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第44話:か…カップルじゃないから!




AP〇X大会当日。



 大会とはいうものの、プロゲーマーが集まるものではなく実況者やアマプロの人が集まる程度の大会ではあるが当然腕の立つプレイヤーが多い。

 ”TI〇Ru”さんや”N〇RU”さん、アイドルの”山〇涼介”さん等錚々たるメンバーが揃っている。

 しかし雪弥(廃リバー)は彼らに匹敵するほどの腕前、要するにおれとmmが上手く立ち回ることさえできればなんとか……なるかもしれないという希望もある。

 作戦は単純なものでおれとmmが囮になった際に雪弥が狙撃し、その後すぐに合流。

 リスクも大きいが3人にとってこの立ち回りが最もしっくりきたので今回はこれで行こうという作戦になった。


 大会が始まるのは17時、まだ6時間も残っている。

 おれはリフレッシュの為スター〇ックスで一息入れに行くかと靴を履いた瞬間にLI〇Eが鳴った。

 ん?莉未?

 以前和解した後に再度交換していた。


―――― LINE【莉未】 ――――

『嬌太郎、少しいい?』

『なに?』

『ちょっと会って話しない?』

―――― LINE【莉未】 ――――


 相談事かあ?今それどころじゃないんだよなあ…まあでも。


―――― LINE【莉未】 ――――

『いいよ、どこで話す?』

『そっちのス〇バに行くよ』

『おけ、じゃあ先に行って待ってるから』

『ありがとね』

―――― LINE【莉未】 ――――


 はあ…重い話しじゃないといいんだけど。


♦♢♦


30分後。


「ごめんね、嬌太郎!」

 慌てた莉未は多少息を上げスマホを見ていたおれのテーブルの前で立ち止った。


「あ、いいよ。そんなに急がなくてもいいの。コーヒーなにか飲む?買って来るよ」


「え?いいの?カフェラテのショートでお願い、後でお金払うね」


「はいよ」


 レジに向かう途中、椅子を引き、ふぅ、と呼吸を整える彼女の音が聞こえた。


「ほい」


「ありがとね、いくらだった?」


「いいよべつに、ここまで来てくれたんだし」


「ごめんね」

 莉未はおれが渡したカップに両手を添えた。


「それで?話しって何?」


「あ!そうだった!えーっと…私今日ちょっとした 競技に出るんだよね」


 競技?莉未って陸上でもやってたっけ?


「へぇ、そんな時にここに来て大丈夫なの?」


「うん、夕方から始まるから少し落ち着こうと思って」


 そりゃ誰だって緊張するよなあ、でもおれは今朝、mmのお陰でリラックスできたかな。


「でもさ、おれでいいの?友達とかに話した方がいいと思うんだけど」


「嬌太郎がいいと思ったの。友達には気遣っちゃうし時間割いちゃうのも悪いしさ…」


 まるでおれが暇人みたいな言い草だな…。

「まあいいけど、競技がどうしたの?調子悪いとか?」


「ううん、なんかすごく緊張してきちゃった…というか上手くいかなかったらどうしようって…」


「不安、ってことか」

 莉未がコクコクと首を縦に振った。


「でもさ、今までたくさん練習してきたことなんでしょ?なら大丈夫だよ、自信もっていきなよ」


「……うん」


 そんなに不安なのか…?

「莉未、おれ用事あるからその競技ってやつは見に行けないけど、応援するよ。大丈夫だよ莉未なら」


「え…」


 莉未はキョトンとしおれを見つめた。

 …なんかまずいこと言ったか?

 そういえば彼氏ができそうとかなんとか言ってたような……余計なこと言ってしまったか。


「ありがと…」


「え?」


「なんか少し落ち着いてきたかも…」


「あ、ああそれならよかったよ」


 よかったあ、なにか地雷でも踏んだのかと思った。


「嬌太郎も今日用事あるんだったね、邪魔してごめんね」


「いや、おれも夕方からだからこうやってリラックスしに来てたんだよ」


「リラックスってことは何か緊張すること?テスト?」


「違うよ、緊張してたのはある人のお陰である程度落ち着いたんだけどやっぱり少しふわふわしちゃってさ。ってまあ莉未と同じく競技、みたいな感じかな?」

今朝mmと話せたのは正直おおきかったな。


「一緒だね、なんか用事が被ることを多いよね」


「あー、そう言われてみればそうだね。別れた後でもここまで被ってるとさ…」

っと…これ以上はあんまり言えないな…。


「何?」


「いや、なんか変な感じするなあって…」


「あぁ…うん」


 気まずくなっちゃったな。

 とりあえずお開きにして帰ろう。


「おれ準備とかあるからそろそろ行くよ」


「うん、ごめんね迷惑かけちゃって。いいよ、相談くらいならいつでも」


「ありがと、お互い頑張ろうね」


「だね、じゃ」

 莉未がなんの競技に出るか少しになったけど気まずい空気に耐え切れず飛び出してしまった。


♦♢♦


 13時。

 まだ時間があるけど…練習するか。

 おれはいつものように射撃訓練場に籠った。


♦♢♦


 14時になると雪弥からLI○Eが来て、3人で通話をしようとのことだった。

 そうだな、そろそろアップでもしておかないと。

 mmにもメッセージを入れ通話を始めた。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『もしもし』

『はーい』

『よかったmmさんも来てくれたんだ』

『さすがに来るよー、むしろ待ってたよ』

『もしかしてmmも練習してた?』

『うん、してた!』

『なんだ、おれもやってたから誘えばよかったよ』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


 ス〇バ行かないでmmと練習しておけばよかったよ。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『じゃあ早速3人で練習しよっか、準備大丈夫?ロキくん、mmさん』

『いいよ!』

『できるよー』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


 AP〇Xで使う各々のレジェンドと武器は決まっている。


 おれ(ロキ)は”ランバード”で武器は”R302”と”フラットレイン”

 mmは”ホライズン”で武器は”メネシス”と”ピーズキーパー”

 雪弥(廃リバー)は”レヴァナント”で武器は”ウイングメン”と”ディボーション”


 俺の武器に関しては2人が考えてくれて一番しっくりするものに定着できた。


 そろそろ出場の時間なのでリーダーの雪弥が手続きをしてくれた。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『あー、緊張してきた!』

『mm大丈夫だよ、がんばろうね』

『ありがとロキ』

『なーんかカップルみたい…なんてね』

『な、なに言ってるの!?』

『はあ!?』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


 雪弥の天然発言に揺さぶられた。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『冗談だってー。え…それともほんとにカップルなの??』

『なわけないでしょ!』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


 なわけないでしょ…か。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『やめようぜ、大会前にこんな話し』

『ごめんね、そんなつもりなかったんだけどさ』

『あ、ううん。こっちこそごめん、普通に受け流せばいい話しだったのにね』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー




ーーーーー こうしてそれぞれ想いを寄せたまま大会にのぞくことになった。






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