイテスト・プロフェッサー・サンラクだよ。元凶の馬鹿二人が俺に全部押し付けて素材周回に行きやがったせいで何故か新規達のチュートリアルを人力で担当させられたあまりに偉大過ぎる教授だよ。誰がネフホロ道案内だ地獄ジェットの刑に処す。
俺は今、最後の卒業生を前に辛かった日々(三時間前)のことを思い出して胸を熱くする。
『あのガニ股ホバーからよくぞここまで……!』
『先生……っ!』
流れる涙を拭うように腕を顔に当てるが、ネフィリムに乗っているので金属に金属がぶつかる音だけが虚しく響く。だがこのポンコツドロップアウトガールはどれだけこうするんだそうじゃないと指導し続けても直立不動で空を飛ぶしホバーはガニ股だし銃を撃つために動きを止めるし……他の新規達が旅立っていく中でこいつだけが、こいつだけがひたすらに……くっ、何が悲しくて三時間もこいつのチュートリアルに苦心しなければならなかったんだ!!
『京極よ、お前が辿り着いた局地はいわゆる強襲ホバータイプに相当する』
『強襲、ホバー……っ!』
『遠距離狙撃に徹されると悲しい程に弱い、という弱点こそあるが近距離、中距離であれば多少空を飛ばれていようが対応できるポテンシャルを持つ。夢忘れるな京極……力は常にお前と共にある……』
『先生……っ!』
感極まったような声が聞こえてくるが、少なくとも無印のネフィリムは皆一律目を閉じた仏頂面のマネキンなので表情には感情もクソもない。
『というわけで切り替えていこう、結局のところストーリーなり対戦なりで鳴らしてくのが一番の練習になるし』
『んー、どうせならサンラク力貸してよ。ファイナルイベント? 見据えるならストーリーは最短でクリアしたい』
うーん……それ寄生……いやしかしなぁ、ファイナルイベントのためだけにルストが呼び寄せてるわけだし幕末と違ってこのゲームは京極のツボにもかすらないだろう……幕末適性の方が稀なはずなんだが。
『いいぜ、なるべくアシストに徹するけど』
『ん、ありがとう。』
久々にストーリーやるなぁ、最初は確か破壊されたネフィリムの調査とかだっけ、案の定動き出して戦闘になるやつな。そうなるとこれだとちょっとやりづらいし機体変えるか。
五分後。
『おまたせ』
『……なにその、何?』
『ストーリー攻略用ネフィリム「スパロウ-B」』
『スズメ……あ、いやB だからスズメバチか!』
『正解』
中距離から距離を詰めてパイルバンカーでコアブチ抜けば一撃で勝てますよね? という馬鹿思考で作ったネフィリムで、まぁどうせ後半は体力多いボスばかりだしその内変えるか、とタカを括っていたら中盤くらいまでそこそこ使えたという適当な思いつきから生まれた傑作アセンだ。
最終的にキングフィッシャーで全部なぎ倒す脳筋に落ち着いたけど対NPCネフィリム相手なら小回りのきくこっちの方がいい。コーラシアス・ライラック? 試作機の悪いところを詰め込んでるからダメです。
『じゃあ行くか』
『了解』
強襲ホバー、要するにドム




