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第37話:なんか似てない?

挿絵(By みてみん)



莉未りみmmみり…そまり=相馬真梨そうままり

この3人は嬌太郎にとってどのような存在なのだろうか。

彼は3人に対し恋愛感情などは抱いていないが、視聴者のコメントにより”何か”を気づかさせられた。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦


大学の講義は全て憂鬱だが最も苦痛を強いられる時間は合同研究だ。

何故か研究のペアを組むことになってしまったおれと莉未は話し合いもままならず研究など捗ることはなかった。

そんなある日ペア研究が終わり部室の鍵を締めに行こうとした時、莉未に声を掛けられ耳を疑った。


「嬌太郎…この後少し時間ある?」


別れて以来莉未から呼び止められたことがなかったからだ。


「え…まあ」


「ス○バで待ってるね」


「あ、うん、部室の鍵締めたらすぐ行くよ」


「ありがと」

彼女はか細い声じゃあねと告げ歩いて行った。

話しってなんだろう、研究のことならさっき話せばよかったろうに…。


おれは小走りで部室へ向かい鍵を締め待ち合わせ場所へ向かった。


♦♢♦


店内に入ると隅の二人用のテーブル席に莉未が居た。

適当にブレンドを頼みそのテーブルへ歩いた。


「ごめん、待たせたね」


「ううん、大丈夫」


二人でここへ来るなんていつ振りだろうか。

…しかし空気が重い。


「用ってなに?研究のこと」


「違うよ。これを嬌太郎に返さなきゃと思って」

莉未がバッグから取り出したのは指輪だった。


「これ…」


「うん、記念日に嬌太郎が買ってくれた指輪だよ」

莉未は手のひらに乗せていたそれを優しくテーブルに置いた。


「まだ持ってたんだ、別に高い物じゃないんだから捨てて良かったのに」


「捨てられないよ、これは」


「…だから返すってことなんだね」


「うん、ごめん」



―――― 別れるってこういうことなんだな。



「分かった引き取るよ」


「ごめんね、これだけが心残りだったの」


どうしてだろう、声が出てこない。


「新しくできた彼女さんを幸せにしてあげてね」


「え?彼女?」


「え…うん。この前彼女ができたって聞こえたから…」


「あ、あれは瑛人と雪弥が茶化しただけだよ。おれはバイト先の店長と会っただけだし」


「え…」

莉未は口を開け絶句した。


「じゃあ、じゃあさ。メールしてて気になってる人がいるっていうのは??」


「えーっと…仕事…いやバイトの打合せでメールを少ししてるくらいで特に気になってるってわけじゃないかな」

mmとゲーム実況のコラボの為のメールなんて言えないかなあ。


「でもあの時気になってるって言ってたじゃん!」


「あれは莉未が気になってる人が居るって言うから張り合って言っただけだよ」


「じゃあ…付き合ってる人も気になってる人もいないってこと??」


「まあそうなるね」

おれがそう答えると、彼女は気が抜けたのか、ゆっくりと背もたれに背をつけた。


「あのさ、おれのことはいいけど莉未は彼氏できたんじゃないっけ?」

以前研究室で様子がおかしかったから冗談をかましたら顔を真っ赤にしてたんだよな。


「できてないよ。私もバイトの連絡事項を確認してるだけのような感じだし…」


んー、でもこの前の様子からしてその人のことを好きなんだと思うけどなあ。


「応援するよ」


「え?何が?」


「莉未はその人のことが好きなんだよ。ずっとそばに居たおれにはそんなことすぐ分かるよ」


「…別に私は」


「この指輪、おれが引き取るね。処理は任せて」


「嬌太郎…」


「もういいから、ありがと色々と話してくれて。なんだろ、これで晴れて別れたんだなって実感できたよ」

今後会う度にお互いに嫌な思いをすることはなくなるのかな。


「じゃあ行くね。また明日学校で」

この場合先に出て行くのはずるいのかもしれないが、おれは一刻も早くここを立ち去りたかった。

幸せになってほしいなんて口にはしたけど心の中のどこかでまだ整理はできていないのだから。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦


その日の晩


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『ねえロキ?』

『なに?』

『…あのさ』

『ん?』

『そまりさんとの動画見たよ、すごくおもしろかった』

『ああ、見てくれたんだ。ありがとね』

『仲が良くて少し嫉妬しちゃったよー』

『なんだそれ』

『楽しそうだなーって思った!』

『そう?おれはmmとのコラボ楽しかったよ』

『ほんと??』

『うん』

『ならよかった』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


嫉妬…か。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『少し相談してもいいかな、ゲームの話しじゃないんだけど』

『うんいいよ。どうしたの?』

『mmはさ、元カレに新しい彼女ができたらどう思う?』

『うーん…まあ気持ちはよくないよね。かなり苦しいと思う』

『そうだよね、気になる人がいるっていうから背中を押したけどその先は見たくないというか…』

『うん…私はそうやって彼につらい思いさせちゃったかもしれない』

『そうなの?でもまあ別れたならお互い次に進むことは悪いことではないから自分を責めることはないと思うよ』

『そう思ってくれてるといいな』

『えーっと、あのさ…さっきから気になってたんだけど、mmって好きな人いるの??』


『え!?どうして?』


『いや、なんかそんな感じの発言してるからさ』

『べ、べべ、別に!好きな人なんて…』

『あれ、いないんだ。勘違いかな、ごめんね』

『……ううん』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


mmどうしたんだろ、なんか地雷踏んじゃったかな…。


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『mmに好きな人がいて、コラボするのが気まずいんだったら言ってね。対応するから』

『そんなことな…』

『大丈夫だよ、おれが全力でサポートする』

『……』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


え、またなんかまずいこと言ったか?


ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー

『あー、なんかごめんね。プライベートに干渉しすぎたね。また今度話そうね、今日はありがとう。またね』

『あ…うん。おやすみロキ』

ー♢ー♢ー♢ー通話中ー♢ー♢ー♢ー


mmの歯切れの悪い”おやすみ”を聞いたが罪悪感を感じた嬌太郎は自分勝手だが急いで通話を切ってしまった。

恋愛相談なんてするべきじゃなかったのかな…、今度謝っておこう。

莉未といいmmといい二人とも好きな人がいるんだなあ。

なんかコラボもやりづらくなっちゃったな。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢


通話を切られた莉未はというと。


(ロキ…、私が好きなのはロキなのに)


引っ込み思案で受身な莉未は自分の想いをロキに告げることはできなかった。


(嬌太郎に背中を押してもらえたのに私は何もできない…だめだなあ…)

(…なんだかロキと嬌太郎ってどこか似てるような…どことなく話し方も似てるし…。気のせいかな)


ロキとmmが使用している通話ツールは音質がものすごく悪いため声質も変わるのでお互いに正体を掴めないでいる。


(いつか伝えないとね)


告白をすると決心し、その後動画の編集を行った。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦


大学の売店前、いつものように二人を待つ。


「あっ」


いつもより早く現れたのは瑛人でもなく雪弥でもない、莉未だった。


「おはよ、嬌太郎」


「あ、うん。おはよ」


昨日のこともあり彼女はおれを友達として接することができるよう平然を装い挨拶をしてるように見えた。


「昨日はありがとね、じゃあ先に教室行ってるよ」


「うん、わかった」

情けない、昨日あれだけ大見得を切っておいてこんなざまでは…。


しばらくすると雪弥が到着した。


「おはよ、嬌太郎くん」


「おはよ」


二人で瑛人を待っていると思い出したように雪弥が口を開いた。

「あ、そういえばさ」


「なに?」


「今度AP○Xの大会出ない??」


「はあ?無理だよおれ下手だし」

実況で何度かやってたけどエイム悪すぎて話にならなかったんだよな。


「大丈夫だよ。僕がキャリーするし大会までまだ時間もあるから練習もできるよ」


いくら雪弥がプ〇デターランクだからってゴールドのおれを引っぱるのはきついだろ…。


「あれ、でもさ、そういう大会って普通トリオじゃない?」

大会見たことあるけどデュオでやってるの見たことなあ。


「そうなんだよね。でもさmmさんってAP○Xやってたよね?」


「あー、確かに。そこそこ上手かったかも」


「じゃあ誘ってみてよ!」


「は??」


「3人でやってみたら絶対楽しいよ!」




―――― 無理だよ、昨日の今日で誘うのは…。




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