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町長の初舞台

就任してまだ1週間そこそこ。

こんなやっとこさ業務を理解した俺に初めての仕事が舞い降りてきた。

いや、舞い降りてきたっていうのは変だな。舞い込んできた。なんかしっくりこない。


「何一人でブツブツ言ってるんですか」


そんな町長の机でぶつくさ言っていた俺を、秘書の秋原(あきはら)さんが呆れた顔で見ていた。

いやはやお恥ずかしい。

ヒールをカツカツとならしながら俺の元へと近づいてくる。


「町長なんですから、もっと威厳たっぷりでいてください」

「威厳って言われても、やっと仕事覚えたばかりですんで、ちょっといっぱいいっぱいです。それにそのへんの重役さんの方が威厳あるじゃないですか」

「それでも町長がオドオドしていたら、ついてくる人もついてきてくれません。威厳は無理でも、町長としての自覚は持っていてください」


眼鏡の端をクイクイと上げながら秋原さんは言う。

秋原さんは、秘書業10年目の35歳。まだ未婚で、仕事が仕事なせいで出会いもないらしい。なんかごめんなさい。

じいさんの前秘書の後任として働いていたのだが、じいさんが俺に町長の座を引き継ぐ時に、サポート役にとこちらも引き継がせてくれたのだ。一応『じいさんの2人目の秘書』という形で知ってはいたのだが、互いに顔見知りという程度で、そこまでの関係はなかった。

この町長としての仕事も、秋原さんからほとんど教わり、重役さん達との顔合わせの時も間に入ってフォローしてくれたおかげで、スムーズにことが進んだ。

もしかするとじいさんは、最初から俺を町長にするつもりでこの秋原さんを育てていたのではないだろうかと思ってしまうほどだった。

そんな秋原さんが、スケジュール帳を取り出して今日の予定を確認する。


「今日の予定ですが…」


午前中は書類に目を通してハンコを押す雑務。

そして午後からは、『うろな町』の教育の関係者を集めた『うろな町の教育を考える会』というものに、町長として参加する。


「というわけで、町長が言い出しっぺのことなので、しっかりと頑張ってくださいね」

「確かに言い出しっぺですけど、重役さん達も秋原さんも賛同してくれたじゃないですか」

「でも言い出しっぺは町長です」

「はいはい。そこで挨拶するのは、自分の言葉でいいんですか?」

「そんなわけありません。私がキチンと準備しておきましたので、これを暗記してください」


そう言って一枚のメモを渡された。

そこまで長くないけど、俺が言いたいようなことを簡潔に、なおかつわかりやすく手短にまとめられていた。

さすが秋原さん。前の会議の時に、俺が重役さん達を説得させるためにあれやこれや言ったことを、うまくまとめてくれたのか。これはじいさんも泣いて喜ぶだろうな。


「って、暗記?」

「もちろんです。あたかも町長自身のお言葉であるかのように言わなければなりません。アメリカの大統領だって、手元を見て話さないではないですよね。あんなの日本だけです。それにお爺様だって暗記してましたよ?」


たしかにじいさんが手元を見て話しているところなんて見たことない。

これは素直に従ったほうがいいと判断し、早速覚えることにした。

しかしその直後、秋原さんがドサリという音とともに、町長の机の上に大量の紙束を積み上げた。

その紙束のタワーの横から顔を覗かせて秋原さんが言う。


「これ、午前中までに全部目を通して、受認・否認を分けてください」

「…これ、全部ですか?」

「はいそうです。私はまだ別の仕事があるので、またあとで見に来ますね。では」


そう言って町長室から出ていった。


「…頑張るか」


目指すべき理想の町長への道は、まだまだ険しそうだ。





その後、夕方に開かれた『うろな町の教育を考える会』では、完璧に暗記した内容をスラスラと堂々と読むことができ、秋原さんに見直され、重役さん達からも親指を立てて『グッド』のお褒めをいただいた。

そしてちょっと思いついたことがあって、せっかくたくさんいるのだから、各機関との連携を取ればいいじゃないということを思いついたので、最後に提案してみたところ、うろな中学校の清水さんという新任の先生が協力してくれることになった。

でもそのあとに秋原さんからは減点を貰い、重役さん達からは首を振られて『それはないわー』の減点をいただいた。

町長の道は長く険しいものだ。

清水さんともの名刺を交換し、また何かあれば連絡を取ろうということになった。

なんにせよ顔は広いほうがいい。何かあった時のためにすぐに連絡を取って連携を取れるようにしておくのは大事だってじいさんも言ってた。

『町長の仕事で大事なのは、「信頼・仕事っぷり・町の人とのつながり」だ』って。

だからこれからも積極的に人と関わっていこうと思う。

それが俺流だ。

…なんかかっこいいな。

今回は、YLさんの『”うろな町の教育を考える会”業務日誌』の清水さんをお借りしました。

ちょっとだけですけどね。


というわけで、ここまで読んでいただきありがとうございます。


なぜかURLからHPにアクセスできないというアクシデントがあったため、活動報告にて詳細を明記させていただきました。

興味のある方は是非見てみてくださいませ。


ここまで集まると思ってなかったから、ドキドキワクワクしております。

むし、がんばるぞー

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