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67話 生徒会長選挙②

 教室に戻ってきた雄太と武彦が笑っている。



「見つけてきたよ。2年D組に木下沙織キノシタサオリっていう女子がいるんだけど、生徒会長選挙に立候補する予定らしい」



 渚とひまりも戻ってきた。

雄太と武彦がつかんできた情報と同じ木下沙織のことを伝えてくる。



「とっても元気が良くって、明るくて、世話上手な女子らしいし……2年D組の中心人物らしいよ……クラス委員長もしてるんだって」



 浩平と同じクラス委員長か。

委員長会議で木下沙織は浩平のことを知ってるよな。

浩平の性格まで見抜いているかはわからないが。



「たぶん2年A組の浩平と2年D組の木下沙織の一騎打ちになるんじゃないかって、2年生の女子達の情報では伝わってきてるらしいよ」



 1度、木下沙織と話しておいたほうが良いかもしれない。

必要があれば、浩平の本当の性格を伝えておいたほうがいいだろう。



「放課後にでも、木下沙織に会いに行ってみるか。どんな女子か、少し気になるからな」


「光輝が行くなら、私も一緒にいくし」



 ひまりが嬉しそうに光輝の手を握る。


 昼休憩のチャイムが鳴り、科目担当の先生が教室へ入ってくるまで、光輝達は雄太と武彦から木下沙織についての情報を聞いていた。








 放課後になり、帰る準備を整えた後に、ひまりと2人で2年D組のクラスを訪れる。

そして扉に立っている2年D組の男子生徒へ声をかけ、木下沙織を探す。

男子生徒は気軽に指を差して教えてくれた。


 教室の中央で、皆に掃除を指揮している、茶髪のショートヘア―の女子が木下沙織らしい。

ひまりと光輝は静かに沙織に近づいていく。

沙織は振り向いて、にっこりと笑う。



「あれ? 2年A組で有名なひまりと光輝じゃん。私に何か用かな? 生徒会長選挙の情報集め?」


「違う。違う。今度、生徒会長になる木下沙織がどんな女子か、1度は確かめておきたかったんだ」


「私のこと? 私は普通の女子だよ。三雲高校が大好きなだけ。だから三雲高校をもっと楽しい学校にしたいの。ひまりや光輝みたいなカップルがいっぱいな学校になればいいと思ってるよ」


 雄太と武彦が噂していた通り、元気で明るい女子だ。

とてもハキハキしている。



「沙織は三雲高校をどう変えたい?」


「変えたい所? あんまりないなー。今でも十分に良い高校だもん。もっと皆が掃除に協力的だと助かるとは思ってるけどね……汚い教室ってイヤじゃん」



 2年D組の教室はきれいだ。

放課後に沙織と、数名の生徒達が掃除をしている。

他のクラスでは見かけない光景だ。



「教室の掃除はどうしてるんだ?」


「クラスの皆で話し合って、掃除当番を決めたのよ。他に自主的に掃除を手伝ってくれる生徒も多くいるし」



 確かに2年D組は木下沙織を中心として、まとまっているようだ。



「浩平のことは知ってるか?」


「アハハ……あのイケメン委員長でしょ。委員長会議の時に一緒になるから知ってるよ。彼も生徒会長選挙に立候補するらしいね。女子の支持層を持っていかれそうで、接戦になるかもだね」


「浩平は、三雲高校を大学進学校に変えようと考えている。そして進学校に相応しい、厳しい校則に変更すると言ってる。そのことは知っているか?」


「ある程度、2年D組の女子から聞いてるよ。私は今の三雲高校が好きだから、意見が全く違うことになっちゃうね」



 木下沙織は浩平が三雲高校をどう変更したいか知っているようだ。

しかし、浩平の変更したい、本当の真実を知っているのだろうか。



「浩平の本当の狙いは知っているか?」


「アハハ……浩平のことだから、自分の評価を上げたいために進学校を目指すと言ってるってことでしょう。それぐらいは私もわかってる。浩平ってすっごい利己主義だもんね。女子達の前では言えないけどさ」


「浩平の性格を知ってるならいいんだ。もし、知らないのなら伝えておこうと思ってね」


「心配してくれたんだ。ありがとう。私……浩平なんかに負けないから。生徒会長選挙は良い勝負をすることだけは約束するよ」



 木下沙織は身体こそ小さくてスレンダーな体型をしているが、とてもエネルギッシュな女子のようだ。

いつも笑顔が良く似合う女子である。



「じゃあさ……光輝とひまりは、私の味方って、全学年の生徒に言っちゃってもいい。2人共、学校内では有名人だからさ」


「ひまりが有名なのは知ってるけど……俺はそれほど有名じゃないぞ」


「学年NO1美少女ギャルの彼氏なんだから有名なのは当たり前じゃん。自分に自覚がないだけだって」


「俺達の名前で良ければ、宣伝にでも何でも使ってくれ。俺は浩平に勝たせたくない」


「うん……わかった。名前は借りるね。何かあったら声をかけるから。これで少しは戦いやすくなったよ。ありがとう」



 木下沙織は爽やかに微笑むと、光輝の右手を掴んで握手する。

これで浩平からは憎まれることになるだろう。

しかし、この生徒会長選挙だけは、浩平に勝たせるわけにはいかない。

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