おつかれの秋原さん
「はぁ…」
「どうしたんですか? そんな大きなため息なんてついて」
いつものように町長室で仕事をしていると、秋原さんの大きなため息が聞こえた。
顔を上げて声をかけると、ハッとした顔でこちらを見た秋原さんと目があった。
「あっ、すみません」
「お疲れですか? 少し休んでてもいいですよ?」
「いえ、大丈夫です」
「どうかしました?」
そこで俺はハッとする。
まさか…
「まさか俺がちゃんと仕事しないから…」
「違いますって。町長が頑張ってるのはみんな知ってますから。それに私が一番近くで仕事してるんですから、町長のことは一番認めてますよ」
聞いたのはこっちだけど、なんかここまで言われると恥ずかしいな。
秋原さんは続ける。
「はぁ。実はですね、日生さんって覚えてます?」
「覚えてますよ。あのカタコトの人ですよね」
「そっちで覚えてましたか。そうです。その人です」
「その人がどうかしたんですか?」
「日生さんが、しつこいんですよ。水着コンテストに参加しろ参加しろって」
そういえば言ってたな。
秋原さんに詳細を聞いてくれって言ってたけど、秋原さんに聞いても教えてくれないし。
「毎年参加してるんですよね?」
「私はしてないです。参加してるのは前町長のお爺様ですよ」
「えっ、じいさんの水着…」
どこに需要が…
「何言ってるんですか。審査員としてです」
「ですよねー。でもあれ、何気に人気でしたよね。俺も見に行ったことありますけど」
「先に言っておきますけど、私、絶対に出ないですからね」
「…初代クイーン」
「うっ…な、何故それを…」
「見に行ったことあるって言ったじゃないですか。町長たるもの、町の歴史を知っておくのは当然です」
「余計な歴史まで調べないでください!」
まぁ元水族館だったところに飾ってあったのを見ただけなんですけどね。
バーって眺めてたら、なんか見たことある顔があって、そこにいた若い子に聞いてみたら、ご丁寧に教えてくれた。
水着コンテストって若い子達に人気あるんだよな。特に男子。
「秋原さんの水着姿とか見てみたいなぁ」
「何言ってるんですか。こんなおばさんの水着姿なんて見たいと思う人いないですよ」
「そんなことないですよ。秋原さん、全然綺麗ですし」
「ダメですよ。おだてたって参加はしませんからね」
「じゃあ初代クイーンとして審査員で参加すればいいんじゃないですか?」
「その呼び方やめてくれません? 外で呼んだらいくら町長でも許しませんからね」
「すみませんでした」
「でもまぁ審査員としてなら…考えないこともないです」
そして秋原さんは審査員として参加することを日生さんに電話するのであった。
とにあさんの日生さんをお借りしました。




