現在 シーデンの森 pt.5
洞窟の中は見た目通り、ぐちょぐちょでびしょびしょで湿気ていて、苔が生えっぱなしで、ツタが這いつくばり放題で息苦しくて気持ち悪いところで鳥肌が立ってしまう。こんなところは魔物でも入りたくないだろうね。僕たちはフィルが立っているところに集まった。この寝台のような岩は昔の誰かの事務机だったように見える。本のような物体と書き物のような物体がたくさん散らばっていた。
「確かに本がたくさんあるね。何百年も前からの風雨と湿気のせいで今はもう一文字すら読めないけど。もったいないな」
僕が洞窟の奥に行ってみると、実験道具のようなものが散らかっていた。僕は昨日の石碑に書いたことを思い出した。このシーデン街は昔の黒魔術師の街の可能性が高い。もしかしてここにはあの『消滅魔法』の情報があるかもしれない。むしろ『消滅魔法』は昔のシーデン街の誰かに作られていたかもしれないと思った。『消滅魔法』も古の魔法だとあの村の長老も言っていた。僕はぐるぐると洞窟を歩き回った。壁に何か書かれている可能性もあると思って、壁も隅々まで調べた。
この洞窟に何か情報がないかと期待して探したけど、こんな悲惨な状態の洞窟だから、壁もどこも苔だらけで、何か見つかることもなかった。こんな何百年も前からほったらかされた場所だから、何もないのが当たり前なのかもしれない。
(まあいいや。何か方法がなかったら、僕は一生このままでいいや)
僕は最近、自分の秘密の目的をだんだん諦めてきた。
「ねぇ~ここは何もないし、そろそろダンジョンを探しに行かない?」アニーは誰にともなく言い出した。
「アニーは本当にここがいやなんだね。じゃみんな、そろそろダンジョンを探しに行こうか」
「やった!」アニーは本当にここを嫌がっているな。
「「「おっ!」」」
僕たちはその洞窟を出て、またダンジョンの入り口を探し続けた。僕たちの計画はこの山をぐるっと回って探すという簡単に決められた計画だったけど、この山は大きいし、面積も広いから何日間歩かなければならないのかわからない。それでも僕たちは魔物を倒して、魔物の素材と肉を確保して、休憩して、ご飯食べて、また歩き続けた。まったくダンジョンの気配がない。
「そろそろ暗くなってきたから、今日はもうここに泊まろうか」
「「「「賛成!」」」」
「それにしてもまったくダンジョンが見つからないわね。あんなに歩いたのに。どこに隠れているのかしら」僕たちは夕食を準備している間、セシルが話し始めた。
「本当にね〜あの冒険者パーティーはどうやって見つけたのかな?すごいね~」
「僕たちはずっとあちこち行っていたからじゃないかな?あの冒険者パーティーはそんなことしなかったかもしれないね」
「そ、そうかもしれないけど、でもせっかくシーデンの森に入ったから、しっかりと探索しないと、胸を張って『シーデンの森を探索したよ~』と言えなくない~?」
「そ、そうよ!そうよ!それに俺たちはいろいろ発見したんだろう?トレントの生息地とか、石碑とか、あの気持ち悪い洞窟とかさ!」
「そ、そうですね。それにこのシーデンの森は八百年も前に街として存在していたということも発見しました。これは国際レベルのものすごい大発見ですよ!」
「そ、そうだよ、ビアンコ。これは私たちが別に遊んでいるわけじゃないのよ。ちゃんと意味のある冒険しているんじゃないの」
「わかったから、わかったから。僕はただ僕たちの行動とあの冒険者パーティーのことをちょっとだけ言っただけなのに、別にそこまで言い訳しなくてもいいじゃないか?君たちを攻めているわけじゃないんだからさ」
「「「「言い訳じゃない(ありません)!」」」」
「わかったから、わかったから」
僕たちは夕食を終え、見張りの当番を決め、しばらく寛いでいて、そろそろ寝る。僕は誰か話を切り出すのかなと考えていると案の定アニーが話を切り出した。
「び、ビアンコ〜、あ、アースウォールは〜?今日作ってくれるかな~?」
「そ、そうね。今まで私たちは悪かったわ。こ、今夜からまたアースウォールを張ってくれない?」
「お、お願いします。今まで私たちは緊張感に欠けすぎていました。すみません。気をつけます。今夜からまたアースウォールをお願いします」
「ビアンコ〜、ひどいことを言ってごめんね〜許して〜アースウォールを張ってくれ〜」フィルは僕に泣きついてきた。
「ふふふ、みんなわかってくれればよろしい。じゃ今日またアースウォールを張ってあげるよ。でもしっかりと見張りもするように」どうやら僕の思惑がちゃんとみんなに伝わったようだ。よかった。
「「「「おっ!」」」」
翌朝、僕たちはまたダンジョン探しのために出発した。朝から昨日と同じく魔物を倒して、魔物の素材と肉を確保して休憩してまた歩き続けた。昼過ぎ、僕がそろそろ休憩しようと思ったときフィルは少し離れたところから叫んできた。
「おーーーいっ!みんな!ここに洞窟があるぞ!」
(えっ!?なぜ!?)
僕たちはフィルがいる場所に向かう。
「灯りを付けるね〜」僕たちは洞窟に着くと、アニーはそう言って灯りの魔法で洞窟の中を照らしてくれた。
「結構深いわね。昨日の洞窟みたいに突き当たりが見えないし、汚くないわね。っていうか何もないわね」
「ここはダンジョンですかね?あの冒険者パーティーが見つかったダンジョンですかね?ワクワクしますね」
「どうだろうね。じゃ入り口でご飯を食べたら、中に入ってみようか」
「「「「おっ!」」」」




