現在 魔物退治 pt.1
「みんな、いったんここで休憩しよう」僕は冒険者パーティー『冬の精霊』のメンバーに伝えた。
「はぁ、もう疲れた〜。今日朝からずっと戦っていたよね〜」アニーはもうくたくたになったみたい。今日はやけに魔族と魔物に遭ったから、ずっと魔法を使ってくれていたもんな。
「アニー、お疲れ。ずっと魔法を使っていたもんな。ありがとう。ゆっくり休んで」僕は微笑んで優しく言った。
「そんなことないよ〜、でもゆっくり休ませてもらうね〜。もう一歩も歩けな〜い」
「アニー、私は回復魔法をかけますね」
「パスカル~ありがとう~」
「私はほとんど出番がなかったわね。なんかつまんない」
「今の回復魔法以外、私もでしたね〜。誰も怪我をしてくれなかったし、猛毒も盛られてくれなかったから」
「そんな言い方はいやだ。猛毒もいやだ」フィルは口を尖らせた。フィルは相変わらず駄々っ子少年にしか見えない。
「おーー見て~~。あの木リンゴじゃん!ちょうどお腹すいたし、みんな食べよ~」
「じゃ私に任せて。みんなの分も取るわよ」
相変わらず呑気なメンバーばかりだ。このメンバーは四年間も一緒に冒険者として活躍していた。パーティー名は『冬の精霊』。最初は僕たちはただの冒険者パーティーだったけど、僕が強い魔族を倒した話が広く知られてしまい、知らないうちに冒険者パーティー『冬の精霊』は勇者一行だと勝手にそう呼ばれてしまった。運悪いことにメンバーもノリノリだったから、去年から(自称)勇者一行『冬の精霊』になってしまった。まあ、このメンバーたちと一緒にいると楽しいし、この四年間だって退屈のない旅だったから、大きな目標をもってこれからも一緒に旅してもいいじゃないかと僕は思うようになった。僕にとってこの4人は家族みたいなものだから獲物にするつもりはない。
再出発して1時間歩いたところ、小さな村があった。村の家々はぼろぼろで、畑も耕せる状態でもないし、雰囲気も暗い。村の人も意気消沈していて、生きがいがないように見えた。
「あなたはこの村の人ですか?ここに何かあったのですか」僕は村の道端で座った人に聞いた。
「魔物に・・ずっと・・何度も襲われていた。もう・・無理なんだここは・・」
「・・逃げないんですか?」
「最近、この辺りは魔物が急に多くなって・・逃げても途中であいつらに襲われて殺されちまう。他の村の人は何人か逃げたけど、あいつらに殺されちまったんだ・・」
「だからこんなに人が少ないのね・・」セシルは眉間に皺を寄せた。
「どんな魔物ですか?」
「ゴブリン・・女どもはゴブリンに攫われて・・食料にでもされたかもな・・」
「俺たちの食料もあいつらに奪われていたんです・・」もう一人の男が僕たちのところに歩いてきて話した。
「俺たちはできることをした・・戦ってもしたんだが、結局みんな殺されちまっていて武器も食料も女どもも連れていかれた・・」
ふーん、この村はもう無理だね。そろそろ終わるんじゃないかな。僕としてはどうでもいいことだけど、『冬の精霊』のメンバーがどう出るか次第だな。メンバーのしたいようにしようと僕は決めた。
「ね〜、あたしたち、この村を襲ったゴブリンを倒しちゃおうよ!」やはりそう来ると思った。アニーは優しいから。
「いいかもね〜通り道だし、ゴブリンぐらい私たちには余裕でしょう」セシルはセシルらしく、自信満々でやる気満々だった。
「そうですね。私たちは冒険者でもあり勇者一行でもありますから、困っている人を助けるべきですね」パスカルは治癒魔法師だからか、人を助けたくなる体質だよな。
「俺はビアンコ次第~~」僕次第なら、この村なんか無視してこのまま旅を続けることになる。そうなってしまったら、フィルは絶対にそんなことを許さないんだろうけど。
「そうだな。目の前に困っている人がいるから、ほっておけないよ。よし、みんなこの村を助けよう!」メンバーがそういうなら、まあ行くか。
「「「「おぉぉぉ!」」」」
(こうなると予想していた。冬の精霊は僕以外、みんな優しい人たちばかりだから)
「ほ、本当にあのゴブリンたちを倒してくれるのか!?」
「えぇ、ゴブリンの巣はどこあるのかわかりますか?」
「あ、ありがとう!本当にありがとう!ゴブリンはいつもあの方面から出て来るんだ。あそこには森があるから、あの森の中で生息しているかもしれない」
僕たちは村の人が言っていたあの方面に向かって出発した。しばらく歩くと村の人が言っていた通り森があった。森の外には魔物がいなさそうだから、森の前で戦闘になることはなく、僕たちはそのまま森に入った。アニーは森の中で探索魔法を使うと、ゴブリンの群れの気配を見つけた。僕たちはその気配を辿ってゴブリンを探し始め、しばらく探すと、ゴブリンの足跡を見つけて、その足跡を辿っていった。そして洞窟が見つかった。
僕は剣を抜き、洞窟に入り、5匹のゴブリンが見つかった。僕たちはすぐ戦闘モードに入り、僕とフィルは正面からゴブリンにかかって、セシルは静かにゴブリンの後ろに回り、一番奥のやつを殺した。
(さすがだな、相変わらず仕事が早い)
五匹のゴブリンは一瞬で終わった。楽勝すぎた。
「この奥に通路があるよ」セシルは小声で言った。
「行ってみよう」僕は先頭に立ってその通路に進んだ。




