18話 お泊り会の昼食
アパートへ帰ると、渚がエプロンをして、髪を後ろで1つに結わえていた。
とても家庭的な雰囲気なのに、なぜかセクシーに見える。
ひまりも部屋に行って、エプロンを着て戻ってきた。
女子2人がキッチンに立つ姿は美しい。
雄太と武彦もゲームをする手を止めて、2人の美少女をうっとりと眺めている。
ひまりは料理は何もできないのかと思っていたが、まな板の上に玉ねぎを出して、きれいにみじん切りにカットしていく。
普段から料理をしている手つきだ。
まったく危ないところはない。
「ひまりも料理ができるんだな」
「それって失礼だよ。私、いつもお弁当は自分の手作りお弁当なんだから。家政婦さんに教えてもらってるの」
なるほど指導者がいたのか。
家政婦から指導を受けているのなら、指を切ることもないだろう。
光輝はホッと胸をなでおろす。
ひまりは玉ねぎをフライパンに入れて軽く炒める。そしてボールに移している。
そして鶏肉のモモ肉を小さく細切れにして、それも軽くフライパンで炒めて、ボールに移しておく。
「お昼は軽食よ。その代わり、量だけは沢山あるから、全部食べてもいいわよ」
呆然と料理に見入っている男子達を見て、渚が微笑む。
炊飯器からご飯を取り出して、フライパンの中にバターをひいて、ご飯をフライパンの中へと入れていく。そして
しゃもじを縦にして、ご飯を割って、パラパラにしていく。
そして塩、胡椒で味付けしていく。
先ほどひまりがボールに入れて置いてあった玉ねぎとご飯をしゃもじで均等に混ぜていく。
そして、先ほどの鳥のモモ肉の細切れを入れて、コンソメを少し入れる。
それをしゃもじで混ぜながら、ケチャップをかけて味を整える。
これでチキンライスの完成だ。
ひまりが卵を2つ割って、フライパンに丸く広げる。
その中に先ほどのチキンライスを入れて、きれいにチキンライスを巻いていく。
そして皿に盛り付けるとオムライスの完成。
女子2人は料理が得意らしく、手早くオムライスが完成していく。
光輝のオムライスには、「テルキ♡」とケチャップで描かれていた。
これはひまりがしたのだろう。
ひまりがオムライスの卵を巻いている間に、渚は使用した料理道具を洗剤で洗っていく。
手早くて、的確で、そつのない動きだ。
テーブルの上にオムライスが並べ終わった時には、調理に使った道具のほとんどは片付けられていた。
渚とひまりはエプロンを脱いで、椅子の柄にかける。
そして自分達の席に座る。
「「「「「いただきまーす」」」」」
男子達は出来上がりのオムライスを口いっぱいに頬張る。
とても美味しい。
「美味い」
「女子の手作りのお昼なんて夢のようだ」
雄太と武彦がオムライスを食べた印象を口に出す。
本当に美味しいオムライスだ。
渚とひまりの料理の腕には、改めて驚く。
あっという間にオムライスを作ってしまったのだから。
「光輝……美味しい?」
「ああ……美味しいよ……ひまりと渚が一生懸命に作ってくれたおかげだね」
「そうでもないよ……エヘヘ」
雄太と武彦から、オムライスのおかわりの声が聞こえる。
渚は笑顔で、オムライスを作って、2人にふるまう。
「これを食べただけでも、今日、光輝の家に来て良かったぜ」
「俺も学校で、2人に料理を食べさせてもらったって、自慢したいぐらいだ」
「それは恥ずかしいからやめてね」
雄太と武彦が学校で、今日のことを言いたいみたいだが、渚におっとりと止められた。
全員で食べ終わって、女子へのお礼として、男子達が後片付けをすることになった。
雄太はせっかちな性格をしているので、洗剤の泡がまだついているのに、武彦に渡そうとする。
武彦から文句の声があがる。
「まだ、泡がついてんじゃん。もっと水ですすいでくれよ」
「もっときちんと水ですすいでね。脂分が残っちゃうから」
渚に注意をされて、もう一度、雄太は皿を洗い直していく。
そして拭く係の武彦へ皿を渡す。
武彦は器用に皿を拭いて、光輝に渡す。
光輝は皿を食器棚に片付けていく。
ひまりも光輝の片づけを手伝う。
昼食を食べ終わった皆は、雄太の持ってきたゲームソフトをすることになった。
銃でゾンビを殺していくゲームだ。
ホラー要素も多い。
ひまりはジーっとゲームを見て、体が固まっている。
ひまりの番がやってきた。
コントローラーを持つひまりの手が震えている。
そしてゲームが始まり、銃撃戦となる。
その時、ひまりが悲鳴をあげた。
「イヤ―――! 殺さないで―――!」
一瞬、何が起こったのか男子達はわからない。
ひまりはコントローラーを放り出して、立ち上がって逃げ出そうとする。
それを渚が抱き留めて、優しくひまりを抱きしめる。
泣きじゃくって、パニックになっているひまりを落ち着かせる。
「大丈夫……ゲームだから。あれはゲーム。ゲームだから落ち着いて」
渚に抱きしめられて段々とひまりは落ち着いていく。
そして、渚から離れると、光輝の胸に飛び込んでくる。
その体はまだ怯えている。
「皆が一緒だから、大丈夫だと思ったんだけど……やっぱりダメみたいね。昔からひまりは銃のゲームができないの」
光輝は優しくひまりの髪をなでる。
そして、少し落ち着いたのを確かめて、仏壇のある部屋へひまりを連れていく。
布団を敷いて、ひまりを寝かせる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……私のせいでごめんなさい……死なないで」
ひまりは自分の体を、自分の腕で抱いている。
1人で何かを呟いているが、光輝には聞こえない。
光輝はひまりを布団に寝かせて、右手を握ったまま、ひまりが眠るまで傍に付き添った。
ひまりの過去に銃に拘わるトラウマでもあるのだろうか。
寝息をたてて眠るひまりの寝顔を見ながら、光輝はひまりの陰の部分に少し触れたような気がした。




