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ドラ姫のおつかい:受注編

どうも神龍(シェンロン)硬梨菜です

「おーいノワリン素材くれーっ!!」


「ノワリン! お茶しようよ!」


「ていうかスクショいい?」


「ノワリン、ドラ姫ちゃんと仲良くなりたいので是非仲介を……」


「黒竜忍軍二軍(・・)鉄の掟を忘れたようだな……」


「くっ、もう追手が……ドロン!!」


「追えーっ! 緋色の傷ソロ攻略の刑に処せーっ!!」


「あ、ノワリン脱皮したくなったりしてない?」













『くどい!!!!!!!』


黒竜ノワルリンド、かつては人類の敵対者として前線拠点を半壊させたボスエネミーだったものの魂の叫びであった。


『なんなのだ! どいつもこいつも目が合えば話しかけてくるわ歩いていれば絡んでくるわ脱皮しろ脱皮しろとぉ……っ!!』


「なんだか平和な感じに大変なんですねノワルリンドさん」


ガッジガッジと何かの肉を噛みちぎりながら「構われ過ぎてウザい」とぼやく、竜災の一つとして黒を司っていた現スカルアヅチのマスコットキャラクター兼黒竜素材をドロップするイベントNPC。

そのサイズが大型犬サイズであること以前の問題として魂の牙が全て丸くなったような惨状に少女……恐らく単純な知名度で言えばシャンフロでもトップクラスの領域にまで躍り出た噂のドラ姫こと秋津茜は今、スカルアヅチの天守閣にてノワルリンドの愚痴に付き合っていた。


『何が平和なものか! 貴様らは昼も夜もお構いなしに脱皮脱皮脱皮とぉ……!!』


「あはは……私も最近はよく話しかけられるようになりましたね。やっぱりジークヴルム戦で目立っちゃったからですかね?」


ユニークモンスター「天覇のジークヴルム」、再戦可能であるとはいえ参加人数上限が十五人といちパーティの上限までしかない深淵のクターニッドを除けば参加人数数千人規模で行われ、大々的なイベントとなった黄金の龍王との大決戦。

ノワルリンドも含めた色竜達をも交えた文字通りの大戦において「主役」は誰かと聞かれれば、あの場にいた大半は秋津茜……黒竜と共にジークヴルムを討った少女を挙げるだろう。


尤も、あの大戦において一番目立っていたのは誰かという質問であった場合は何人かが秋津茜と比肩するかもしれないが……ジークヴルムが己が輝きの終焉を求める物語、その中心にいたのはやはり秋津茜だろう。


「よく超転身について聞かれるんですけど、私そこまで詳しくないんですよね」


己の影響を強く受けたモンスターとの一体化を果たす忍者の極致が一つ、竜の火炎を模倣する【竜息吹】に並ぶ刃隠しの奥義……【超転身】。

レベル上限を突破したことで習得した魔法であるが、ここである問題が発生した。というのも、現在レベル上限を突破した忍者ジョブのプレイヤーは何人かいるものの、その全員が等しく【超転身】を習得したわけではないのだ。


「ランダム、らしいんですよね。だからレベル上限突破で【超転身】が出なかった人はどうすれば習得できるのか答えられなくて……」


そもそも「ドラ姫ちゃん」の名声には忍者ジョブの情報を明らかにした功績も含まれている。【超転身】の詳細を明らかにし、ユニークモンスターと深い関わりを持つことで解放される「◯忍聖」の存在を明らかにした。

それによってそれまで弱くはないが盗賊と魔導士を混ぜた器用貧乏と揶揄されていた忍者の人気を再燃させた一因でもある秋津茜は控えめに言って時の人なのだ。


そもそも人里に長く現れることが稀で、追いかけようにも路地裏で忽然と姿を消したり足を踏み入れた瞬間に即死トラップが作動するかのような水晶の魔境を突き進んでいったりと捕捉そのものが困難などこぞの面白ヘッドと異なり、そこそこ見つけやすく受け答えもしてくれる秋津茜に人が集まるのは当然である。

本人の性質もあって「ちょっと忙しいな」レベルの感情しか抱いていないが、もしこれがアーサー・ペンシルゴンなどであれば間違いなくキレる程度の喧騒の中に秋津茜はいた。


『ぐぐぐ、前々から思っていたが秋津茜!』


「はいなんでしょうか!」


『お前は律儀過ぎる!!』


「そうですかね?」


『そうなのだ!!』


本人達は至極真面目だが、おすわりの姿勢でふんぞり返る大型犬サイズのドラゴンとちょこんと正座でそれを見る狐面の少女というなんとも言えない緩い空気の漂うやりとり。

そこへ通りかかったストレスレベルゼロの笑みリアが微笑ましげにその様子を見つめていたが、やはり当人達は真面目に会話しているのでその視線に気づく事はなかった。


なお、笑みリアであるが大体十分後にクラン「黒竜忍軍二軍」の内ゲバでスカルアヅチの床が一部崩落してストレスレベルがMAXになる。


『ふん、我が居城としては悪くはないがいかんせんここは騒々しいに過ぎる。おい秋津茜、こうなれば我が新たな玉座を……そう、少なくとも朝まで静かに眠れるような場所を探すのだ』


「あ、私が探すんですね」


『そうだ、この我に相応しい場所を見つけたならば……秋津茜よ、貴様に褒美をくれてやろう』



その瞬間、秋津茜の眼前にウィンドウが表示される。内容は通常のクエストとは異なる、今この瞬間だけに紡がれる物語───


『ユニークシナリオ「黒竜のお使い:別荘探し」を開始しますか?』


今、お使いと呼ぶには少々規模の大きいミッションが始まる。


『ああそれと城下で売ってるらしい串焼きを二十本』


「遠慮ないですねノワルリンドさん!?」




……


…………


………………




とはいえ、だ。このユニークシナリオはそう単純ではない。


「うーん……」


秋津茜は背後から聞こえる笑みリアの怒号に好奇心という名の後ろ髪を引かれつつもスカルアヅチの裏口へと向かう。笑みリアが何かにキレているのはよくあることなのだとノワルリンドに会うためにスカルアヅチへと通っているうちに秋津茜は学習していた。

具体的には新大陸の建築関係で意見を求められる事が多い(そのせいでNPCに間違えられていたこともある)笑みリアは常に何らかの問題と直面し、そして一定ラインを越えると噴火する。最近では森人族の里復興に関して何やらゴタゴタがあったとか何とか。


それはそれとして、だ。秋津茜の脳裏に蘇るのはラビッツで偶然サンラクとサイガ-0の二人と居合わせた時の会話…………





◇◇◆


「ユニークシナリオの進め方?」


「はいっ! ユニークシナリオって具体的に何をすればいいのか明かされないことってあるじゃないですか、だからお二人に聞いてみたくて!!」


「俺はそこまで詳しくないからなぁ……レイ氏は?」


「そう……ですね、基本的に……ユニークシナリオは、ハッピーエンドを、目指す……感じかと」


「なるほど確かに、EXともなると何がしたいのかよく分からなくなるけど」


「あはは………ええと、基本的にユニークシナリオはリアルタイム進行……なので、傾向を掴むのは困難ですが……その、会話の中や目的の中に、クリアのヒントは隠されて……いますから」


「成る程……そうなんですね、ありがとうございます!」


「どっかの鰹野郎には縁の無い会話だぁ」








即ち、このユニークシナリオもただ単純に新たな寝床を探せばいいという訳ではないのだろうと秋津茜は結論づける。

ノワルリンドも自分も少々顔が売れている、それ故に大々的に動けば新しい寝床を見つけてもスカルアヅチの二の舞になるだけだ。ではどうすればいいのか?


「隠密行動……!!」


とても忍者らしいその響きに、当時は微妙ジョブと言われていた忍者を率先して選択したプレイヤーの一人である秋津茜は心を躍らせる。誰にも気づかれることなく、ノワルリンドの新たな別荘を見つけ出すこと。

ノワルリンドからのユニークシナリオ、そのハッピーエンドをそう解釈した秋津茜は(本人的には)用心深く辺りを見渡しながら行動を開始する。


「おうお嬢! 何してる?」


「あ、オーロンさん! ええっとぉ……スニーカーミッションです! それでは!!」


「????」


スニーキング(・・・・・・)ミッション開始三秒で蜥蜴人族に捕捉されたものの、秋津茜は夕暮れの前線拠点に駆け出すのだった……。

・スカルアヅチ事情

基本的にプレイヤー作の建築物であり、不特定多数のプレイヤーが出入りするため新大陸に到達さえすればプレイヤーなら好きに入城することが出来る。

とはいえ好き勝手に破壊されても困るので笑みリアはNPCを内部に住まわせることで「セキュリティ」を適用している。

このセキュリティとはNPC、または「NPCの生活」を害するとカルマ値が溜まるというメタ視点からの忌避感を利用したものであると同時に、無辜の信徒(・・)が困れば隣接する三神教が動かざるを得ない事を利用したものである。

つまりスカルアヅチで粗相をするとカルマが溜まるしジョゼット達が出張ってくるしそれはそれとして笑みリアがキレるということ


なお秋津茜は天守閣まで完全顔パスである。

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― 新着の感想 ―
この話、続編は書かれないのですかねぇ、神龍硬梨菜殿。 なんやら、トンチンカンな結果になりつつも、ドラ姫のリアルスキル『超幸運』と『超光属性』で、『よく判らないけどパッピーエンド』と化して、誰か本来なら…
[一言] 旅狼メンバーで桃鉄をやったらどうなりますか?
[一言] 何気なく国王が入れなかった場所に出入りしている光属性よ…
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