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第40話:そんなに気になる?

挿絵(By みてみん)



ようやくプラチナか…。

ここ数日間実況動画も撮らず配信も交えて延々とAP○Xとしていた。

試合の前後にかならず射撃場に籠りエイムの上達を図った。


♦♢♦


「お前AP○Xばっかりやりすぎじゃね?視聴者も飽きるぞ」

瑛人は缶チューハイを手に説教をしてきた。


「…でもやるしかないんだよ」


久しぶりに瑛人のアパートで二人で飲んでいる。


「まあ雪弥も大会出るんだあ、って息巻いてたけどよ。えーっともう一人のメンバー誰だっけ…んー」

酔いが回ってきたのだろう思考が停止し始めている。


「mmだよ」


「あー、その人。お前らほんと仲いいよな」


「別にー」


「……怪しい」

瑛人はニヤリと笑った。


「は?」


「mmさんのこと好きになっちゃったとか?」


「な、何言ってんだよ、それはない…って」


「はいはい、でもな親友ってのはある程度のことは察することができるんだぜ」

持っていた酒を飲み干し缶をテーブルに置いた。


「嬌太郎がその子のことを好きならおれは全力でサポートする。だからなんでも言ってくれ…よ…」

半開きだった目が閉じ瑛人はテーブルに突っ伏し眠りに入った。


テーブルに置いてある缶をキッチンに移動し、ありがとうな瑛人、と言い残しアパートへ帰えることにした。


おれはmmを好きなのか…

いやmmはただの友人だ…

この二つのワードを頭の中でぐるぐると回しながら歩いているとあっという間にアパートに着いていた。


考えた末出た結果は、mmは友人だけどただの友人ではないということ。

ただの友人ではない、という結果に至ったのは何故だろうかと考えようとしたが、ここにきて酔いが回りそのままソファで眠ってしまった。


♦♢♦


ここ最近は毎晩のようにmmとAP○Xの練習をしている。

雪弥とプレイするとどうしても偏ってしまうため、3日に1日程度の間隔で合同練習をしている。

だが少し困ったことがある。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『ロキ!そっち行ったよ!』

『…あ、うん』

『大丈夫!?今私も行くから!』

『ありがと』

『ロキ…?あ!やられちゃった…ごめんね』

『こっちこそごめん』

『どうしたの?ロキ』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


いつも野良や視聴者とやる時はいい感じなのだが、mmと一緒にやるとなると集中できなくなってしまったのだ。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『ごめんね…』

『最近ちょっと連携ミスが多くなっちゃってるよね。頑張って合せるからもう少しやってみよ?』

『ねえ、mm』

『なに?』

『あ、ごめん!なんでもない…や』

『…どうしたの?何かあった?』

『それが分からないんだよ。mmと一緒にやるとなると上手く動けないっていうか…。mmが嫌だとかじゃないよ?ただおれが立ち回れてないっていうか…』

『私がだめなのかな…』

『それは違う!でもごめんどうしていいか分からない』

『分かった、じゃあ少しの間個々に練習しようか。それで、ロキが上手くできそうだなって思ったら私のこと誘って。いつでも待ってるから』

『ごめんね』

『謝ることないよ、頑張ろうね!じゃあ今日はここまでにしておこうね、バイバイ!』

『うん、おやすみ』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


最低だな、絶対嫌な思いさせちゃったよ。

でも本当にどうしていいのか分からないんだ。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢


通話を終えた莉未。


(嫌われてるのかな…)

自分との連携が上手くできないと言われた莉未は悲しみに溢れていた。


(私が強く言い過ぎたのかな、武器のこと押しつけちゃったからかな…)

自身に非がないことも知らず、彼女は一緒にAP○X始めた頃からのことを事細かに思い返していた。


(うーん…どうしよう…。嫌われたくないよ…)

莉未は謝らなくては、と思いスマホを手に取ったがしつこいと思われ余計に嫌われてしまうのではないかと思い、メッセージを飛ばすことができなかった。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦


5日後、嬌太郎はプラチナ帯でレベルを上げついにmmと共にラックマッチをできるようになった。


が、以前のこともありmmを誘うに誘えずにいた。


どうせまたこの前みたいに足引っ張っちゃうよな…。

嬌太郎がここまで彼女に対してネガティブな感情を抱くのは初めてだった。


プルプルプル、PCの通話通知だ。

mmか?…じゃないか。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『やっほー』

『なに』

『なに、とはなんだ。失礼な子だなー』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


まりさんってほんと唐突だな。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『明日20時うちの店集合!じゃ!』

『は!?ちょっ!』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


プツッ…


はあ?どういうことだよ。

また手伝いでもさせられるのか?

いやでも20時って店閉めする時間だよな。


…もういいや、気分転換に行ってみるか。


毎日AP○Xに明け暮れ、mmのことでも悩まされていたおれにとってこれは都合のいいものだったものかもしれない。


♦♢♦


翌日19時。


電車に乗りまりさんの古着屋の最寄り駅で降り近くの本屋で時間を潰しながら20時になるのを待った。

おっと、もう20時か、店に行ってみるか。

そこに着くとまりさんが店内から鍵をかけ店の奥へ歩いて行くのが見えた?


ん…約束忘れてないよな?


不安になったおれは店のドアの前まで来て中の様子を伺った。


いないな…。


「きゃー、どろぼー!」

後ろから女の人の低い声が聞こえた。


えぇ!?

ビクっと肩を浮かせゆっくりと振り向くとそこ居たのはまりさんだった。


「どろぼー!」

スピーカー状に両手を口の脇にあて頑張って低い声を出している。


「ちょっとまりさん!流石にそれはだめだって!」

周りに人があまりいないとはいえ勘違いされたら厄介だ。


「えへへー、だってきょーたろうくんがウチの店覗いてるんだもーん」


あんたがおれに一言かけて裏から出て来ればよかっただけでしょう。


「うるさいなあ、てかなんか用あるの?」


まりさん(そまり)は3歳年上だがタメ口を強いられている。


「まあまあまあ、ご飯でもいこーよー」

おれの肩を叩き軽快に前を歩いて行った。


「あ、待って!」


はやくはやくー!

と走り出したまりさんを追いかけた。


♦♢♦


「で、どうなの?」

ズルズルッ


「まあ上手くはなりましたけど」

ズルズルズルッ。


今日はまりさん行きつけのラーメン屋に来ている。


「ふーん」


「ふーん、て何?そもそもどうして呼んだの」


何か意味があるのか?

ただこのラーメン屋を教えたかったのか?


「べーつにーぃ」

麺を掴むのを止めてなるとを突き始めた。


「なんだよ…じゃあ食ったらおれ帰るね」


「だめだよ」


「へ?」

箸を止めまりさんを見るとその瞳はおれの瞳と繋がった。


「だめだって言ってるのー」


「な、なに言ってんだよ」


「話したいんだもーん」


「そんなの通話で十分じゃん」


「えー、だっていつもmmちゃんと廃リバーくんと話してるじゃーん」


まあ確かにまりさんと通話するタイミングは少なかったかな。


「分かったよ、明日とか話そうよ」


「あのさ、きょーたろうくん」

チャーシューを口に運びながらおれを呼んだ。


「何?」


「どうしてウチがきみに秘密を打ち明けたか分かった?」


秘密って、まりさんの両親が大変だったって話だよな…。


「おれがしつこかったからでしょ?」


「分かってないなー、ワトソンくん」


ワトソンくん??


「分からないよ」


「このラーメン美味しいっしょー」


「いやいやラーメンの話しはいいから」


「ラーメン屋はラーメンを食べるところであって談笑する場所ではないんだよー」


あなたが話しを振ってきたんでしょうが…。


♦♢♦


ラーメンを食べ終わり店を出て二人並び駅まで歩く。


「さっき何言おうとしてたの?」


「あー、あれ?気になる?」

まりさんは後ろに手を組み上を見た。


「気になるよ、途中で言うのやめちゃうんだもん」


「そーだよねー」


「あのさ、きょーたろうくん」


「ん?」


「今からウチ大事な用事できるから急いで行かないといけないんだー」

歩くのをやめ立ち止った。


「できるから?どういうこと?」


「細かいことはいいの」

真剣そうな顔に違和感を持った。


「だからちゃんと聞いてね」


「あ…うん」


彼女は夜風に飛ばされそうになった青いキャップのツバを押えた。





「好きなんだよ、きみのことが。ずっと好きだった…」





「え…」


「……あ!ウチ用事できたんだった!じゃあね!」

彼女は外灯に照らされたアーケード街を駆けて行った。




嬌太郎の頭の中は真っ白になった。



―――― だけど彼女の真剣な表情だけはしっかりと刻まれていた。




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