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僕の中の悪魔を殺してください  作者: あまね
ダンジョン編
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現在 シーデンの森 pt.4

 僕はメンバーたちの喚きを無視して昼ご飯を食べ終えた。長めの休憩の後、僕たちはまた出発した。シーデンの森の山は高くて、ちゃんと目印になるから助かる。僕たちはあちこちに寄ってしまうから、正直僕は僕たちの現在地が東方の地側なのか、西方の地側なのか、北方の地側なのか、南方の地側なのか、もう把握できなくなってしまった。シーデンの森を出るときはどの地に出るか運任せすることにしよう。


 僕たちはまた山に向かって歩いていくと、少し離れたところに大きな石碑が見つかって、僕たちはその石碑に向かって歩いていく。


「この石碑、大きいね。なんて書いてあるのかな?全然読めないよ~」


「これは古語じゃないかしら。私も読めないわ」


「えぇ、これは古語ですね。えーと、『シーデン街 暗闇を求むものに捧げよ』とそんなことが書かれていますね。後はえーと、『魔術師の街』『世界はシーデン街が生み出した』『魔術師はなくなっても、魔術はなくならない』とも書いてありますね」


「パスカルって、古語がわかるの?さすがだね~すごい~」


「少しだけですよ。さすがにこの石碑を全部読めるわけじゃないんです」


「シーデン街?ここは街だったのか?暗闇を求むものって何?誰が暗闇なんかを求めるのかな?」


「シーデンの森は昔、黒魔術師の街だったのか。そういえば、ケルレナ街に着く前に見つけたあのボロボロ屋敷も魔術師の家だったよな。あの屋敷の者はシーデン街の魔術師の子孫だったかもしれないね」


「石碑に日付が書かれていますね。八百年前の日付ですが」


「八百年前か。ここに何があってこんな森になったんだろうね?これ、すごい発見じゃないか」


「ねぇみんな〜、ここに小さい石碑があるよ〜」アニーは少し離れたところにある小さい石碑の前で僕たちを呼んだ。


「この石碑も古語で書かれているように見えますけど、文字が薄れていて読めないですね。墓石ですかね?」


「シーデンの森は昔街だったってことはわかった。他のところにまた石碑があるかもしれないな。黒魔術師の情報だとほとんどの国が処分しているけど、シーデンの森の中にある情報は処分されていないんだろうね。まだ他に黒魔術の情報がありそうじゃないかな。楽しみだね」


 僕たちはまた石碑の場所から森の真ん中の山を目指して再出発した。七日目で僕たちはやっと山の麓に辿り着いた。トレントの住処の川にいたとき、まだ昼前だったのに、その後僕たちはあちこち寄ってしまったから、今はもう周りが暗くなり始めた。ということで今日は山の麓で夕ご飯を食べ、そこに泊まることにした。


 僕たちはいつも通り見張りの当番を決め、そろそろ就寝の時間が来た。メンバーたちはそわそわして、お互いに目配りをし始めた。僕はみんなの反応を見て笑いを我慢して、誰が先に話を切り出すのかなと心の中で楽しんでいた。


「び、ビアンコ~、えーと、あ、アースウォールは~?」


「そ、そうね。そろそろパパっとアースウォールを作ってもいい時間じゃないかしら?」


「そ、そうですね。私たち四人だけで囲むように作ってもらってもいいですよ。フィルは緊張感のために外で寝ますから」


「ちょ、ちょっとパスカル、俺を見捨てるな!ビアンコ、そのアースウォールに俺も入れてくれ!」


「君たち、何を言っているの?だから僕は今夜からアースウォールをやめると言ったんだろう?これでみんなの希望通り、シーデンの森の探索は緊張感満載になるんだね。よかったね。そうだ、みんな、今夜から見張りをしっかりとやってくれよ。よろしくね」僕はニヤっと笑ってみんなに言った。


「「「「ビアンコ、お願いっ!」」」」僕は喚き声を無視して、寝る場所を探し始めた。


「あたしたちに何かあったら、フィルのせいだよ~」


「そうだよ!これから言葉に気を付けてよね、フィル!」


「私はこんなことを言いたくありませんが、これは誰でもなく、全面的にフィルのせいですよ」


「うぅぅぅぅっ・・」



 僕が寝る場所を探している間、そんな会話が聞こえて笑い出しそうになった。まあ、僕も緊張感をもって、しっかり見張りをしなければならない。アースウォールを作らないせいでメンバーに何かあったら、僕は死んでも自分を許せないから。


 今夜みんなが寝ている間、オウルベアに襲われた。その時はアニーの見張り当番だったけど、僕はアニーに知られないように起きていた。オウルベアが襲ってきたとき、加勢しようとしたら、アニーは攻撃魔法で退治した。さすがだなと感心してしまった。他のメンバーは攻撃魔法の音が聞こえて目覚め、慌てて加勢しようとしていたみたいだったけど、すでに無事に終わっていたから、みんなもほっとした。これでこれからシーデンの森の探索はゆるゆるな感じではなく、みんなが緊張感をもって行動してくれるようになると期待しよう。


 翌朝、昨日まではみんなゆるゆるしていて、気楽に行動していたけど、今はみんなの顔つきが真剣だった。昨日のオウルベアの襲撃とアースウォールなしの休息のおかげだったんだろうね。よかったよかった。


 そして僕はダンジョンの入り口を探すために、山をぐるっと歩くことにした。夕べ休んだ場所からしばらく歩くと、洞窟の入り口を見つけた。最初は僕は五年前に見つかったダンジョンだと思っていたけど、今の洞窟の入り口が五年前の入り口より小さいような気がしたし、入り口の前には大きな岩もなかったから、違うところだと思い返した。


(それにしても何か所も洞窟があるなんて、この山は何だったんだろうな。遠い昔のシーデン街の神聖な山だったかもしれないね)


 僕たちはその洞窟に入る前に、アニーは魔法の灯りをつけて、洞窟の中を照らした。この洞窟は深くはないが天井は高くて広かった。それにここはものすごく荒れていた。寝台のような岩、椅子のような岩があった。その寝台にも椅子にも壁や天井にも苔が生え広がっていて、何かの植物が壁や天井に這いつくばっていて、見ていて気持ちが悪くなる。地面のあちこちに水たまりがあって、湿気ていた。


「悲惨だね。ここは」僕はついそんな感想を漏らしてしまった。


「は、入ってみる?極力遠慮したいけどね~」


「で、でもせっかくだから、思い切って入ってみてもいいんじゃないかしら?中には魔物がいなさそうだし。こんなところだけど、外より意外と安全かもよ」


「昔の家なのか誰かの部屋なのか、そんなところだったでしょうか。昔ここは街だったし、この洞窟は天井も高くて広いから、八百年前だと相当立派な場所だったかもしれません。昔のお偉いさんの家だった可能性もありますね。入る価値があると思いますよ」


「僕もそう思っている。こんな悲惨な状態だったけど、見る価値があると思うよ。でももちろん入りたくなかったら、無理に入らなくても大丈夫だからね、アニー」僕は微笑んだ。こんなところに男でも入りたくないと思うから、女性は余計に遠ざけたい場所なんだろうね。


「じゃあたしも入るよ!」


「おっー!みんなこれ見て!なんか本みたいなものがいっぱいあるよ!すげぇぐちょぐちょでまったく文字に見えないけどね!全部ミミズみたい!」僕たちはその声のほうに振り向くと、フィルはすでに洞窟に入っていて、寝台のような岩の近くで燥いでいる。


「ちょっと!フィル!入る前に一言言ってよ!危ないんじゃないの!」


「魔物がいなくてよかったんだけど、危ないじゃないか、フィル?」


「まあまあ、もし中に何かあったら、真っ先にフィルがやられますから、私たちにとっていいことだと思いますよ。フィルを責めないであげてください」


「パスカル、おまえは優しそうな言葉を言っているように聞こえなくもないけど、めっちゃひどいよ!アースウォールの事件からずっと俺に対してひどくない?冷たくない?」


「確かにそうだな。フィルが入っていても魔物とか魔族とか出て来ないみたいだし、ここはとりあえず安全ってことだね。じゃ僕たちも入ろうか?」


「ビアンコも最近、俺に対してひどいよね。冷たいよね」フィルがそんな文句を言っていたけど、みんな無視した。


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