ビアンコ18歳 シーデンの森 pt.4
翌朝、僕は休憩所から出発して、三階層に向かった。三階層は森だった。青空の下に森が広がった。なんだか気持ちよさそうなところだった。
僕たちは森の中に入り、道を進んだ。魔物が全然出てこなかった。
「全然魔物がいないんですね~この階層は楽勝じゃないですか~?」ケリーさんが呑気に話し始めた。
「いや、俺たちは結婚歩いているのに、まったく進んでいないのに気付いてない?」ミハイルさんは険しい顔で話した。
「進んでいない?」ブライアンさんは首を傾げた。
「確かにそうですね。この森の風景は僕たちが森に入ったときから、まったく変わっていません。魔物の仕業でしょうか?というか僕たちはすでに魔物に襲われていますね」
「えっ!?た、確かにさっきまで木々の場所とか全く変わらない気がしなくもない・・ね・・」
僕は周りの木々に適当にファイアボールを連続して放った。
『ガァーーーーーっ!』
僕たちの周りの木々の風景が変わった。青空ももう青空ではなく、どんぐりした空の模様になった。そして僕たちの目の前にあるのは、僕より二倍大きい花が大きく口を開いて、僕たちがその口に入っていくのを待っていた魔物だった。
「「「「うわっーーっーーーー!」」」」僕たち全員は驚愕して勢いよく後ろをずさった。
「あぁぁぁぁーーーーー助けてーーーっ!」ブライアンさんは一足遅かったか、その花の木に付いた枝で縛られ、花の口に押し込まれようとしている。
ミハイルさんと僕は木の枝を斬り落とし、ブライアンさんは枝から解放された。枝の攻撃が止まらずミハイルさんと僕を狙って攻撃してきた。ミハイルさんと僕は枝を斬り続けた。でもいくら斬っても斬っても枝が減らなかった。
「枝が本体じゃないです!本体を倒さないと!」
「花のほうか!?ブライアン!あのでかい花を何とかしろ!」
ブライアンさんはすぐ攻撃魔法を花の中心部に放った。
『ガオォォォーーーーっ!』花から咆哮が聞こえ、そしてその花と木とたくさんの枝が地面に溶けて消えていった。
「い、命拾いしたわぁぁぁぁーーー!」
「あ、あ、後一歩進んでいたら、おおおおおおれたちがあの花の口に入って・・・いた・・・うわっ・・・」
「お、俺があの花の口に押し込まれていた・・・」
「気づいて・・・・よかったですね・・・死ぬところ・・でしたね・・・」
僕たちはその場でしばらく呆然とした。
僕たちは気を取り直して、さっきの花から出た素材を拾い、再出発した。さっきより慎重に進んでいく。
「あの花はどんな魔物ですか?見たことがありませんね」僕はミハイルさんたちに聞いた。
「俺も見たことがないんだ。でも他の冒険者から人食いの花という魔物について聞いたことがある。さっきのやつかもしれないな」
「そういえば、俺たちに幻を見せた魔物はどうだったんですかね・・・?」ケリーさんは恐る恐る言い出した。
「「「・・・・」」」
「しまった!あの花のせいで幻の木を忘れてた!」
「なるほど、だから僕たちの周りの風景はあまり変わらないんですね。さっきから気になっていましたけど、気のせいだと思っていました・・・」
「また気づかないうちにやられているのかよ!」
「さっきと同じやりますよ!」僕はみんなに言って、僕たちの周りに連続でファイアボールを振りかけた。
『ガァーーーーーっ!』
さっきの幻影のときと同じような方向が聞こえた。
「あっちだ!」ケリーさんは大きい気の方を指さした。僕はすぐあの木に向けて風刃を放った。魔物の咆哮がなくなった後、周りの風景がまた変わった。
「この魔物は何なんですかね?」僕はみんなに聞きながら、さっき魔物がいた場所にいき、素材を拾った。
「幻を見せる木の魔物か・・・?聞いたことないな・・ケリー、ブライアン、おまえたちは?」
「俺もないですね〜。今まだ生きていることに神様に感謝します・・・」
「俺も知らないっす!」
「街に戻ったら、というか戻れたら調べましょうか。またどこかに遭うかもしれませんから」
「そうだな。とりあえずこのダンジョンから生き残れるように、みんな引き締めるぞ!」
僕たちは道を進み、ビッグワームに遭った。
「きもちわるいな・・・」
「僕、別に虫が嫌いわけじゃないけど、これはちょっと無理ですね・・・」
「うぇぇぇぇぇぇっーーーー!」ケリーさんはもう退場してしまった。
「きゃぁっーーーーー!」ブライアンさんのあんな姿は今まで見たことがないかもしれない。ちょっと面白いかもしれない。
「おまえたち、情けねぇよ」ミハイルさんはあきれながら僕たちに言った。そして、『しゅっ―――!』とミハイルさんはそのビッグワームに水刃をかけた、と同時にビッグワームの体液が思いっきり僕たちにかかってきた。
「うぅぅぅっーーーーうぅぅー」
「うぇぇぇぇぇぇっーーーー!」
「きゃぁぁぁっーーーーーー!」
「お、おまえたち・・・ごめんな・・・」
ブライアンさんは僕たちに体をきれいにする魔法をかけ、ビッグワームの体液を消してくれた後、ビッグワームの繭を拾った。マントや服の強度を上げるための素材らしい。
僕たちは再出発した。しばらく歩くと、きれいな蝶々がたくさん花に留まっているのが見えた。
「派手な蝶々はあの花にたくさん留まっていますね。鮮やかできれいですね〜」僕はあの蝶々を指さしてみんなに話した。
「ぶ、ブライアン!状態異常防御魔法を!」ミハイルさんがその蝶々を見るとすぐブライアンさんに指示して、ブライアンさんもさっそく状態異常防御魔法を僕たちにかけた、と同時に蝶々の周りに黒い靄が漂い始める。
「ビアンコ!火魔法であいつらを燃やせ!」ミハイルさんは僕に指示したと同時に水玉を作って、蝶々たちに包んだ。僕はミハイルさんに指示されるとすぐファイアボールを蝶々と花に放って燃やした。
「あぶねぇぇぇっ!」
「あ、あの蝶々は・・・何だったんですか、ミハイルさん?」
「あれ、俺たちは昔あったことがあるんだよ、ビアンコ。あの蝶はポイズンバタフライと言って、あいつから出た靄は猛毒なんだ。あの靄を吸ってしまうと目とか鼻とか出血して、あの世に行く、だよ」ミハイルさんは僕に教えてくれた。
「昔あの蝶に遭ったとき、俺が靄の範囲外にいたから、何とかみんなに治癒魔法が使えたんだよ」ケリーさんは続けて話してくれた。
「そ、そうなんですか?」
「あの時俺とリーダーがギリギリ生き残れたんだよ、ビアンコ」ブライアンさんは僕の肩に手を置いてそう言った。
「ま、マジですか・・助けてくれてありがとうございます・・・」
ポイズンバタフライを倒すと羽が大量に落ちてきて、僕たちは羽を全部拾った。その羽は毒の素材になるらしい。
僕たちは再び気を取り直して再出発すると、大量のワイルドバットに遭った。ワイルドバットは僕たちの苦手な魔物ではなかったから、それぞれ得意な魔法を使ってワイルドバットを退治した。ワイルドバットの素材を拾った後、森を進み、宝箱を見つけた。僕たちはブライアンさんの状態異常防御魔法とミハイルさんに守られながら、宝箱を開けた。特に何の煙もなかった。宝箱の中にはルビーの指輪があった。
「リビーの指輪ですね~」
「これを売れば一生冒険者をやらなくても余裕で生きていけるぞ」
「「「おぅーーー」」」
宝箱から更に道を進むと扉を見つけた。もちろん開けるのは僕だった。宝箱もこういう怪しい扉もいつの間にか僕の担当になってしまった。僕は扉の中を覗くと特に何もなかったから、そこで休憩することにした。
「この階層、ワイルドバット以外見たことない魔物ばかりですね〜。あのポイズンバタフライはきれいだったのに、危険なやつなんてもったいないですね」
「俺たちは何度もこの階層で死にそうになっていたんだな・・・」ミハイルさんは呟いた。
「あのでかい花は印象的でしたね・・・いきなり目の前を俺たちが口に入るのを待っていたとか・・・」
「あのビッグワームの体液の方が気持ち悪いよな・・・ブライアンのおかげで体と服はきれいに戻れたけど」
「はははっ!悪い悪い。まさかあんなに水しぶきみたいに飛んでくるとは思わなかった。忘れて忘れて」
しばらく休憩したら、四階層に向かった。四階層は青空のはっきりきれいに見える高原だった。僕たちは四階層に出ると、すぐに3体のオーガが僕たちを出向けてくれた。僕、ミハイルさん、ブライアンさんは1体ずつ退治した。もっと進むと6体のオーガが出てきた。ブライアンさんが僕たちに防御魔法と強化魔法をかけ、僕たちはそれぞれの得意な攻撃でオーガと交戦した。オーガはBランクの強い魔物だが、僕たちはAランクの冒険者だ。運が悪くなければ、絶対に負けない。6体のオーガを倒して、オーガの魔石を拾い、僕たちはゆっくりと高原を歩くとレッドオーガが現れた。
「みなさん、こいつ、僕がやります」僕は火の剣を握ってレッドオーガに飛び込んで攻撃した。思った通り皮が厚かったけど、僕がもっと魔力を使えば倒せない敵でもなさそうだった。僕はレッドオーガの魔法を避けながら、徐々に接近していき、僕の攻撃範囲内に入ると、火の剣を振るって何回か追撃した。レッドオーガが魔法を掛ける機会を与えないように僕は連続で攻撃して、そしてレッドオーガを殺した。
レッドオーガのツノを拾った後、高原を進んで宝箱を見つけた。いつも通りブライアンさんが状態異常防御魔法をかけて、ミハイルさんが剣を構えた。僕はできるだけ宝箱から離れて、ゆっくり開けた。黒い煙が出た。
「うん?薬みたいですね。一本だけです。すごくきれいな色ですね。これ、何の薬ですか?」
「おぅ!エリクサーじゃないか!?」
「へぇーそうなんですか?初めて見ました」
「すげぇ貴重な薬だから、売ると大金をもらえるぞ。でも売らずにとっといたほうがいいと思う。いつか役に立つかもしれないから」
「そうなんですね」僕は言いながらミハイルさんにエリクサーを渡した。
「ビアンコは持っとけ。レッドオーガを倒したのはおまえだからな」
「ありがとうございます!」
五階層の魔物はヘルハウンドだった。最初は3体出てきた。倒して更に進むと、6体出てきた。倒して更に進むと12体出てき、そして24匹のヘルハウンドが現れた。ケリーさんはずっと僕たちに回復魔法をかけっぱなしだった。ブライアンさんも僕とミハイルさんに魔力強化魔法と身体強化魔法と防御魔法を掛けてから、ブライアンさん自身も攻撃魔法でオーガに放って戦闘に参戦してくれた。僕、ミハイルさん、ブライアンは休まずにずっとヘルハウンドを退治していて、ヘルハウンドの皮を拾った。みんなもう疲れきった。
そして宝箱を見つけた。僕はいつも通りブライアンさんの状態異常防御魔法とミハイルさんの剣の構えで守られながら、宝箱を開けると、真っ黒な煙が出た。状態異常防御魔法のおかげで僕はまだ生きることができた。
「首飾りですね」
「あぁこれは魔道具だな。魔法の首飾りだ。この首飾りを付ければ、魔力が上がるんだぞ」
「じゃケリーさんかブライアンさんが持ったほうがいいですね~」
「ブライアンでいいよ。俺は今までの魔力で足りるし、魔力切れになったことないし、回復魔法と治癒魔法ぐらいしか使っていないし」
「いいのか!?やったぁぁ!これで防御魔法とか攻撃魔法とかさらに強くなりそう!」
僕たちはまた通路の奥に進むと休憩所を見つけた。みんな倒れこむように横になった。
「これ、いつまで続きますかね」ケリーさんは誰にともなくそんな質問をした。
「ヘルハウンドが大した魔物じゃなくて助かったけど、あんな大量に出てくるとさすがに疲れるっすね」
「五階層は大量のヘルハウンドだから、次は何になるのですかね?スライムが出てきてくれたらうれしいですね」
「はははっ、とりあえず昼飯を食べて体力をつけようか」
「飯ですか・・?はぁこれで魔物の肉が終わりですね。次の夕食はまずいものになりますね」
「ビアンコ!それ、今言うな!思い出しちゃったんじゃないか!くそ・・・せっかく忘れていたのに・・・」ブライアンさんは僕より辛そうだった。
この昼ご飯は外のロックバードの肉の最後になった。今日の夕食は激まずい携帯食になるのかと考えると僕も少し億劫になった。




