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27話 ひまりの部屋で

「せっかく来たんだ。ひまりの部屋で一緒に遊んでから帰ってくれ。そのほうがひまりも喜ぶ」



 伊集院秀樹は紅茶を飲んで席を立つ。



「私はこれから、また映画の収録に行かなくてはならない。光輝くん、また会おう」



 そう言って部屋から出ていってしまった。



「お父様、お仕事に行っちゃったし……リムジンで送っていくから、今日はゆっくりしていって」



 紅茶を飲んで、ショートケーキを食べながら、ひまりが嬉しそうに微笑む。

光輝も紅茶とショートケーキをいただいている。


 2人共に食べ終わってから部屋を出て、2階への階段をのぼる。

階段から近い部屋のドアを開けて、ひまりが部屋の中へ入っていく。

ベッドにはパステルカラーのベッドカバーがかけられ、その上に沢山のクッションとぬいぐるみが置かれている。

実に女の子らしい部屋だ。



「ここが私の部屋。散らかっててゴメンね。早く入って」



 ひまりに手を引っ張られて、部屋の中へ入る。

生まれて初めて女子の部屋へ入った。

ひまりの部屋はとても可愛くて、良い香りがする。

部屋の中へ入るとひまりが光輝の腰に手を回して抱き着いてくる。



「やっぱり光輝の胸が一番落ち着く」



 ひまりはウットリをした声を出す。



「お父様から、光輝との付き合いもOKをもらったし……後は光輝の答えを待つだけね」


「それはまだ待ってほしい」


「うん……私、急いでないし……光輝の気持ち、わかってるつもりだし」



 それから10分以上、ひまりは光輝に抱き着いていた。

光輝は優しく、ひまりの髪をなでる。

ひまりのことは可愛いと思っている。

今では友達以上の感情も芽生えている。

ただ光輝には勿体ないと、まだ思っているだけだ。



「光輝に髪をなでてもらうと、すごく落ち着くの。とても穏やかで、嬉しくなっちゃう」


「うん……」



 光輝はひまりを抱いたまま、黙って髪をなでる……できるだけ丁寧に優しく。



「……ふう……気持ちいい」



 ひまりはすごくリラックスした表情で、光輝を見て微笑む。

思わず光輝の顔もほころぶ。



「これで満足したか?」


「うん……いっぱい光輝を感じられたから満足」



 ひまりは光輝の手を引っ張ってベッドの端に座る。

その隣に光輝が座る。

光輝の隣で寄り添って、肩に頭を置いて、ひまりは目を伏せる。



「光輝が家に来たら、いっぱいお話しようと思ってたんだけど、顔を見ただけで安心しちゃった」


「うん……」



 光輝もひまりと寄り添っているだけで幸せだ。

何かを話そうと考えても、今は何も思いつかない。

今の状態が一番安心する。



「いっぱい話している時も幸せだけど……こうして黙って、リラックスしてるのも幸せ」


「うん……静かに黙ってるのも、たまにはいいと思う」


「今日はお父様と光輝が会うと思ったら、朝から緊張しちゃって……やっとリラックスできたし」


「それは俺も同じだな」



 光輝も今日は朝から、ひまりの父親を会うことばかりを考えて、ずっと緊張していた。

先日、ひまりを家に泊まらせた件で、怒られるかも……そういう考えも頭に過った。


 ひまりの父親である伊集院秀樹は、さすが芸能人だけあって、威厳があった。

芸能人ということを意識していたら、光輝も威圧されていただろう。

光輝にとっては、芸能人という前に、ひまりの父親という面で緊張していた。



「まさか、お父様が光輝を気に入るとは思ってなかったし」


「俺だって、全く思っていなかったよ」



 伊集院秀樹が光輝のどこを気に入ったのか、自分でははっきりとわからない。

ただ、ひまりの父親と仲良くなれたことは良かったと思っている。



「まさか、光輝のご両親と、お父様が昔からの知人だとは、私も知らなかった。あまりお父様、昔のことを教えてくれないから」


「そうなんだ」



 ひまりも、ひまりのお父さんと、光輝の両親との間のことは知らないらしい。

次に伊集院秀樹に会った時に、両親のことはゆっくりと聞かせてもらおう。



「前にも聞いたけどさ。なぜ1年生の時から俺のことを気にしていたんだ?」


「昔にお父様が高賀さんという人にお世話になったって……今でも感謝してるって言っていたの。それで光輝の名前が高賀だったから気になって目で追いかけてたの」



 そういうことだったのか。

ひまりは、父親が感謝している人の苗字が気になったのか。



「光輝を目で追いかけていくうちに、段々と気になり始めて……いつの間にか好きになってた……本当だよ」


「ひまりが嘘をついてるとは思ってないよ。大丈夫……信じるから」


「今日の話を聞いて、運命ってあるんだなって思っちゃったし」



 確かにひまりと光輝には目に見えない糸がつながっているようだ。

光輝はそっとひまりの肩を抱いて、穏やかな時間をゆっくりと過ごした。

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