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現在 神様の街の異変 pt.15

 出発するまでの間、デュトラス教会と教会周辺の家の建て直しがまだ時間がかかるから、『冬の精霊』のメンバーは街の人の建て直しの手伝いをしていた。アニーが浮遊魔法で瓦礫を運んだり、セシルが食事の準備をしたり、パスカルとフィルが力仕事をしたりした。僕は街の人にも街にも興味がないから、街の図書室に行って魔導書を調べていた。僕はヴァルモアと戦ったとき、ヴァルモアと話したことを思い出しながら、消滅魔法のことを整理した。


一、魔王レベル以上の絶大な魔力が必要。

二、今すぐ人間の世界に消滅魔法が使えない。

三、なぜすぐに使えないのか?儀式が必要なのか?もっと魔力が必要なのか?

四、魔王の魔力でもまだ足りないとしたら、足りない魔力をどうやって満たすのか。

五、魔力に代替できるものはどんなものなのか。

六、魔力に代替できるものと人間の街に潜り込むことは何か関係しているのか

七、魔王軍の準備が完了後、魔王は消滅魔法を発動し、人類を滅亡させる・・・


 僕は消滅魔法がこんなに巨大な魔法だとは思わなかった。魔王の魔力すら足りないということは僕には無理な魔法ということだ。消滅魔法の存在を知った後、ずっと情報を収集してきたのに、僕の役に立たない魔法だとわかってがっかりした。魔法の首飾りと魔法の腕輪があっても無理だ。


(まあ、魔王が人類に対して何をしようとしているのか少しずつわかってきたからよしとしよう)


(いや、違うな、あの遺跡で見つかった魔導書には『範囲が広ければ広いほど』と書いてあったんじゃないか?あれは抹消魔法のことだったけど、条件が同じだった可能性がある。僕の目的の場合はそんなに魔力を使わないかもしれない。うん、これからも消滅魔法の情報を収集しよう。同時に他の方法も探そう。他に何か方法があるかもしれない)


 

 僕は冒険者ギルドに行って、アダムに会いに行った。アダムが司祭だから、魔法を使えるかもしれないし、魔法に関する知識があるかもしれないし、魔族に支配されたとき消滅魔法について何か耳に入った情報があるかもしれない。


「アダムさん、あなたに聞きたいことがあります。あなたは魔族から、消滅魔法のことを聞いたことがありますか?」


「消滅魔法ですか?うーん、魔族から聞いたことがないですが、消滅魔法のことは昔私の師匠から少し聞いたことがありますよ」


「本当ですか!?どんな魔法なのか教えてください」


「消滅魔法は、大昔に存在した魔法でした。ある場所からあるものを完全に消すために使われていました。範囲が小さくても広くても使われていたとか。もちろん範囲が広ければ広いほどそれに相当の魔力量が必要になるそうです」


「物というのは例えばどういうものですか?」


「えーと、確か物体のあるものだと聞きましたが、何年も前に聞いた話ですからあやふやですが・・」


「じゃ物体がないものを消す魔法ってありますか?」


「うーん、消滅魔法は物体があるものを消滅させるとだけ聞いたことがあります。物体がないものについては・・うーん、よくわかりませんが・・例えば、光を消す魔法とか、音を消す魔法とか、感情を消す魔法とかでしょうか」


「感情を消す魔法というのは?」


「そうですね、それでしたらマッテオ様が掛けられた精神支配魔法のような魔法ですね。自分の思考を精神支配魔法で消されて、相手の思うがままに動くしかできなくなるんです。あとは記憶をなくす魔法とかですかね。あっ、もともとない感情を誰かに植え付ける魔法もあると聞いたことがありますね。例えば本当は好きじゃないのに、好きになるように魔法を使ってその人に好きという感情を植え付けることですね。でもこういう魔法は精神系魔法になります。精神に関する魔法はほとんどの国と教会に禁止されていますから、一般的に知られていないと思いますし、使える人はほとんどいないと思います」


「そうなんですね。ちなみに、魔力が足りないときに魔力の代わりに使えるものはありますか」


「魔力の代わりに使えるもの?うーん、聞いたことがありませんね。そんな便利なものがありましたら、魔法は今より一般的な術になるはずですよ」


「そうですよね。あっそうだ、アダムさん、もう一つですが、ケルレナ街の西にあるぼろぼろの建物はどんなところだったのかわかりますか?」


「ケルレナ街の近くにあるぼろぼろの建物?えーと、この街の近くにあるぼろぼろの建物?・・・もしかしてレノルドの屋敷でしょうか。ケルレナ街の近くには崩れかけたレノルド家の屋敷がありますけど、あの屋敷は40年前ぐらいから誰も住んでいないんです」


「レノルドというのはどういう人だったんですか」


「この国の有名な魔法使いだったんですけど、禁断魔法を生み出そうとしていて違法の人身売買を何回も繰り返したそうです。それでその行為が国にバレて、逮捕され処刑されたそうです。国王はレノルドが処刑された後、衛兵があの屋敷にある禁断魔法に関するものを全部処分させたみたいですね。今はケルレナ街の人にとって気味の悪いところで誰も近寄りたがらないんです」


(禁断魔法に関するものを全処分したって?あの日記が残っているんじゃないか。国も適当に仕事をするんだね)


「そうなんですね。参考になりました。ありがとうございました」僕は微笑んでお礼を言った。


「いいえ!勇者様に何か力になれることがありましたら、何でも言ってください!」勇者ねー



 僕たちは魔族を討伐して四日目に冒険者ギルドのギルドマスターに呼ばれて冒険者ギルドに来た。ギルドマスターが魔族のことを冒険者ギルドの本部に報告し、冒険者ギルドの本部が国王に報告したら、僕たちに報酬と王国認定証が届いたと言っていた。


「報酬のことはわかりますが、王国認定証とは何の認定証ですか」


「報酬はSランクの依頼を成功させた額と同じぐらいの報酬だ。魔王軍の四天王を討伐してくれたからこの冒険者ギルドからも報酬を出したかったんだが、うちが魔族のせいでずっと経済が苦しんでいてな・・・それにしてもおまえたちは他の街でも魔族を討伐したそうじゃないか。頼もしいな。おまえたちはケルレナに来て、我々にとって幸運だったよ。オリアンヌ街の冒険者ギルドからも国王に冒険者パーティー『冬の精霊』が魔族を討伐したと報告したそうだ。それにこの街にいた魔族が魔王軍の四天王レベルだったからな。それで国王はおまえたちを正式に勇者一行『冬の精霊』と認定したんだ。んでこれはおまえたちが勇者一行の認定証だ」


「・・・はい?・・・」


「わ~~い国認定の勇者一行になっちゃった〜」アニーは小躍りし始めた。


「本当に素晴らしい功績だから、当然こうなるわよね〜ふふ〜」セシルは鼻歌交じりに話した。


「ふふ、勇者一行の認定証ですか。かっこいいですね。勇者一行認定ですね。さすが冬の精霊ではありませんか」パスカルは嬉しそうに何度もうなずいた。


「やった!俺たちは本物の勇者になっちゃった!」フィルはもうすでに舞い上がった。


「し、信じられない・・その認定証を持っていて何に使えるんですか?」


「この認定証を持っていれば、この王国のどの街にでも自由に入れるし、国王に謁見する場も設けられるそうだ」


「・・・他には?」今の僕たちはすでにどの街にも自由に出入りできる。しかも国王なんかに会いたくもないし、会う必要もない。まったく大したことのない、どうでもいい認定証じゃないか。これただただ荷物が増えるだけだろう?


「まあまあ、ビアンコ、とりあえずその認定証をもらっちゃおうよ~」


「そうだよ。今までの私たちって別に認定証の効力が必要なかったし、今まで通りやって行けばいいわよ。とりあえずその認定証をもらっちゃおうよ」


「そうですね。認定証の効力のことは置いておいて、とりあえずその認定証をもらいましょう」


「ギルドマスター、それ見せてください!」


(しょうがないな。みんなこんなに喜んでいるから、とりあえずもらっておこうか)


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