表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/37

カメ

7月1日。

夏が始まってきたと思ってからの雨。

なんだかなーと思いながらいつものように仕事をしていると、秋原さんがドタバタと町長室へと入ってきた。


「町長!」

「ノックしてくださいよ。もしいけないことをしていたらどうするんですか」

「そんな冗談はいいんですよ! とにかく下に来てください!」


そう言ってまたドタバタと去っていく秋原さん。

秋原さんがあんなに取り乱すなんて珍しいな。

とりあえずただ事じゃないとは思ったので、仕事を中断して下に降りてみた。


下に降りてみると、何やら入口のほうに人だかりが出来ていた。少なくても10人は集まっているみたいだ。しかも職員ばかり。

そんな中で秋原さんが『こっちこっちー』と手招きしていたので、そちらへ向かう。


「あれですよ! ちょっと見てくださいよ!」


人だかりの真ん中を見ると、榊君が見えた。

しかし、皆の視線は榊君ではなく、その榊君の横にいる物体に向けられていた。


「あれって…カメ、ですか?」

「あっ、町長! アレはガメラですよ! ついに町長と榊君の仲を物理的に引き裂く相手が現れましたね! これで見事に三角関係!」

「内村さん。ちょっと黙っててください。ややこしくなるでしょうが」


何故か興奮する内村さんに、榊君が呆れながらツッコミを入れていた。


「榊君、このカメどうしたの?」

「実はですね、仕事で海の方を回っていたんですけど、そしたら海で子ども達がこのカメをいじめていたんですよ。叩いたり網で捕獲したりして遊んでいたんです。で、よく見てみると、このカメ、あのワニガメなんですよ」

「ワニガメ?」

「あのちょっと前にニュースでやってたんですけど、このカメ、人間の指ぐらいなら簡単に食い千切るらしいんですよ」

「ひぃっ!」


背後で秋原さんが声を上げた。

さっきから俺のことを盾にしていると思ったら、このことを知ってたから怖かったのか。

そして後ろの佐々木くんからの視線が痛い。


「それで危ないから保護してきました」

「よくそんなの持ってきたね」


体長40センチぐらいのカメを持ってきた榊君にはちょっと感心する。


「調べてきましたよー」


そう言って香我見くんがノートパソコンを持ってやってきた。

どうやらこのカメのことを調べていたらしい。


「さかいさんのゆーてたとおり、ワニガメでしたわ」

「榊です。もうそれわざとでしょ? 恒例行事でしょ?」

「結果なんやけど、きれいな水と餌があればなんとか育てることはできるみたいですわ」

「餌って何食べるんですか?」


恐る恐ると言ったように秋原さんが聞いた。

ニヤッと笑ってから香我見くんが答える。


「鶏の頭とかねずみとかヒヨコとかですね」

「ヒヨコ…ふぁ…」


それを聞いた秋原さんの頭が許容量を超えてしまったらしく、その場にぺたりと座り込んでしまった。目が遠くを見ている。


「あー、秋原さん終了のお知らせですね」

「じゃあボクが秋原さんを優しく介抱します!!」


そう挙手した佐々木くんと秋原さんの間に、香我見くんと秋原さんと同じ秘書課の風野紫苑(かざのしおん)さんが割って入った。


「なんや香我見くん! 邪魔せんといて!」

「佐々木クンに秋原サンを任せたら余計悪化してしまうやん」

「人を病原菌みたいに言わんといてくれる!?」

「あぁ、秋原さんは紫苑と向こうで休んでましょうねー」


香我見くんが佐々木くんを、風野さんが秋原さんをそれぞれ保護し、場は一気に静かになった。

残ったのは、俺と榊君と内村さんと他数名。


「それ、飼うの?」

「いえ。聞いた話ですと、まだ大きくなるみたいで、僕の家では飼えないんでどうしようかと…」

「私の家も無理ですねぇ。フィギュアとか食べられたら嫌ですし」

「家の中で飼うつもりなの? かと言ってまた返してきなさいっていうのも無理だし…」

「やっぱり保健所ですかね?」

「んー…」


全員で『んー』と唸っていたときだった。


『コケーッ!!』


前に追いかけられたニワトリの声が聞こえた。

今日も誰かを追い掛け回しているのか。

そしてふと内村さんが言った。


「あっ、オバハンだ」

「オバハン?」

「あのニワトリの名前ですよ。そうだ! 保健所に連絡する前に、先に草薙さんとこに聞いてみたらどうですか?」

「草薙さん?」

「あー動物園?」

「そうそう! あそこならもしかしたら引き取ってくれるかもしれませんよ?」

「そんなところがあるのか」

「ちょっと連絡してみようかな」


そう言って榊君は連絡をするためにその場を離れた。それについていく内村さん。

二人が離れていくのを合図にするかのように他の人も去っていった。

そして残ったのは俺とカメ。

俺と目があったカメは、ぐあーっと大きく口を開けて『よろしくな』と言っているようにも見えた。

俺はしゃがんでカメの甲羅をポンポンと叩いた。硬かった。

零崎さんとところから受け継がれたカメ回でした。


企画課の3人をお借りしました。

続きは裏山さんからの返事が来てから書きますー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ