現在 神様の街の異変 pt.11
僕は一瞬、前日のことを思い出した。魔族にとって人間はただの虫けらでよかったなと改めて思った。魔族は人間なんて興味を持たないおかげで街の人の避難のことを魔族に気づかれていなかった。避難作業を手伝った他の冒険者は今そのまま避難区画と他の区画にいる街の人を魔族から守っている。
「ねぇ、魔族がどうして人間の街に入り込んだの?」
「そのほうが楽に人間を始末できるだろう」
「消滅魔法で?」
「・・・なぜその魔法を知っている?」
「魔族でも夢を持っているんだね、可愛いじゃないか?消滅魔法で人間を滅亡させるなんてね。そんな幻の魔法を使うなんておまえの魔王様でも無理だろうに」
「あはははっ!人間は本当に愚かで無知だね〜。おまえには残念だが、魔王様はあの魔法をよくご存じだよ〜。この世であの魔法を使えるのは絶大な魔力を持っている魔王様ぐらいだからね〜」
(へぇー、物騒な名前の通りそれなりに大量の魔力を使う魔法なんだね。僕の魔法の首飾りと魔法の腕輪があっても、僕一人の魔力ではその魔法を使うのは無理だな)
「じゃささっとあの魔法を使えばいいじゃない?人間の街に侵入する必要はないだろう?」
「ふふふふ、物ごとに順序があるんだよ〜。人間はただただあの時が来るまでひたすら待っていればいいんだよ~」
「へぇ〜なるほどなるほど。つまり絶大な魔力を持っているおまえの魔王様でもまだあの魔法を使えないってことか。頑張っているんだね。人間の街に侵入するのもおまえの魔王様の魔力が足りないからかな?」
「魔王様を侮辱するな!」
(適当に言ったけど、当たったみたい。つまり魔力がまだ足りないから、足らわすために何か他のものを準備しているってこと?あちこち人間の街に侵入することに関係しているかもしれない。そんな大層な魔法なら僕の役に立たない魔法かもしれないな)
「この街もおまえらの順序の一つか?」
「それはおまえらが楽しみに結果を待っていればいいことだ」ヴァルモアは言い放って僕に攻撃魔法を使った。
(魔王城に行く前にあちこちでこんなやつを倒さないといけないのか。他の四天王にどこかで遭うことになるかな。めんどくさいな)
僕は考えながら、ヴァルモアの攻撃魔法を避けた後、火魔法で包まれた剣でヴァルモアに斬りかかり、そしてすぐ風刃を放った。ヴァルモアは避けたけど、僕はまた火の剣を持ってヴァルモアに飛び込んだ。でもまた避けられた。
僕はすぐ体を回転して、スピードを出し、ヴァルモアの首を狙ってもう一回炎の剣を振るった。今度はヴァルモアの体に当たり、怪我をさせた。でもまだ死に至らなかった。
ヴァルモアが怪我をして少し足がふらつき、その瞬間にフィルがヴァルモアの後ろから飛び込んで、剣でヴァルモアを追撃した。ヴァルモアは剣に当たる寸前に避けられた。僕はまた追撃して、また避けられてしまった。
(こいつ早いな)
「ネズミのくせにしつこい!おまえらはさっさとネズミを退治しろ!」ヴァルモアがイライラして叫んで、部下の魔族を呼んだ。
(四天王と戦っている間に他の魔族に邪魔されたらいやなんだけど)
「フィル、魔族がもっと来るかもしれない。僕はこいつとやるから、フィルはセシルたちのところに行って他の魔族を倒してくれ。パスカルとアニーに何かあったら僕たちは大変になるから。あとできれば他の魔族に僕を邪魔させないようにしてほしい」
「こいつと一人で大丈夫なのか?」
「あー、ダメになりそうなときに応援を頼むよ」
「了解。気をつけろよ」
今のところ、パスカルとアニーの魔法のおかげで僕はまだ疲れを感じていない。延長戦でも大丈夫そうだ。でもパスカルとアニーが魔族に狙われて何かあったら、僕とセシルとフィルも危なくなる。僕は今回の魔族討伐でパスカルとアニーには後方に隠れて補助魔法を使い続けるように頼み、セシルには教会にいる魔族の討伐とパスカルとアニーを守ることを頼み、フィルには僕のところもセシルのところもどちらにも応援に行けるように動いてほしいと頼んだ。
(これだと安心して、こいつとやりあえる)
ヴァルモアが連続で攻撃魔法を放ち、僕は避けた。僕がヴァルモアにまた取り掛かろうとしたとき、「うっ!」僕は突然後ろから攻撃された。足がふらつき、片膝をついてしまった。後ろを振り向いて見ると、さっき僕が避けたヴァルモアの攻撃魔法が戻ってきて、僕のほうに飛んできているのが見えた。アニーの防御魔法のおかげで大した怪我にはならなかった。そしてパスカルはすぐ治療魔法で僕を治してくれた。僕は立ち上がり魔力を炎の剣に込めて、攻撃魔法に向かって攻撃魔法を斬り、消滅させた。
(助かった。このメンバーだと本当に安心して戦える。それにしても攻撃魔法に追跡魔法を込めているのか。こいつもさすが魔王軍の四天王だ)
「ちっ!しつこいネズミども!」ヴァルモアは僕が攻撃魔法を消滅させたときにまた攻撃魔法を僕に放った。避けても追跡されてしまうから、今度は僕が避けずに魔力を込めた炎の剣で攻撃魔法に向かって斬り消しながら、徐々にヴァルモアに近づこうとした。でもほとんど前に進めなかった。
そしてヴァルモアが攻撃魔法を僕の全方面から連射して、僕は前に進む機会を与えられなかった。前に進むどころかこの攻撃魔法を全部斬り消すことさえ難しい。僕は僕の周りにウィンドウォールを作った。アニーが事務室から僕の周りにバリアを作ってくれたおかげでなんとか耐えている。
僕はファイアボールを放って、ヴァルモアにスキを作らせようとしたけど、ヴァルモアが攻撃魔法を止めず、全方面から連射し続けた。まったくヴァルモアに近づけなかった。
今度は僕は土魔法でヴァルモアが立っていたところを大きく揺れさせてみた。期待通りヴァルモアの攻撃魔法が一瞬止まった。僕はスピードを全力で出してヴァルモアに飛び込んで炎の剣を下ろし、ヴァルモアの右腕を斬り落とすことができた。
「うっ!この虫けらがよくもっ!」ヴァルモアがよろけて動揺したスキに僕は瞬時に追撃した。僕は炎の剣を大きく上げ、そしてヴァルモアの体に下ろした。今度はヴァルモアの右肩から腹までを斬り落とした。でもまだ灰になって消えてくれない。
(四天王だからしぶといのか?)
「あぁぅぅ!」ヴァルモアが倒れかけて、僕はまた炎の剣でヴァルモアの首を斬り落とした。ヴァルモアが倒れて、体が徐々に灰になって消えて行った。
「ヴァ、ヴァルモア様!」
「キサマっ!」
「人間死ね!」
「よくもっ!」
魔族たちが僕に魔法を放とうとしたけど、フィルとセシルがその魔族たちを斬り殺した。魔族がまだ残っているから、僕は一息つくと、フィルとセシルたちに参戦して、魔族を殺していった。




