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47話 ひまりの想い

 放課後になると、浩平が光輝の元へやってきた。



「とうとう正式にひまりと付き合うことになったそうだな」


「ああ……そうだな」


「ひまりの彼氏は俺こそが相応しいと思っていたが、付き合ってしまったものは仕方がない。付き合ったからと言って、突然、ひまりを襲うようなことだけはするなよ……校則違反だけはしないでくれ。クラスの評価に拘わる」



 どちらかと言えば、突然、襲われそうなのは光輝のほうだと思う。

光輝よりも、ひまりのほうが積極的なのだから。



「そんなことするはずがないだろう。健全な付き合いを目指すよ」



 既にひまりと一緒に同棲していることを知れば、浩平はどんな顔をするのだろうか。

校則違反だと責められるに違いない。

浩平のことだから、話も聞かずに一方的に光輝を責めるだろう。



「ひまりのことは諦めてやる。その代わり、体育祭の時の貸しはなしだ」



 浩平なんて、ひまりは全く相手にしていなかっただろう。

そのことがイケメンの浩平のプライドを刺激していたのかもしれない。

別に体育祭の貸しなんてどうでもいい。

浩平が言い出すまで忘れていたことだ。



「ああ……それでいい。それで、ひまりのことを諦めてくれるなら、それでいい」


「ひまりの彼氏が光輝というのが納得できないが……もういい」



 そう言って、浩平は自分のグループへと戻っていった。


 ひまりが光輝の袖を小さく引っ張る。



「皆に見つからないうちに早く帰ろう。いつもは車で迎えにきてもらったから、今日から歩いて帰ると変に思われちゃうかも……」



 確かに今までひまりはリムジンに迎えに来てもらっていた。

今日から、歩いて帰っていたら、皆が変に思うかもしれない。

皆に気づかれないうちに早めに校門を出たほうが良さそうだ。

光輝は自分の鞄を持って、ひまりと2人で教室を出る。


 雄太と武彦は渚と若菜と話していて、2人が教室から出て行こうとしていることに気づいていない。

一瞬だけ渚と目が合った。

渚は気づかないフリをして、微笑んで、雄太達の相手をしてくれている。


 校門を出て、誰にも見られていないか、後ろを振り返る。

校門から出てくる生徒達は多いが、光輝達を知っている生徒はいなかった。



「ただ帰るだけなのに、ドキドキするし……」


「本当だな。しばらくすれば慣れるだろう。バレた時はリムジンは俺の家に迎えにくることになってると、嘘をつけばいい」


「なるほど……さすが光輝は頭いいー!」



 それほど褒められたものではないと思う。

それしか誤魔化しようがないからだ。

家にリムジンの迎えが来ると言えば、後から柴田さんに連絡して協力してもらうこともできる。


 光輝とひまりは手をつないで寄り添って歩く。

2人で家に帰るだけなのに、ドキドキと鼓動が高鳴る。

ひまりは時々、光輝の顔を見て、ニッコリと笑って、頭を肩の上に乗せる。



「夕飯の具材はどうしようか? 帰りにスーパーに寄ってもいい?」


「制服を着てるからな……できれば私服に着替えたほうがいいだろう。妙な所で怪しまれても困るしね」



 学校帰りにスーパーに寄るほうが早い。

しかし、誰が見ているかわからない。

制服を着た男女が、夕飯の具材を選んでいれば、周辺の人達の中にも怪しむ人が出てきてもおかしくない。

妙な質問をされても対処に困る。



「さすがは光輝だね。私、そこまで考えてなかった」


「考えすぎだとは思うけど、用心しておいたほうがいいからね」



 アパートまで帰り着いて、玄関の鍵をひまりが開ける。

2人で「ただいまー」と家の中へ入る。

そして、それぞれの部屋へ戻り、私服に着替えてダイニングに集まる。


 ひまりがメモとペンを持ってきて、夕食の具材をメモに書いている。



「今日は一緒にスーパーには行かないのか?」


「さっきの話を聞いて、毎日一緒なのはマズイと思ったの」


「確かにそれは、そうかもしれないな。今日は俺だけでスーパーに行ってくるよ」



 光輝はひまりが書いたメモをポケットに入れ、財布を持ってスーパーへと出かけた。




◇ひまりside




 光輝がスーパーに去った後、ひまりは仏壇に線香をあげて、静かに手を合わせる。


 光輝のお父さん、お母さん……昨日は同棲初日でした。今日は2人で学校に行って、授業を受けて帰ってきました。

光輝は優しくて、常に気遣ってくれています。

……とても今、幸せです。


 光輝のお父さんとお母さんが、盾代わりになってくれたので、ひまりは生きていると思っています。

そのことで、光輝にゴメンなさいという気持ちで、昨日までいました。

でも光輝に謝ることは止めにします。

だって、いくら謝っても、光輝のお父さんとお母さんを生き返らせることはできないから。

だから考え方を変えます。


 これからはお父さんとお母さんの分まで、光輝を大事にしていこうと思います。

どんなことがあっても光輝を信じて離れたりしません。

これからはひまりが光輝を守っていきます。

どうか2人を見守り続けてください。

よろしくお願いします。



「今日もありがとうございます。これからもよろしくお願いします」



 光輝がスーパーから帰ってくるまで、ひまりは仏壇の前で、手を合わせ続けていた。



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