現在 シーデンの森 pt.6
僕たちは洞窟の入り口近くで昼ごはんを作って食べて休憩した後、その洞窟に入った。道のりを歩くと、ゴブリンが現れた。僕が風刃を使おうと思ったときにセシルとフィルは剣と短剣でさっさと片づけた。相変わらず早いってば。ゴブリンから魔石が落ちた。弱いゴブリンに魔石があるなんて、ダンジョンだから弱くても魔石があるのか。
僕たちはそのまま道を進むと、ホブゴブリン、コボルト、オークがだんだん現れて、僕たちは今まで通り、退治していく。パスカルとアニーは魔物から落ちた素材を拾ってくれている。
入り口のときから思っていたけど、このダンジョンは僕の知っているダンジョンじゃなかったな。このダンジョンの下に何があるのか楽しみだ。
更に道を進むと、サイクロプスが5体現れた。サイクロプスは体が大きいけど、動きが遅いし、攻撃力も高くない、魔力もないから、僕は一気に3体斬り倒した。フィルとセシルは後2体を倒した。素材を拾って、道に進むと、行き止まりだった。そしてオウルベアがポツンとその空間に立っている。俺はオウルベアに飛び込もうとしたときに、セシルに止められた。
「ビアンコ、待って。私ちょっと試したい風魔法があるわ」セシルは言うと、何十もの小さな竜巻を作り上げてオウルベアを的にして小竜巻を放ち、オウルベアの体をズタズタにした。
「へぇ〜小さい竜巻か〜。結構威力があるな」
「フィルの水魔法を借りて大きい竜巻を作ったことがあるから、小さいものだったら、水魔法がなくてもできるんじゃないかねと思ったの。うまくいってよかった。後は練習するのみだね」セシルは話しながら、オウルベアの素材の爪を拾って素材回収用のマジックバッグに入れた。オウルベアの爪は剣や盾の強度をあげる材料だ。
「さすがセシルだね〜。頼もしいよ」
「みんな!ここに宝箱があるよ!」フィルはこの空間の奥で騒いだ。
僕たちはフィルのところに行き、セシルが宝箱を開ける前にアニーは状態異常防御魔法をかけ、僕とフィルは剣を構える。セシルが宝箱を開けると、『シュッー』と黒い煙が漂った。中にはお金が入っていた。
「結構お金が入っているわね。次の街で散財しようかな」
「まずこのダンジョンを制覇するんだな。あそこに扉があるから行ってみようか」
僕が扉を開けてみると、扉の向こうはがらんどうな空間だった。
「この部屋は何もないよ。ここでちょっと休憩しようか。二階層に行く階段はこの部屋の奥にあるみたい」
「一階層は大した魔物じゃなくてよかったね~」
「大した魔物じゃないのに、魔石もあったわね。ダンジョンだからかしら?」
「ねぇ、ちなみにこのダンジョンってあの冒険者パーティーが見つけたダンジョンかな~」
「そうじゃないかな?同じ森で同じ山だから。ギルドマスターはあの冒険者パーティーが見つけたダンジョンの難易度が高くないって言っていたし、このダンジョンは難易度が高くなさそうじゃないかしら?」
「いいえ、ここはまだ一階層ですから、これからかもしれませんよ」
「そういえば、あの冒険者パーティーが見つけたダンジョンって何階層だったっけ?」
「うーん、そういえば何階層までかは聞いていないね~」
「シーデンの森のダンジョンの言葉に気を取られていたわ。何階層かしらね」
「これだと同じダンジョンかどうかわかりませんね」
「何階層でもいいんじゃない?同じでも違うでも僕たちはこのダンジョンを制覇するんだろう?」
「「「「もちろん!」」」」
僕は休憩が終わると、部屋の奥にある階段を降り、二階層に出た。二階層は砂漠だった。
「あ、暑いよ~」
「砂漠か。砂は靴に入るし、歩きづらいよね」
「みんな暑さで体調を崩さないようにしますから、安心してください。ここは私の力を見せる場ですね。うれしいです」
「アニー、暑くても涼しくする魔法ある?」
「うーん、氷を作る魔法はあるよ。休憩のときに作るね~」
僕たちが砂漠を歩いているとき、前の砂の大穴が開き、ドラゴンが砂の下から現れた。よく見るとドラゴンの尻尾は蛇だった。こいつはアイアタルだった。
「よし!俺がやる」フィルはそういうと、フィルのいつもの水弾より小さい水の球を作り上げて、アイアタルにかけた。アイアタルが飛んでフィルの攻撃から逃げ、僕たちにファイアストームをかけた。アニーはすぐ防御魔法を僕たちにかけた。
フィルはまた小型水弾と水刃を交互に使って、アイアタルに連続攻撃した。僕たちがアイアタルの攻撃から逃げながら、フィルの攻撃が何発もアイアタルに当たった。アイアタルがまたファイアストームをかけようとしたとき、アイアタルの動きが一瞬止まったから、フィルはそのスキに小型水弾をアイアタルにかけ、倒した。
「ヒヤヒヤした~」
「フィル、一人でアイアタルを倒したなんてすごいじゃない」
「そうですね。アニーの防御魔法のおかげで私たちは生きているから、一人だと言えばいいのかわかりませんが」
「パスカル、素直に俺を褒めてもいいからね」
アイアタルの素材の牙を拾い、また先へ進む。さっきのアイアタルのときと同じく、僕たちの前の砂に大穴が開いた。今度はサンドサーペントだ。僕はセシルを真似て小型竜巻を作ると、サンドサーペントの周りに五つの攻撃魔法の魔法陣が現れ、一気に攻撃魔法が放たれて、瞬く間にサンドサーペントが死んだ。
「「「「・・・・・」」」」
「あ、アニー、何かイライラしていない?」
「に、二秒でサンドサーペントを倒したとかさすが天才魔法使いですね」
「さ、さっきアイアタルごときで俺が時間をかけすぎてごめんね、アニー」
「ま、魔王討伐はアニー一人でもいいじゃないか?」
「えへへ~~それほどでも~~~」
僕、セシル、パスカルとフィルはアニーのすごさから我に返り、サンドサーペントの素材の皮を手に入れて、素材回収用のマジックバッグに入れた。
道を進むと、今度はサンドスコーピオンが砂の下から出てきた。2階建ての城ぐらいの大きさだ。結構圧力があるけど、逆に言えば的が大きくていいかもしれない。僕は複数の小型ファイアストームを作って、サンドスコーピオンにかけた。サンドスコーピオンの体中の殻が頑丈のようでまったく効果がなかった。サンドスコーピオンは僕に尻尾で毒を発射して、僕はすぐファイアウォールを作った。砂漠は土がないし、魔物の属性は火属性か風属性だから、僕には分が悪いところだ。
僕はセシルを真似て、小型竜巻を作り、サンドスコーピオンの顔面を狙った。かなり効果があった。僕はもう一回たくさんの小型竜巻を作って、サンドスコーピオンの顔に小型竜巻をかけた。サンドスコーピオンが苦しんで動いた後、消えていった。
サンドスコーピオンの素材の皮を拾い、僕たちは再出発した。サンドサーペントが3匹現れた。
「アニー、私たちがやるから、防御魔法と強化魔法だけお願い」セシルは焦ってアニーにそう言った。
「了解~」アニーはアニーで相変わらず呑気だ。
僕、フィル、セシルはアニーのさっきのサンドサーペントへの一瞬攻撃を見て焦ったのか、サンドサーペントに反撃を与えないように、いつも以上に容赦なくバンバン攻撃をサンドサーペントに連射して、アニーみたいに一瞬ではなかったけど、短時間で退治できた。
サンドサーペントの皮を拾い再出発して、サンドスコーピオンが現れて、アニーがまた容赦のない攻撃魔法をかけてサンドスコーピオンを殺した。魔王討伐はアニー一人で十分だと心底思った。そもそもこの『冬の精霊』のリーダーになってもいいんじゃないかな?僕のほうがおそらくアニーより弱いかもしれない。自分で思ったことだけど、なんか悔しい。
アニーがサンドスコーピオンの素材を拾うと出発して砂漠の上にポツンと大岩が見えた。
「みんな、あの大岩のところで休憩しようか?魔物より天気のほうがきついから」
「賛成〜。大きい氷を作るね~」
他のメンバーも特に異議がないから、僕たちはその大岩に向かった。大岩に辿り着くと、奥まで歩ける通路が見えたから、僕は一人で奥まで調べに行った。
「みんな、ここ、扉あるよ。宝箱もある。ここは出口だ」僕が大声でみんなに教えると、他のメンバーが大岩の奥まで入ってきた。
「うわぁ、ここは外と違って涼しいね〜。気持ちいい~」
「本当だね。あぁ外が暑すぎて汗だくだわ」
「アニー、体をきれいにする魔法をかけてくれますか?」
「「「「(僕)(私)(俺)も!」」」」
「了解~」アニーが言うと、すぐ僕たちに魔法をかけてくれて、一瞬でべたべたした体がきれいになったとわかった。
「「「「アニーありがとう!」」」」
「喜んで~」
僕とフィルが剣を構え、アニーがセシルに状態異常魔法をかけると、セシルは宝箱を開けた。
「マント?だね」
「魔道具か?何に使うだろう。アニー、わかる?」
「わからないけど、これは結構いいものだね。布はかなり薄いけど、すごく丈夫そうだよ。ふん?あっ、なんだか暖かいね〜。防寒マントかな〜」アニーはマントをかけながら、話した。
「このダンジョンに使う機会あるかもな」俺は魔道具のマントを回収用マジックバッグに入れた。
ここは出口だから、僕たちは今日ここに泊ることにした。ご飯を作って、食べ、今日の見張り当番を決めると、メンバーはそれぞれ過ごす。




