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第41話:今日のきみは”どろぼう”かな?

挿絵(By みてみん)



―――― 好きなんだよ、きみのことが。



ずっと好きだった。


はっ、目を覚ますとおれはアパートのベッドの上に居た。

どうやらまりさんのあの一言以降の記憶が飛んでいたようだ。


きみのことが好き。


きみっておれのことだよな…。

って……あれって告白!?!?

まりさんが…えー、えー!?


まりさん=そまりは昔からの仲であるがリアルで顔を合わせたのはつい最近。

嬌太郎はまりをゲーム実況者仲間としか考えていなかったのでその事実を処理できずにいた。


待てよ、まりさんがおれのことを好き…ずっと前っていつからだ?

昔コラボに誘ってくれた時か?

いやそれはないな、あの時はただの知り合いというか他人だ。

だとするとその後数ヶ月に渡って一緒にゲームをしていく中でって…自分で考えるの恥ずかしいな…。

連絡とれずにいた時も好きでいてくれたのか?

分からない…。

そもそもあの発言が事実なのかどうかも怪しい、もう一度聞いて確かめる必要がある。


とりあえずメッセージで聞いてみよう。


―――― SNS【そまり】――――

『まりさん、昨日のことってほんと?』

―――― SNS【そまり】――――


果たして返事が返ってくるのだろうか。

まりさんのことだからテキトー言っておれをからかったに違いないさ。


プルプルプル

え?通話の通知だ


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『やっほー、昨日のことー?』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


ほら覚えてない、仕事で疲れてたから変なこと言っちゃったんだよ。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『うん、ラーメン屋出た後でさ』

『あー、きょーたろうくんのことを好きってこと?』

『うん…え?』

『ほんとだよ?』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


…え?

覚えてたの?


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『冗談でしょ?』

『あのさー、そういう発言は乙女には失礼じゃないかなー。ちゃんと好きって言ったじゃーん』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


いやいやいや、まったく状況が飲み込めないんだいけど。

…違うな、この状況をおれが受け入れられないのか。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『なんでおれのことなんか』

『なんでって、好きになるのに理由なんて必要かい?』

『だっておれ』

『ウチにとってきみは大事な実況友達でもあるけど、それ以上に特別な存在なんだよ』

『どうして?いつから?』

『わかんない、気づいてたら好きになってた』

『おれさ』

『返事が欲しいわけじゃないんだよ。ただ、伝えたかった。それだけ』

『返事って…』

『ウチ分かるんだよ。きょーたろうくんはmm(みり)ちゃんのことが好き。だからウチは傍観者…でいるつもりだった。けどダメだったよ、どうしても叫びたかった。わがままでごめん、…ゆるしてね』

『おれ別にmmのこと…』

『分かるよ、”そまり”は”ロキくん”の素質を見抜いた有能な人間だもの。…ありがとね。これからも仲良くしてよ、じゃ』

『あのさ!』

『…』

『もう一度会えないかな』

『……今日同じ時間に同じ場所に来てよ』

『今日!?』

『うん!早く来てただ働きしてくれてもいいよー、じゃあねー』

『あ…うん、じゃあ行くね』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


昨日言われたばっかりなんだけど…。


♦♢♦


今日は午前から莉未と合同研究の打合せがある、いちいち研究室に行くのも面倒なので学食で話すことにした。

一緒に昼食をとるのはいつ振りだろう。


「まあ大体はこんなとこかな、嬌太郎はどう思う?」


「え?あ、ああうん。いいと思うよ」

やっべ聞いてなかったな。


「聞いてなかったでしょー」


「ご、ごめん」


「何かあった?考え事?」


「まあ…」


「なになに?」


言えねーなー、告白されたなんて…。


「告白でもされたの?」


「え!?」

なんで…見られてたのか!?


「あ、図星なんだ…。へぇ、嬌太郎に新しい彼女かあ…」


自分で言い当てにきたのにどうして悲しそうな顔をするんだよ。


「別に付き合うって決めた訳じゃないよ」


「でも迷ってるってことは少なからずその人のことを大事に思ってるってことだよ。嬌太郎のその表情を見えれば分かるよ。この前まで付き合ってた彼女だもん」

莉未は芯の通った言葉を並べたが不器用な笑顔を浮かべていた。


「でもどうしたらいいか分からないんだよね、急に好きなんて言われても…」


「ってことは今まで友達としか見ていなかった存在、ってとこかな?」


えぇ、どこまで見透かされてるんだよ。


「あ、うん…」


「って首をつっこみすぎるのも良くないね。私は嬌太郎に幸せになってほしいよ、だから自分自身と向き合ってじっくり考えて後悔のない選択をしてね」


「…わかった」


「シャキっとしてよ、この感じだと研究の話しもまとまりそうにないから私いくね。バイバイ、嬌太郎」

おれを勇気づけるため全力で後押しをしてくれた莉未は早足で出て行った。



―――― 幸せ…おれの幸せってなんなんだろう



♦♢♦


講義が早く終わり14時にアパートに戻った。

ゲームの編集ができていない、最近は何かも上手くいかない…というよりは何もかも手につかない。

どうしてこうなってしまったのか、何が変わった?分からない…。

もうすぐ大会が控えているというのに雪弥とmmに迷惑をかけている。

特にmmとプレイすると立ち回りがグチャグチャでmmとの連携がとれない、ついこの前まではこんなことはなかったのに。


大会は2週間後、早く3人で練習を始めないと。

…でも今日と明日は上手くできそうにない。


雪弥にmmと練習してくれと連絡しよう。


本当はmmと一緒に練習をしたい…話しながらいろんなゲームをしていたい…。


真っ暗なディスプレイを眺め呆然をmmのことを考えていた。



…mmはただの友人だ。

おれはただただそう自分に言い聞かせた。


♦♢♦


19時半

少し早いがおれはまりさんの店の近くに来ていた。

一瞬遠くから店内を覗くと忙しそうに接客する彼女が見え、いつもとのギャップに鼓動が早まるのを感じた。


20時になり店が閉まる時おれは向かいの店に背を向け背後からまりさんに声をかけられるのを避けた。


すると彼女は店の裏口からいつもの青いキャップを被り少し疲れた表情で現れた。


「あ、おつかれ。まりさん」


「おー、来てくれてたんだー」


「そりゃ来ますよ、おれが言い出しっぺなんで」

あれ…敬語になっちゃったな。


「そーだったねー」

いつもはヘラヘラと笑っているまりさんだが今日は少し大人しいように感じた。


「昨日のことを話しにきたんです」


「うん、知ってるよ?」

横を向き帽子のツバと茶色い髪で目を隠した。


「ねえ、きょーたろうくん」


「はい?」




―――― 「今日のきみは”どろぼう”かな?」





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