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しゃしんさつえい

「町長さん、ピースしてー」

「へ?」


町役場をブラブラしていると、急に声をかけられたので、ビックリしつつもサービス精神が旺盛なのか、とりあえずピースをした。

その直後、フラッシュの光に思わず目をつむってしまった。

その声をかけてきたのは、女の子と手をつなぐ小さな男の子だった。


「あれ? 君…」

「はい。あの時はありがとうございました」


前に道で迷ってたのを秋原さんが声をかけてオムライスを食べさせた子だ。

…文章で書くと、超展開だな。


「今日は何かご用ですか?」

「時雨にみせるんだー」

「しぐれ?」

「うちで飼ってる猫の名前です。ちょっと色々ありまして、地図をつくるんです」

「ほー」

「それでわかりやすいように写真を撮ってるんですけど、せっかくだから人も撮ろうと思って」


確かに、建物だけじゃなくて人も撮ったら覚えやすいな。

商店街の八百屋さんのとこのおっさんとか、駄菓子屋のおばちゃんとか。あとは天狗さんも撮れたら面白そう。


「それで町長さんも写真撮りました」

「あー全然構わないよー」

「それで秋原さんもお礼をかねてご挨拶を…」

「あーちょっと待っててねー」


俺は町長室で俺の戻りを鬼のように待っているであろう秋原さんを呼びに行った。


「町長! 何してるんですか!」


案の定怒られました。

怒られながらも、とりあえず要件を秋原さんに伝える。


「そんなことより、下に前のオムライスの妹さんが来てますよ。秋原さんにお礼を言いにきたんですって」

「オムライス? あーあの子ですか」


そう言うと、一緒に町長室を出て下へと降りる。

そして訪問者の二人のもとへと戻った。


「お待たせしました」

「こんにちわ」

「わざわざお礼に来たんですって?」

「はい。ついでですけど」

「ついででも嬉しいわよ。何か飲み物でも…」

「いえ。まだ仕事が残ってますので、これで」

「そう?」

「じゃあ秋原さんも写真に協力してください」

「写真?」


秋原さんが、妹さんの持っているカメラを見ながら聞いた。

そしてさっき俺にしたようなことを秋原さんにも伝えた。


「へぇ。でもなんで私? 町長ならわかるけど」

「記念です」

「ふーん。まぁいいけど」

「じゃあピースしてー!」


弟くんの声に、ピースをした秋原さん。それを妹さんが見事に撮影。


「ご協力ありがとうございました」

「いえいえ。地図、頑張ってね」

「はい。兄も喜びます」

「兄?」

「町長バイバーイ」


秋原さんの不思議そうな顔に向かって手を振った姉弟は、そそくさと町役場を出ていった。

秋原さん、きっと気づいてないんだろうなぁ。

あの写真は地図に使うものじゃないんだろうと俺は睨んでいる。

あぁ哀れなり秋原さん。

思い出したときには遅いんだろうなぁ。

とにあさんの天音ちゃんと出くんをお借りしました。


この写真の行方は、とにあさんの『時雨』をお読みくださいませ。

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