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お蕎麦と友人

隠れた名店を知っているのもまた町長である。

とはいえ、ただ商店街にある蕎麦屋さんに入っただけなのだが、長年続いているということはそういうことなのである。そこそこ美味しいのだ。

そんな蕎麦屋にショッピングモールの鹿島さんと一緒にお蕎麦を食べに来た。


「俺はまだ何も情報を得ていないぞ」

「まぁいいじゃないですか。それに、商店街の人の中にはショッピングモールのことをよく思ってない人もいるみたいですから、あんまり露骨にそーゆー話しちゃうと目つけられちゃいますよ?」

「ホント…まぁいいや」

「仕事の話はやめましょうよ。妹さんにも嫌われちゃいますよ?」

「ふん。あんたに言われたくないよ」


俺が小さく笑うと、鹿島さんも小さく笑った。

看板娘の女性にそれぞれ注文した。

俺はとろろそば。鹿島さんはたぬきそば。


「仕事以外の話って言われても、そこまで共通の話題があるわけでもないだろ」

「いえいえ。今日はちょっと友人ということでちょっと相談したいことがありまして」


『友人』という言葉に眉を動かした鹿島さん。


「特に町長さんと友達になった記憶はないけど」

「まぁまぁ細かいことはいいじゃないですか。これからの付き合いということで。一緒にこうして蕎麦食べに来てるじゃないですか。引越し蕎麦だって『これから長く続きますように』とかって意味を込めてるじゃないですか。それと一緒ですよ」

「はいはい。まったく屁理屈なんだか本音なんだかわからんことばっかり言いやがって……で?」


コップに入った水と氷を口に含んで、鹿島さんはゴリゴリとそれを噛み砕いた。


「実は今度バザーをやろうかと思ってまして、どーしたらいいかなーって考えてるんですよ」

「バザー?」

「フリーマーケットよりもちょっと小さめで小規模なものです。北小学校の体育館でやろうかと考えてます」

「ほう。それでなんで俺に? そんな小規模ならうちの商品がなくても回るだろ」

「だから相談ですって。それに商品を並べたらフリーマーケットじゃなくて、ただの露店ですよ」

「裏がありそうで怖いんだよ」

「無いですってば。でも協力してもらいたいのは確かですね」

「ほら見ろ」

「でもこれは強制的じゃなくて、『友人』としてのお願いです」


ここまで言ったところで、注文していた蕎麦が到着した。

割り箸を持って、それぞれいただきますと呟く。

そして一口すする。


「んで?」

「モール内にもポスターを貼ってくれないかなーって思いまして」

「……それだけか?」

「それだけです。だからお願いだって言ってるじゃないですか」

「さっきも言ったけど、裏がありそうで怖いんだよ。その笑顔の裏に何を隠してるのかわからんが、俺には笑ってるようには見えん。脅されてるように見える」

「ハハハ。錯覚ですよ。一応あーゆー黒い一面を見せてるのは鹿島さんだけなんですから、他の人には内緒ですよ?」

「誰に言うか。誰も信じてくれないだろうよ」

「そんなわけでお願いされてくれますか?」


そう聞くと、鹿島さんは蕎麦をズズズとすすって飲み込んだ。

そしてもう一口すすり始めた鹿島さんを見て、俺も蕎麦を一口すする。


「ポスターだけなら貼ってやるよ。貸しを返すようなもんだしな」

「貸し? 俺は何も鹿島さんに貸してないですよ?」

「……あっ」

「ね?」

「なんで貸しを作ったと思ってたんだ…」

「だから俺はそこまで深くは考えてないですって」

「ほんと町長さんといるとペースが乱される気がしてならねぇ…」

「まぁここは俺が奢りますんで、それの貸しってことでポスターの件、お願いしますね」


食べ終わり、鹿島さんが水を氷ごと口に含んでいるあいだに、伝票だけをゲットした。

ハッと驚いていたが、ポスターを貼ってくれるというなら安いものだ。


「これはポスターの設置代だと思ってください。出来上がり次第郵送で送りますんで、また送ったら連絡しますね」

「あぁわかった」


会計を済ませ店を出ると、暑い日差しが出迎えてくれた。


「ではまた後日ご連絡を」

「なぁ」

「はい?」

「敬語やめろよ」

「敬語、ですか?」

「あんた、俺よりも年上だろ? それに友人に対して敬語ってのはどうなんだよ」

「……」


まさか敬語をやめろと言われるとは…。

まいっか。


「じゃあ…また連絡する」

「おう。仕事、頑張れよ」

「鹿島さんも頑張って」

「ハハハ。責任者なんてもんはそんなにすることないんだよ。責任取るのが仕事だからな」

「ウソ! 俺なんか毎日書類とにらめっこなのに!」

「まぁ職種の違いだろ。今度はゆっくりと話そうぜ」

「お酒でも飲もうよ」

「いけるクチか」

「そこそこ」

「ハハハ。楽しみにしてるよ。じゃあな」


ひらひらと手を振って歩いていく鹿島さん。

俺も町役場に戻るべく、鹿島さんに背を向けて反対側へと歩いていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


町長の敬語じゃない喋り方がわからんw


YLさんへ

勝手に鹿島さんを友達にしちゃいました。

もしも不快に思われましたらご連絡下さいませ。w

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