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第57話:デートの相手

挿絵(By みてみん)



「「ど、土曜日!?」」


「あ、うん…土曜日…」


 翌日の木曜、食堂にてmm(みり)と急遽土曜日に会うことになったことを瑛人と雪弥に説明すると両手をテーブルに勢いよくつき前のめりになった。


「土曜日って言ってるけどなお前、今日はもう木曜だぞ!?つまり会うのは明後日ってことだ」


「そ、そ、そんな急で大丈夫なの!?」


「おれだってこんなに急になるとは思ってもいなかったよ。でも来週中にはみんなでオフ会するってまりさんが言ってたから」

 今思えば全ての元凶はまりさんのあの一言だ。

『4人で生配信しよー!』だなんてテキトーなこと言うから。


「……忠告したとはいえ、嬌太郎(きょうたろう)がこんなにも積極的とは思わなかったな…」

 瑛人が呆然とした。


「でもさ、mm(みり)って…」

 っと、同じ市に住んでるなんて言えないよな。


「え?今私の名前呼んだ?『りみ』って聞こえたけど」

 たまたま近くを歩いていた莉未がおれ達のテーブルの前で立ち止まった。


「ん?いや呼んでないけど」


「そう?ごめんね聞き間違えだったみたい。じゃあね」


「うん、じゃ」

 莉未の名前は呼んではないけど…、そういえばmmと莉未ってちょっと似てるかも。


「あれ?莉未さんと嬌太郎くんって日曜に発表にしたんだよね?ってことは莉未さんも土曜に予定ある感じかな?」


「たぶんバイトじゃないかな。今じゃバイトリーダー的存在らしいよ」

 おれもyou〇ubeの収益ばかりに頼っていないでバイトもしないと、就活の際に苦労するかもしれないし。


「2人とも予定があるなんてなんやかんや仲良くみえるよな」

 瑛人が腕を組み大きく頷く。


「はいはい、まあ友達として仲良くなる分には全然…いいんだけどな…」

 なんだろう、この胸の中のわだかまりは。

 おれはまだ莉未のことを引きずっているのか…?

 いやでもおれは…。


「あのさ嬌太郎」


「ん?」


「お前そんな服装で彼女と会うわけじゃないよな?」

 瑛人が顔を引きつらせながらおれの服をまじまじと見つめた。


「え…、なんで?だめなの?」

 確かに莉未と別れてからファッションに無頓着になったとはいえ、まだまだ通用していると思っていた。


「だめっつーか…、なんかいつもよれよれの服着てるし、そのままそれを着ていくのかと思うと心配になったんだよ」

 指摘され服を見ると確かによれていて所々痛んでいる。


「じゃあ、瑛人今日服選び手伝っt…」

「あー、わりぃ、今日はバイトなんだわ」


「そっかあ、じゃあ雪弥一緒に…」

「ごめん!僕そういうのセンスないから…」


 2人に即答され言葉を失った。


「てかそれくらい一人で行ってこいよ、最近はユニ〇ロとかジー〇ーでそれなりに揃えられるぞ?」

 その”それなり”の基準が分からないんだよな…。


「どしたの?嬌太郎。服買いに行くの?」

 トレイを持った莉未がまたまたおれ達のテーブルに立ち寄ってきた。


「あ、うん、たぶん」


「たぶん?嬌太郎ってあれ以来自分で服買いに行ってる?」

 あれ以来、というのはおれと莉未が別れてからのことを差しているのだろう。


「行ってない…かな」


「だろうね、だってその服私が選んであげたやつだもん」

 そうだった…てかおれが着ている服の大半は莉未のアドバイスをもとに買ったものだ。


「手伝おうか?」


「え?」


「だから、服選び手伝ってあげようか、って」


「え?いいの?」


「うん、ちょうど私も今日街に行くところだったから」


「ほんと?助かるよ!」


「じゃあ午後の講義終わったらそのまま行こうね」


「うん」

 約束を終えると莉未は友達の待つテーブルへ向かって行った。


「…なあ、今のってデートの約束ぽくなかったか?」


「だよね、僕もそう思った」

 瑛人と雪弥が向き合ってニヤニヤと笑う。


「なんでだよ、たまたま街に行くってのが被っただけだよ」

 まあ確かに…そんな風に言われると少しだけ意識しちゃうかな、…少しだけ。


「そっかそっかー、まあ楽しんで来いよ、嬌太郎」

 おれは2人をにらみながら残りのカレーを口にかきこんだ。


 ♦♢♦


「んじゃ、楽しんで来いよー」


「ばいばい、嬌太郎くん。明日感想教えてね」

 2人はおれの肩をポンポンと叩き去って行った。


「嬌太郎、いこっか」

 教室から長い髪をなびかせ莉未が駆け寄ってきた。


「あ、うん」


「瑛人くん達は?」


「どっか行ったよ」


「そうなんだ」

 …約束しておいてなんだが、一緒に駅まで行き電車に乗りそして一緒に買い物までする…。

 考え始めたら急に胃が痛くなってきた。

 大体莉未には好きなやつがいるってのにおれはこんなデートまがいなことをしていていいのか?

 まあ誘ってきた莉未も莉未なのだが。


「どうかした?」


「え!?い、いや別に…」

 急に顔を覗き込まれのけ反った。


「そう?じゃあ早く行こ」


「うん…」


 ♦♢♦


 いつもの電車に乗り街へ着きおれ達は駅前の店舗にあるジー〇ーに来ていた。

 よく分からないがユニ〇ロとかジー〇ーを着こなせる人程ファッションセンスが高いとかなんとか。

 正直おれには無縁な話しだ。


「これなんかどう?」

 莉未がシャツを手に持ちおれを呼ぶ。


 …付き合ってた頃を思い出すな。


「ああ、うん。いいと思う」


「てきとーすぎー」

 莉未は口を尖らせた。

 下はこんな感じでいいんじゃない?

 シンプルな方が嬌太郎には似合うね、など彼女は積極的に選んでくれた。


 結局おれは全身莉未が選んだ物を購入した。


 店の外へ出ると

『じゃあ私はほかに行くところがあるから』と言ってデパートの方へ向かった。



 これならmmと会う時に着ても大丈夫…だよな。

 どうせなら伸びてきた髪も切ろうと思いさっそく明日美容室へ電話し予約し、帰りの電車に乗るため駅へ向かった。


 ♦♢♦


 翌日の午前、美容室にて流行りの髪型にしてもらい万全を期し、アパートへ帰った。


 今日は講義が休みなため明日のスケジュールを組むことにした。

 えーっと、まずは駅前のあの喫茶店で挨拶をして…その次は…。


 PCで人気のランチ店を検索しているとスマホが鳴った。


 プルプルプル…。


 瑠美ちゃんからだ。

 嫌な予感がするな…。



 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――

『…もしも』

『よおー!!!嬌太郎!!!』

 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――


 うわっ!うるさっ!

 鼓膜が破れていないか心配になりスマホを離し耳穴に、スポッ、と軽く指を入れた。


 …良かった、聞こえるな。

 鼓膜の自主検査を終え、スマホの通話をスピーカーモードに設定し、音量を最小にした。


 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――

『おーーい!!!聞いてんのーー!!』

『聞いてる聞いてる、どうしたの?瑠美ちゃん』

 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――


 まあ聞いてなかったんだけど。


 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――

『だーかーらー!莉未ねぇが明日デートするんだって!』

 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――


 え?莉未が明日デート?

 バイトじゃなかったのか?


 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――

『そうなんだ』

『え?相手って嬌太郎じゃないの!?』

『違うよ、別れたのにデートするわけないじゃん』

 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――


 瑠美ちゃんはまだおれと莉未の復縁を望んでいたのか。


 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――

『バカ!!』

『え?』

『え?じゃないよ!莉未ねぇが他の男に取られてもいいの!?』

『いいの、って言われても。そんなの莉未の勝手だしさ、おれがどうこう言うことじゃないよ』

 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――


 莉未の心はもうその違う男に向いているんだ、おれが今から何をしても遅いさ。

 …っておれ何考えてるんだよ。


 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――

『嬌太郎の、バカバカバカバカ!!…バカ!!!』

 ―――― LI〇E【瑠美ちゃん】 ――――


 プツッ。

 終始声を荒げていた瑠美のことが、パッ、と止んだ。


 …デートか。

 どんな男なんだろうな、おれが知っている情報としてはかなりのゲーム好きってことだけだけど。





 ―――― はあ……今はそんなことは忘れて明日のプランを考えよう。






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