68話 生徒会長選挙③
次の日の朝に、光輝とひまりが登校して席に座っていると、顔を真っ赤にした浩平がやってきた。
「お前達……昨日、木下沙織と会って、手を組んだらしいな」
「もうそんなに噂になってるのか……俺とひまりは木下沙織に挨拶に行っただけだが」
浩平は顔を真っ赤にして、怒っているようだ。
浩平からすれば裏切り行為と取られても不思議ではない。
これからA組全体を1枚岩にして、生徒会長選挙を戦っていきたい浩平からすると、光輝の取った行動は許せないのだろう。
「昨日、浩平から自説を聞いたから、木下沙織の意見も聞いておかないと公平じゃないだろう。だから聞きにいった」
「それで光輝自身はどう思ったんだ」
「木下沙織の学校改革のほうが、俺の理想に合ってると思った。だから沙織と握手を交わしただけだ」
木下沙織が全く光輝の望まない意見を持っていたなら、光輝は沙織と握手はしなかった。
しかし、沙織は今の三雲高校が大好きで、これからも三雲高校を明るく元気な学校にしたいと言った。
その言葉は光輝の考えに合致している。
「俺は沙織の意見に賛同する。浩平の意見に沿うことはできない」
「俺の敵になるということだな」
「別に敵になるつもりはないし……俺1人が反対しても反対票が1票増えただけじゃないか」
「光輝……お前は自分を過少評価しすぎる。お前が反対するということは、ひまりが反対するということだ。そのことを忘れている」
「今の私は光輝だけのものだし……他の男子達もそのことを知ってるから、何も言ってこないし」
ひまりが浩平の言葉を聞いて小さく反論する。
確かにひまりは今でも男子にも女子にも人気を誇っているが、光輝と付き合ってからはそれほど人気はないはずなんだが。
「俺が生徒会長になった時には、必ず風紀の乱れを徹底的に根絶するからな」
人が風紀違反をしているような言い方はやめてくれ。
光輝とひまりは健全な付き合いをしている。
皆に黙って同棲はしているけど……健全だ。
雄太と武彦が登校してきた。
それを見た浩平が光輝の元から去っていく。
それを見た雄太が不機嫌な顔をする。
「俺達が登校してきたからって、避けていく必要はねーだろう」
「浩平にも知られたくないことがあるんだろう」
「そういえば、昨日の放課後に木下沙織に会いに行ったんだろう。どんな感じの女子だった?」
髪型はショートで、少し鼻低くて童顔だが、可愛い顔をしていたな。
すごく背が低いのに、誰よりも元気で明るい、太陽のような印象だ。
「感じの良い女子だったぞ。まるで太陽のような笑顔の似合う女子だった」
それを聞いた雄太と武彦は興味を深く、光輝から話を聞こうとする。
「それでどうなったんだよ」
「ああ……木下沙織は今の三雲高校を大幅に変更するつもりはないそうだ。元気で明るい学校にしたいと言っていた。だから、俺とひまりは木下沙織に1票入れることにした」
「なるほどな……だから浩平は焦ってたのか。浩平としてはA組全員を自分の票にしたかったはずだからな。俺も今の学校のほうが良いから木下沙織に1票いれるぜ……武彦はどうする?」
「俺ももちろん木下沙織に1票入れるよ。イケメン男子は嫌いだ。同じ1票なら可愛い女子に入れる」
なるほど……あっという間に反対票が光輝を合わせて3票になった。
浩平はこの連鎖反応を嫌がったのだろう。
渚と若菜が登校してきた。
それを見たひまりが渚の元へ走っていく。
ひまりも昨日の話を誰かにしたかったのだろう。
これで渚も若菜も反対票になるだろう。
◇
昼休憩になって、ひまり達と一緒に弁当を食べていると、木下沙織が教室に現れた。
そして光輝達を見回して大喜びして、手を胸の前で組んでいる。
「これよ。この風景がほしかったのよ。男女が集まってお弁当を食べてる姿って素敵じゃない。さー写真部の皆さん、この素晴らしい風景を撮っちゃって」
「ちょっと待ってよ……食事を食べてる風景なんて恥ずかしいし……許可もなく写真を撮っちゃダメなんだから」
ひまりが手をバツにして、写真部にストップをかける。
すると木下沙織が光輝の元へ歩いてくる。
「私の理想は男女共に元気で仲良く、楽しくいる学生生活なの。あなた達は普通だと思って一緒に食べているんだろうけど、これほど仲良しなグループってあまりないのよ。昨日、協力するっていったじゃん。だから写真を撮らせて」
確かに光輝達6人は仲の良いグループだと思う。
しかし、他にも同じようなグループも沢山いるだろう。
木下沙織が狙っているのはひまりのいるグループだ。
特にひまり、渚、若菜は美少女だから写真映えする。
「写真は撮ってもいいけど、食事中の写真は止めてね。撮ってくれるなら、もう少し上品なほうがいいわ」
渚がおっとりとした調子で木下沙織に忠告を放つ。
沙織はそれを聞いて、にっこりと笑う。
「確かに食べてるシーンは写真映えしないね。皆が自然な笑顔の時の写真にしましょう。写真部頑張って」
そして光輝達は昼休憩のシーンを写真部に撮られることとなった。
「これは何に使うんだ?」
「私の理想。明るく元気な三雲高校の宣伝ポスターの1枚よ。出来上がったら皆に生写真をあげるから許してね」
それを聞いて雄太と武彦が大喜びする。
ひまり、若菜、渚も嬉しそうに微笑んでいる。
遠くから視線を感じて見ると、浩平と凛香が顔を真っ赤にして光輝を睨んでいた。
これで、浩平との対立がはっきりとしてしまった。
浩平と対立すれば、これから先、クラスでの色々なことで支障が出る可能性がある。
できれば浩平とは対立したくなかった。




