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82話 新居

 終業式が終わり、冬休みへ入った。

今日は、雄太、武彦、渚、若菜の4人が光輝の家に遊びに来る予定になっている。


 マンション1階のインターフォンから、雄太の元気の良い声が聞こえる。

全員、集まってから光輝のマンションに来たようだ。

1階のドアロックを解除して、皆はエレベーターに乗って光輝の家がある12階を目指す。


 玄関のインターホンが鳴り、光輝が玄関のドアを開けると、皆が玄関に入ってきて呆然と部屋の中を見ている。

光輝の家は1LDKだが、リビングダイニングだけで12畳ある。そして光輝の部屋も12畳だ。

小さなアパート暮らしの時と部屋の大きさが違う。

そのことに皆が圧倒されている。



「スゲー良い部屋に引っ越ししたんだな。こんな家、一般の高校生だと借りられないぞ」



 雄太がリビングダイニングを見回しながら、光輝に言う。



「ここのオーナーはひまりのお父さんの伊集院秀樹さんなんだ。だから家賃は無料なんだよ」


「「「「家賃無料」」」」


「そうなんだ。だから家賃はいらないんだ。とても助かってるよ。俺の予算ではこんなマンションは借りられないからね」



 皆は荷物をリビングのソファに置いて、光輝の部屋へ入っていく。

光輝の部屋は以前よりも整理整頓されていて、相変わらず、家具が少ない。

すると光輝の部屋に設置されているドアが開いて、ひまりが顔を出す。



「何か騒いでると思ったら、皆、もう来てたんだね。私だけ遅れちゃった」



 そのタイミングで、ドアを開けてるとアウトだろう。

皆にひまりの家と、光輝の家がドアでつながっていることがバレてしまった。



「光輝……これはどういうことなの? 私、ひまりにも聞いてないんだけど」


「これは……」



 説明に困る。

渚の目が、いつものおっとりから、少し吊り上がり目に変わっている。



「これね……私がお父様に言って、壁に穴を開けて、光輝の部屋へ通じる扉を作ってもらっちゃった。そのほうが便利でしょう」



 ひまりの言葉を聞いて、渚はため息をついて、何とも言えない顔をする。



「これじゃあ……同棲と変わらないじゃない。部屋が続いていたら、家を分けた意味ないでしょう」


「だって……光輝の家で住んでいた時は、いつも光輝と一緒だったんだもん」



 それを聞いた光輝は天井を見上げる。

ひまり……その発言はアウトだ。

渚は知っていたが、雄太、武彦、若菜は、ひまりと光輝が同棲していたことを知らない。


 武彦が光輝の肩をガシッとわしづかみにする。



「俺達に秘密なことが色々ありそうだな。これからゆっくりと説明してもらおうか」


「私も説明を聞きたいです。そうでなければ納得できません」



 武彦と若菜が2人で光輝に迫ってくる。

光輝はその迫力に負けて、今までのことを、全員に説明した。

渚は、顔を背けて、知らないフリをしている。



「お前らだけ羨ましいことしやがってー。許せねー」



 雄太が叫んで、光輝にヘッドロックをかける。頭がすごく痛い。

絞めつけるのはやめてくれ。



「もう、その件は終わったことだから、許してあげましょう。今日はひまりと光輝の引っ越し祝いで来てるんだから。そのぐらいで許してあげて」



 渚の一言で、雄太のヘッドロックは外され、光輝は頭を振って、髪の毛を整える。



「このことは、渚達4人しか知らないことだから、学校には黙っておいてくれ」


「「「「こんなこと、誰にも言えない」」」」



 4人から盛大に突っ込まれる。

しかし、4人の顔は楽しそうに笑顔だ。

秘密を打ち明けたことが良かったのだろう。



「今日の夕飯はひまりと光輝の奢りだからな……秘密を守る契約料だ」


「わかったよ。今日は俺が出すよ……その代わり、外食はなしだぞ。女性陣が夕飯を作ってくれるなら、夕食代は俺が出す」


「わかったし……これも私がバラしたのが原因だし……皆の分を私が作る。渚と若菜も手伝って」


「仕方ないわね……手伝ってあげるわ」


「皆で食べるなら鍋が良いと思います」



 男子達は女子達の手料理が食べられるとあって大喜びだ。

渚が素早くメモとペンを出して、夕飯の買い出しに行く、具材のメモを書く。

そして、ダイニングのテーブルに置く。



「前は光輝とひまりにスーパーに行ってもらったから、今回は俺と若菜で行ってくるよ……若菜もそれでいいだろう?」


「うん……私はそれでかまわないよ。一緒に行きましょう」



 若菜と武彦の2人は渚のメモを持って、光輝から財布を預かって、2人で仲良く玄関から出ていった。

新しいスーパーは家から10分ぐらいの場所にある。


 それにしても武彦と若菜がこれほど仲良くなっているとは意外だ。

ひまりとのことばかり考えていて、最近は周囲に気を配っていなかったことに、光輝は気づく。



 渚と雄太も以前よりも仲良くなっている。

皆、それぞれに仲良くなっていることに、光輝は嬉しく思う。

ひまりが光輝の寄り添ってきて、腕を絡ませる。



「皆が仲良くて、私……嬉しい」


「ああ……そうだな。2人だけもいいが、皆と一緒にワイワイと楽しくするのもいいもんだな」



 武彦達がスーパーから帰って来た後に、女性陣がキッチンに立ち、楽しそうに夕飯の料理に取りかかる。

料理ができるまでの間、雄太と武彦は、ゲームをして楽しんでいる。

光輝はリビングのソファに座って、紅茶を飲みながら、こんな風景も良いものだと、顔をほころばせた。

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