表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/61

ビアンコ17歳 神様の街の観光 pt.2

 僕たちはケルレナ街に入ると、もう冒険者ギルドに行かず、宿を探して部屋を取り、その後食堂に行って昼ご飯を食べた。この街はなんだかずっとうるさいなと思った。きれいな街だけど、あまり静かに過ごせなかったから、僕としてはこの街があまり好きじゃなかった。ミハイルさんたちはこの街に来たことがあったみたいで、三人とも僕をこの街の北町と中央街にある一番目と二番目に大きい教会まで連れて行ってくれた。


「この音楽ってどこからですか?街に入ってからずっと聞こえる気がしますけど。そのうち終わると思いましたけど、まったく終わらないんですね」僕たちはデュトラス教会に向かって歩きながら、あれこれ話していた。


「これは聖歌だよ。神様の街だから、教会は空が明るいときはずっと聖歌を流すんだって。ビアンコにとっては好きな街じゃないんじゃないかな〜。ちょっとうるさいから。俺だってあまり好きじゃないんだよね〜」ケリーさんは僕に教えてくれた。


「確かにどっちかというと、僕、静かなほうが好きですからね。なるほど、これが聖歌なんですね」


「あっ、見えたぞ。ビアンコ、あの高い建物が見えた?あれはデュトラス教会だ。この街の一番大きい教会で、一番権力を持っている教会。街の人ももちろん祈りのためにあの教会に行くし、あの教会を目当てにこの街に来る観光客も多いんだ。俺はあまりあの教会が好きじゃないけどな。俺にとっちゃあの教会、見た目だけがよくて中身は腐っている場所なんだからな」ミハイルさんは大きい建物を指さして、教えてくれた。


「ミハイルさんがそこまで言うのは珍しいですね。この教会はそんなにひどいところですか?確かに見た目がきれいで大きいですが」ミハイルさんがそこまで言うとなんだかヤバそうな教会だと思えてくる。


「この街の教会ってさ、神様のため云々っているけど、結局自分の利益しか考えていないんだ。商人ギルドに口出ししたり、役所の政策に口出ししたり、街の人をどうのこうの裏で支配しようとするからさ。ここの主教ってのはさ、欲深い人でいい噂を聞いたことがないぐらいだ」


「じゃ街の人はあの主教の言うことなんか聞かなくてもいいじゃないですか?」


「それができないのはこの街の問題なんだよな。何でも神様、神様っていうからさ。教会もこれが神様の信託とかなんとか言えば、聞いちまうんだよな。ある意味、この街の人が可哀そうだよね」


「そうなんですね」僕にとって神様なんかはどうでもいい存在だ。神様が本当に実在するなら、僕をこんな風にしなかったはずだから。


「まあ、あの教会はさすがに冒険者ギルドに口出ししないけどね、下手に冒険者ギルドにちょっかいを出して来たら、この街の冒険者ギルドが冒険者ギルドの本部に報告して、国が動いちまうかもしれないからな。この街は神様の信仰が強いから教会の権力も強くなってしまうかもしれないけど、国やこの国の王族はそこまで神様に対して強い信仰を持っているわけじゃない。それに国にとって教会より冒険者ギルドのほうが国に対して莫大な利益を生み出してくれる存在だから、教会より冒険者ギルドってことになるわけだ」


「なるほど。じゃ冒険者ギルドがそんな教会のことを冒険者ギルドの本部に報告してもいいじゃないですか?」


「冒険者ギルドは基本的に他の団体や事業に干渉できないんだ。そんな決まりがあるからさ。教会が手出しをしてこないけど、冒険者ギルドも何にかできるわけじゃない。傍観しかできないんだよね。ややこしい世の中だよな」


「そうなんですね」


「リーダー、ビアンコ!もう次のところ・・モクモク・・行きましょう!」


「・・モクモク・・この街の食べ物、マジうまいっす!モクモク」


「しかも・・めちゃ安い!・・モクモク」


 ミハイルさんと僕が話している間、ケリーさんとブライアンさんが妙に静かだなと思ったら、買い食いしていたのだった。



 ケルレナ街の二日目からは、ミハイルさんが自由行動にしてくれた。昨日ミハイルさんたちが僕をこの街の重要場所に連れて行ってくれたから、だいたいこの街の構造がわかった。この街は広いから、五区画で中央街、北町、西町、東町、南町に分けられている。将来はまたこの街に来るかもしれないから、この街をできるだけ知っておこうと思った。昨日、僕は中央街と北町に連れて行ってもらったから、自由行動の日に、西町、東町と南町をぶらぶらして街を探索しようと決めた。


「毎回言うけど、おまえたち、羽目を外すなよ。危険なことをするなよ。そして五日後出発するから忘れるなよ!」ミハイルさんは僕たちにルールを告げてから、中央街に向かって去って行った。


「俺、おいしいものを食べに行くよ〜」ケリーさんも続いて去って行った。


「ビアンコ、おまえはこの街が初めてだよな?どうするんだ?どこか行くのか?」ブライアンさんは僕を気にかけてくれたみたい。


「昨日中央街と北町に連れて行ってくれたから、今日からは他の区画に行ってみようと思っています」


「そっか・・なーんだ。ちゃんと計画があるんじゃないか。つまんないな」


「何かあるんですか?」どうやらブライアンさんは別に僕を気にかけてくれたわけじゃなかったみたい。


「実はさ、この街にはさ、可愛い女の子がたくさんいる飲み屋があるんだって!行ってみたいなと思って、でも一人だとちょっと恥ずかしいからさ~」


「ケリーさんを誘えばよかったんじゃないですか?」


「ケリーを誘ったら、何かぶつぶつ言われそうでうるさいからな〜。あいつはこういうのにあまり興味がないからな」


「じゃ、僕がそういうのに興味があると思っているんですか?」


「いやー、ただおまえは顔がいいし、女の子受けの顔をしているからさーおまえを連れて行ったら、女の子がいっぱい群れてきてくれるじゃないかなと思ってさ~」


「・・・・そういえば、ブライアンさんは告解室で自分の罪を告白しなければならないことになっていますよね?ちょうど僕は今から東町の教会に行きますから、そこへなら僕は付いて行きますよ」


「つれないことを言うな!じゃな!」ブライアンさんはささっと行ってしまった。ブライアンさんは昨日あんなに責め立てられていたのに、相変わらず元気だったな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ