捕獲かーらーのー?
前回の続きで、さかなんとかさん視点でした。
僕は今、目隠しをされています。
町長室で町長と秋原さんがイチャイチャしているのを見てしまい、なんやかんやあって町長室から出ようとしたところで何者かに腕を引かれ、そのまま目隠しをされ、手を縛られ、どこかの部屋に連れて行かれ、椅子に足を固定されて座らされている始末である。
とはいえ、町役場でこんなことをするのは誰かさん以外他にはいないだろう。それに会話を聞いていれば誰かはすぐに分かった。
「さぁ、いい加減に町長室で何があったのか教えてもらいますか! 坂田くん!」
「誰ですか! 完全に人違いです!」
「まぁまぁ。みんなにとって嬉しい出来事じゃないですか。別にスキャンダルにしようとかそういうんじゃないからさ。吐いちゃいましょか♪」
「怖いですって。香我見さんも佐々木さんもいい加減にしてくださいよ。僕だってまだ仕事中なんですよ」
「佐々木!? 誰やそいつ! そんなやつ知りませんな!」
「ほら見てみぃ。バレバレやないか」
そう。もちろん企画課の二人だ。
きっと首謀者は、秋原さん関連になるとものすごい行動力をみせている佐々木さんだろう。香我見さんはなんとなく面白そうだから一緒についてきただけだろう。
「坂之上田村麻呂さんが早く吐いてくれれば早く帰れるんです! さぁ、秋原さんと町長が何してたんか吐いてもらいましょうか!」
「その人誰でしたっけ?」
「征夷大将軍ですわ」
「あーなるほど」
「キミら、僕の話聞いてる?」
「あーごめんごめん。なんか飽きてきちゃって」
「香我見クゥン!?」
声だけしか聞いていないはずなのだが、なんとなく顔まで想像できてしまう不思議。
「だいたい、あんなんいつもの二人を見とったらわかるやん。互いにいい感じなんやから佐々木クンが入っていけるスペースなんてないねん。二次元の世界に行けるぐらい不可能やねん。アホ」
「アホってなんや! そこまで言うことないやん! 香我見クンのアホー!」
ドタドタドタと音が聞こえ、ガチャンと扉が開いて閉まる音が聞こえた。
そしてため息が聞こえたあと、香我見さんが目隠しやらなんやらの拘束を外してくれた。
「ありがとうございます」
「いやいや。こっちこそ悪いことしましたわ。勘弁してやってくださいな」
「あはは」
「そういえば町長と秋原さん、なんかあったんです?」
「あー、ちょっとイチャついてるのを目撃してしまいまして……」
「あちゃー。決定的瞬間やないですかー」
「そうなんですよ。きっと今頃住民課の窓口に来た人に、内村さんがバラしまくってることでしょう……」
「先が思いやられますな。お互い、相方に振り回されてますな」
「たしかに言われてみれば……」
「そろそろ戻ります?」
「あっ、戻ります。じゃあ佐々木さんにもよろしく言っておいてください」
「任せといてくださいー」
ヒラヒラと手を振る香我見さんに背を向けて、早足で住民課へと戻った。
「で、その時に榊くんが変なごまかし方をしてたんで、私カマかけてみたんですよ。そしたらもうみんな図星だったみたいでー」
遅かった……
住民課に戻った僕が見たのは、受付で3・4人ぐらいのおばちゃん相手にトークショーを繰り広げている内村さんだった。
僕は心の中で、町長と秋原さんに謝っておいた。




