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40話 過去と今

第1章が無事に完結いたしました。次からは第2章へ突入いたします(*^▽^*)

これからも応援をよろしくお願いいたします(*^▽^*)

「本当に君のご両親には、ひまりはお世話になった。そして命がけでひまりを助けてくれた。今のひまりが元気でいられるのは、君のご両親がひまりを守ってくれたからだ。私には感謝しても、感謝しきれない恩が、君のご両親にあるのだよ」



 たぶん警察官だった両親は伊集院秀樹に恩を感じてほしいなんて思っていない。

生きていれば、自分の職務を全うしただけだというと思う。

そして、伊集院秀樹に、あまり気にかけないでほしいと言うだろう。



「俺の両親が生きていたら、伊集院秀樹さんに恩に感じないでほしいと言うと思いますよ」


「特殊部隊の隊長からも同じことを言われたな。高賀夫妻は職務を全うして殉職したのだと……だから、あまり気に病まないでくれと言われた。君も同じことを言うのか……やはり高賀夫妻の息子さんだ」


「特殊部隊の警察官が、職務を全うしたのですから……ひまりも救出されていますから……俺の両親には悔いはなかったと思います。 両親のことを教えていただきありがとうございました」



 光輝は改めて、伊集院秀樹に頭を下げて、お礼を言った。

伊集院秀樹も「ありがとう」と言って頭を下げる。



「君のことは探そうとしたのだよ。しかし高賀という苗字とご両親の名前しかわからなくてね……探偵を雇おうとしていた時に特殊部隊の隊長さんに止められた。そこで諦めたことを許してほしい」



 光輝は祖父母に元気に育てられていた。

両親がいない寂しさはあったが、その分を祖父母が補ってくれた。

自分の幼少期は、寂しくはあったが、楽しかったと思っている。



「俺は祖父母に育てられました。元気の良い祖父母で、いつも俺のことを構ってくれて……だから両親がいなくて寂しいと思ったことはありますが、それほど悩んだりしたことはありません。心配していただき、ありがとうございます。俺……大丈夫ですから」



 両親が、誘拐されたひまりを庇って、殉職していたなんて……

祖父母が詳しく内容を教えてくれなかった理由がこれでわかった。

両親は警察官の職務を全うした……今はそれだけでいい。



「ひまりとのことはどうするんだね。君達は付き合っているのだろう?」


「実はひまりさんから告白を受けていますが、まだ俺のほうが返事をしていなくて……保留中だったんです」


「ひまりは本当に君のことが大好きだと感じる……できることなら付き合ってやってほしい……ひまりと付き合えば、私も何かと君に恩返しができる」



 今、付き合えば、伊集院秀樹から恩返しを受けるために、付き合ったと勘違いされる可能性がある。

両親も伊集院秀樹からの恩返しを受けることには反対するだろう。

祖父母も反対だというだろう。



「申し出はありがたいですが、伊集院秀樹さんからの恩返しは受け入れられません。亡くなった両親に怒られます。きっと両親はいうでしょう……職務と全うしただけだって」


「わかった……恩返しのことは言わない。どうかひまりと付き合ってやってくれ」


「それはひまりと俺が2人で話し合う問題です。これからどうするか2人で話し合って決めたいと思います」


「私の親心だ……娘を悲しませたくない……そのことだけは忘れないでほしい」


「はい」


「少し冷えてしまったが、夕食をいただくとしよう」



 ひまりのいない食堂で、伊集院秀樹と光輝は2人だけの夕食を食べることになった。




◇ひまりside




 自分を庇って、殉職された警察官のお二人が光輝のご両親だなんて思わなかった。

いつも高賀さんには恩があると、お父様が言われていたので、高賀という苗字が気になった。

そして光輝を見つけた……


 はじめは、なんて影の薄い平凡な男子なんだろうと思った。

でも段々と見ているうちに、光輝が人を気遣って、平凡にしているんだとわかるようになった。

高校生であれだけ気遣いのできる学生は少ないと思う。

そのことに気づいてから、気が付けば光輝を目で追うようになっていた。

そして気づけば光輝のことを好きになってた。


 光輝のことは大好き……今も光輝のことが大好きでたまらない。

でも……光輝の両親は自分を庇って、殉職された。

誘拐されなければ、光輝のご両親は生きていた。

自分が光輝のご両親を殺したのと同じかもしれないとひまりは思う。

光輝はそのことを知って、私を恨むかもしれない……そのことが怖い。


 これから、どうやって光輝と接していけばいいんだろう。

今までのように光輝に接することができるだろうか。

できない。


 でも光輝のことを諦めきれない……どうすればいいの?

心が張り裂けそうに痛い。


 部屋の扉が開いて、お父様が入ってきた。



「光輝君は夕食を食べ終わったので、リムジンで家へ送った。今は光輝くんと会わないほうがいいだろう」


「そんな……光輝と会いたかったし……これからのことも相談したかったのに、勝手に家へ送るなんて、お父様……酷い」


「私がひまりと少しだけ、2人で話をしたかったのだ……すまん」



 お父様が頭をさげるなんて珍しいことだ。



「今……ひまりは光輝くんとの関係をどうしようと考えている?」


「わからなくなってるし……もう頭の中がグチャグチャで、悲しい気持ちでいっぱい……」



 本当にどうしていいのかわからない。

昨日までのように無邪気に光輝に微笑む自信が、今のひまりにはない。

どうしても、光輝のご両親のことを思い浮かべてしまう。



「色々と考えているんだろうと思う。しかし……今……光輝君から手を離せば、後悔するのはひまりだと、私は思うぞ」



 怖くて逃げだしたい気持ちを、お父様に見抜かれてしまった。

そう……この過去から逃げてしまいたい。

目を背けたい。



「光輝君は言っていたよ。両親は警察官の職務を全うして殉職しただけだって。ひまりを救出できたことで、両親も納得していると言っていた……光輝くんはご両親の死を既に乗り越えている」



 それほど自分の心は強くないとひまりは思う。

今日、話を聞いたばかりだ。

それを受け止められるほど……混乱しないでいられるほど、心は強くない。



「だから、ひまりも過去から逃げてはダメだ。そして光輝くんからも逃げてはダメだ。そんなことをすれば、ひまりが後悔する……ひまりがダメになる。そんなことを父親としては黙ってみていられない」


「では……お父様はどうすればいいと思ってるの? 私にはお父様の考えていることがわからないよ」


「近日中に、ひまりは光輝くんと一緒に住みなさい。私が同棲を許す。そして2人で過去と、今に向き合うんだ」



 お父様の言葉を聞いて、ひまりの思考は完全に停止した。

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