25話 ファミレスでの勉強会
学校が終わると皆で集まって近くのファミレスへ行く。
渚と光輝で話し合った結果、光輝がひまりを教えて、渚が雄太と武彦を教えることになった。
ひまりは、国語や英語などの語学力が強く、苦手なのは社会の歴史や地理。
後、理科と数学も少し苦手なようだ。
社会の地理や歴史は暗記モノなので、光輝は暗記しなければならない所に蛍光マーカーを引かせて、ノートに何度も書いて暗記させる。
バラバラに覚えても問題をだされた時に役に立たない。
なので、できるだけ時系列に並べて暗記するように、ひまりに教えていく。
ひまりは元々、暗記力は高い。
今まで社会が嫌いで勉強していなかっただけだった。
時系列で暗記させていくと、面白いように覚えていく。
理科と数学は記号が苦手なようで、記号に変換する所で考え込んでしまう。
「考えるからわからなくなるんだよ。そこは考えない。そういうもんだと思うことが大切かもしれない」
「理解する必要はないわけ? ただ、こうなるって覚えればいいの?」
「そういうこと。 理屈は後から覚えればいい。始めはこうなれば記号が変換すると覚えたほうが簡単だ」
「そうなんだー……私、考え過ぎてたかも。暗記なら得意よ」
わからないものを無理に難しく考えると余計に複雑になる。
この記号はこれに変換すると、素直に覚えたほうが、簡単に覚えられる。
ひまりに教えることで、光輝は自分の復習にもなって一石二鳥だ。
光輝が教えると、ひまりは素直に聞いてくれるので助かる。
ファミレスに入ってからドリンクバーを頼んでいるから、飲み物には困らない。
2人でコーラを飲みながら、ひまりのペースに合わせて勉強を進めていく。
一方、渚は雄太と武彦の2人が相手だけに大変そうに見える。
雄太も武彦もひまりと比べると暗記力が悪い。
高校までの問題は、日頃から勉強が必要な語学力のタイプと、理数系のタイプはあるが、中間考査などの範囲が決まっているテストでは、暗記力がものをいう。
それもバラバラに暗記をしても意味がない。
きちんと教科に合った暗記をしていれば、赤点を取ることはないはずだ。
渚は雄太と武彦に教科別に暗記する部分を教えていく。
教科書に直接、渚が蛍光マーカーを引いてくれたり、要点をマークしてくれるので2人は嬉しそうだ。
渚に2人のことを聞くと、語学力が足りずに問題を誤解する傾向が強いという。
語学力は毎日の積み重ねと言ってもいい。
日頃からの国語力がものをいう。
渚は問題を読む時に、口に出して呟くように指導していく。
頭の中で反復していても誤解を生む可能性があるからだ。
特に国語は、教科書の物語を間違えずに答えられるようになるまで筋書を暗記させる。
そうすることで、どこに問題を持ってこられても大丈夫なようにしていく。
「人に教えたのは初めてだけど、人に教えるのは、自分が勉強するよりも難しいのね」
「それは俺も思った。これからは先生達に感謝しないといけないな」
渚が光輝を見て、苦笑いを浮かべる。
雄太も武彦も本当は勉強などは嫌いなはずなのに、渚のいうことを聞いて、一言も文句を言わない。
普段の授業よりも、渚に教えてもらっている時のほうが真剣だ。
「2人共、日頃の授業でも、それぐらい集中して授業を受けていたら、もっとテストの点数が良かっただろうな」
「相手が渚だから真剣にやってんだよ。一生懸命に教えてくれるしさ。それに俺達に学力レベルも合わせてくれて、スゲー……優しいんだぜ。それにこんな美少女の先生なんていないぜ」
「雄太の言う通りだ。学校の授業なんて、俺達がわかっているかどうかなんて、ほとんど無視だし。だからやる気をなくすんだよ。わかっていなくても進んでいくんだから、ついて行けないじゃん」
光輝が雄太と武彦に話しかけると、それぞれの意見が返ってきた。
雄太はどれほど渚が良い先生かと語り、武彦は普段の授業の文句を言ってくる。
それを聞いて、光輝は学校の先生という仕事は大変だと思った。
絶対に教師だけはならないと心に決める。
◇
それからゴールデンウィークに入るまで、ファミレスでの勉強会は続いた。
そのおかげで、ひまり、雄太、武彦の3人も中間考査の範囲は全て勉強したと言っていい。
渚も光輝も、もっと大変になると思っていたが、3人が頑張ってくれたおかげで、ゴールデンウィーク前に中間考査の勉強範囲は終わった。
「これで勉強会は終わりだね。中間考査の範囲は全てやった。あとは反復練習と暗記だけだ。それぐらいは自分達でできるだろう」
光輝が雄太、武彦、ひまりの3人に勉強会の終わりを告げる。
「ああ……渚と光輝には世話になったな。今回、初めて真面目に勉強した気がするぜ。これで赤点は回避できそうだ」
「雄太の言う通りだ。俺も以前よりも良い点が取れそうだ。俺は元々、赤点の心配はあまりなかったんだけど……少しでも良い点数を取ったほうがいいからな」
「渚も光輝も本当にありがとう。今まで考え過ぎていた所がスーッと頭に入ってくるようになったし。なんとなく勉強方法も教えてもらって、わかってきたし……私、少しだけ自信がついた」
3人共に、勉強会を始めた時に比べると、自信に満ち溢れている。
この姿を見られただけで、勉強会をして良かったと思う。
渚も嬉しそうに微笑んでいる。
「これで私の役目は終わりね。実は私、ゴールデンウィークは海外にいる両親に呼ばれて、ヨーロッパまで行く予定になっていたの。それまでに終わることができて良かったわ」
そんなこと、今まで一言も渚の口から聞いていなかった。
ギリギリまで付き合おうとしてくれていたらしい。
光輝は心の中で渚に感謝した。
渚、雄太、武彦の3人は先にファミレスを出て家に帰っていった。
夜も遅くなっているので雄太と武彦が、渚を家まで送り届けている。
光輝はひまりが迎えのリムジンを待っている間、一緒にファミレスで待つ。
その時、ひまりが、上目遣いで光輝を見て、何かを言おうとして悩んでいる。
「何を悩んでいるんだ? ひまりらしくないな。言いたいことがあったら、言えばいい」
「あのね……実はお父様から伝言があって……ゴールデンウィーク中に、一度、光輝に会いたいって。光輝さえ良ければ、一度だけ私の家に来て。歓迎するから」
まだ付き合ってもいないのに、ひまりの父親から会いたいと伝言をもらうとは思わなかった。
本当は会うのは緊張するし、イヤだと断りたい。
でも断るとひまりが困るだろう。
「わかった……ゴールデンウィーク中にひまりのご両親に会いに行こう。これでいいか」
「うん……ありがとう……やっぱり光輝って優しい……嬉しい……エヘヘ」
光輝が自分の家に来ることが、すごく嬉しいのだろう。
ひまりは、光輝に抱き着いて、幸せそうに微笑んだ。




