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第42話:一応人気ゲーム実況者なんだろ?

挿絵(By みてみん)



「今日のきみは″どろぼう″かな?」


「え?どろぼう?ああ、昨日の続きですか?何も盗ないよ」


「違うよ」

手を後ろに組み背を向けた。


「…じゃあなんですか?おれよく分からないんだけど」


「はあ…きょーたろうくんは鈍感だよ、鈍感すぎる」


「あ…ごめんなさい…」

何が言いたいんだろう。


まりさんは振り返りニコリと笑い言葉を返した。

「ウチの気持ちを盗んでほしいってことだよ」


「まりさんの気持ち…」


「そうだよ、mmちゃんと居るより楽しいと思うよ?…一瞬に居てほしいんだ」

ゆっくりと笑顔が崩れていく。


「あの…おれ…まりさんは…」


「答えを聞かせてよ、素直な気持ち」


おれの気持ちは…


「バカだなー、きょーたろうくんはー。いつまでウチの冗談に乗せられちゃうのかなー。そんなんじゃ知り合いに宗教か何かに連れて行かれるよ?」


「え?冗談…?」


「うん、てか分かったんだよー、きみの考えてること、そしてきみの……」

まりさんは言い終える前に口を結んだ。


「おれの…なに?」


「ううん、ありがとね。話せてよかった」


「おれさ、まりさんのことは…」

あのね、まりさん…。


「あー!用事ができたー!ごめんねー、ウチ行かない…バイバイきょーたろうくん」


「あの!まりさん!!!」

どこかへ行ってしまいそうなまりさんに声をかけた。


「……」

無言のまりさん。

背を向け顔は見えないがどんな顔をしているかはなんとなく想像がついた。


「好きです…まりさんのこと」


「ちーがうよ。分かるの。その"好き"はウチが欲しかったものとは違うんだよ。…行くね、遅れちゃう」


確信をつかれた、そんな気がしたおれは夜道を歩いて行くまりさんを呼び止めることができなかった。




その後、まりさんから通話も来なければメッセージさえも来なかった。

どう声をかければいいのか分からずこちらから連絡をとることをできずにいた。


♦︎♢♦︎


3日後


「今日は?」


「んー…」


「でもそろそろ合わせて練習しないと…」

雪弥は飲んでいた麦茶をテーブルに置いた。


学食で瑛人と雪弥の3人で昼食をとることにした。


「AP◯Xの大会?だっけ?そんなに気張っていかねーとダメなの?」

瑛人が割り箸を割りカツ丼に手をつけ始めた。


「だってみんな本気なんだよ、僕達も真面目にやらないと…」


「そうだな…今日やろっか、3人で」


まりさんの一件以来おれの中でまた問題が発生していた。


mmと一緒に練習するのが難しい現状に、まりさんの言葉が突き刺さっているのだから。


練習…大会……、おれちゃんとできるのか?

このままだと間違いなく雪弥とmmに迷惑をかけてしまう。


どうすればいいんだ…。



講義が残っている雪弥と別れ、瑛人と帰えることにした。


「嬌太郎」

瑛人がポケットに手を入れ前を向き歩く。


「なに?」


「なんていうかさ……、お前自分の中のわだかまりを全部リセットしてみろよ」


「リセット?」


瑛人はいつになく真剣な表情をしていた。


「お前一応人気ゲーム実況者なんだろ?だったらそんなつまんねー顔してないでただゲームを楽しむことだけ考えてみろ」


ただゲームを楽しむ…か。


「おれそんな顔してた?」


「おいおい、気づいてなかったのか?この世の終わりみてーな面してるぞ」

立ち止まってドン引きされた。


「まじかよ。でもリセットって言われてもどうしたらいいか分かんねーよ…」


「…嬌太郎、今からおれが言うのは独り言だ。静かに聞いてろよ」


「は?…まあ分かったよ」

独り言ってなんだよ?


「高校の頃、気になる女の子が2人いたことがあったんだよ、まあその時点でどうなんだよって感じなんだけど。それでさ、どうしていいか分からなくなって行き詰まって何もかも上手くいかなくなってたんだよ」


「意外だな、瑛人ならその子たち両取りしてそうだけど」


「おい、話しを最後まで聞けよ」


「あ、ごめん」


「気になる女の子がいるってのはすげーいいことだったよ、今思うと青春してたんだなあって。でもその時おれ思ったんだよ、恋愛も大事なのかもしれないけど行き詰まるくらいなら今をただ友達との遊びや部活楽しみたいってな」


「…後悔してないのか?」


「ああ。それにな、この話しには続きがあるんだ。おれはあの時女の子への感情を捨てて、部活とか友達との遊びを優先してたんだけどサプライズがあったのよ」

瑛人は焦らしながら話した。


「なんだよサプライズって」


「それがさあ、ある小さなキッカケであの時気になってた片方の女の子と付き合うことになったんだよ。なんか運命さえ感じたよ。それにおれはあの時の決断を間違えていなかったんだって、ちょっと誇らしく思えたっていうかさ」


「偶然だよ、それは…」


「そう、偶然かもな。でもたとえその子と結ばれなかったとしてもおれは後悔はしないぜ。あ、ちなみにもう1人の子とは友達として仲良くしてたよ」


「……」


「これはおれの実体験。まあいつか嬌太郎には話したいと思ってたからちょうど良かったよ」


「ちょうどいいってなんだよ…」


「べーつに。まあそういう人間もいたんだなって覚えておいてくれよ。んじゃおれ、こっちの道だから、また明日な」

眠そうに語った金髪は信号を渡り自分のアパートへ帰っていった。


…あいつ。


明日休みだぞ…。




ーーーーー 自分の好きなことをやる…か











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