現在 神様の街の異変 pt.1
僕たちはヴェリアナ街を出て三泊野宿して、次の日の昼頃にやっとケルレナ街についた。ヴェリアナ街からケルレナ街まで丸々四日もかかった。途中あのボロボロ屋敷にも寄ったから、少し時間を取られたけど、それでもこの街は他の街からかなり遠い。ケルレナ街は広くて大きくて、街並みがきれいで、食べ物の種類も豊富で、しかもおいしいから、他の街から遠くても観光客がたくさん訪れる街だ。
僕はこの街にアイアンナイトと一緒に観光目的で来たことがあった。『冬の精霊』のメンバーと来たのは初めてだけど、アニー、セシルとパスカルは「懐かしい〜」「ずいぶん変わったわね」「なんだか妙ですね」とか言っていたから、他のメンバーも来たことがあるとわかった。フィルは物珍しそうに周りを見回しているから、フィルはケルレナ街に初めてきたんだなと思った。
この街は神様への信仰が強い。その影響で街のあちこちに教会が七箇所もある。教会はこの街の人にとって神聖な場所だ。僕たちはやるべきことが終わったら、この街を一緒に散策することにした。
僕たちはまず昼ご飯を食べに行った。
「全部で金貨七枚です」僕たちはご飯を食べ終わった後、お金を支払おうとしたら、食堂の店員は活気なく僕たちにとんでもない昼食の料金を告げた。
「「「「「・・・き、金貨七枚!?」」」」」
「えーと、僕たちはおやつ四品とパン五枚しか頼んでいませんよ?計算が間違ったのでは?」他のメンバーも僕と同じような金額が聞こえたみたいだから、僕の耳はおかしくなったわけじゃないよね?
「えぇ、それで金貨七枚です」
「「「「「・・・・・」」」」」僕たちは互いに顔を見合わせた。店員の様子が怪しい感じもなかったら、ぼったくりじゃなさそうだ。でも逆にこれはマジな金額なわけ?僕たちは納得しないまま、とりあえず金貨七枚をその店員に渡して店を出た。
昼ごはんの後、宿の部屋を取ってそして冒険者ギルドに行って、依頼を探しに行った。僕たちは魔王城までの旅費がたくさん必要な冒険者パーティーだから。
「うーーん、Sランク冒険者パーティーに依頼するような依頼がないな。まあこの街でゆっくりして、ちゃんと見てくれ。そのほうがいいだろうな」
「・・うん?それ、どういう意味ですか?」
「まあ気にするな。まずこの街に長くいてくれ」
つまりギルドマスターはSランクの冒険者パーティーに依頼するようなものはないっていう意味でいいよね?Sランクの冒険者パーティーに依頼するような案件がなかったら、つまりこの街は平和だってことだろう?別にいいじゃないか?なんかギルドマスターは妙な言い方をした気がするけど。
セシルが言った通り、この街はずいぶん変わった。昔は活気があって、人々が教会にたくさん出入りしていて、商人がたくさんあちこちいたのに、今は人通りも店も少なくて、雰囲気も暗くて重くて、街の人も活気がなくてなんだか気味が悪い。街の広場にあった神々の銅像が汚れているのに誰も気にしていないし掃除もされていない。そしてなんだか静かすぎる。昔はこんなに静かな街だったっけ?なんかもっとうるさくて、僕はこの街が苦手だという記憶があった。気のせいか?それとも他の街のことだったかな?僕の記憶違いだったかもしれない。
(この数年間、何があったんだろう)
「ね〜ここ、結構変わったよね〜。昔は楽しい雰囲気だったのに、今はなんだか暗いと思わない?」
「えぇ、私もそう思っているわ。教会の聖歌も聞こえないわね。昔はどこに行ってもなんだかんだ聖歌が聞こえていたのに」
(そうか、聖歌か。確かに聞こえていた。だから今のこの街は静かすぎると感じたのか)
「それにさっきの食堂の昼ごはんの料金も尋常じゃなかったよな。昔あれぐらいのご飯は銀貨二、三枚で済んでいたのにな。僕の記憶違いだったかな?みんなどう思う?」
「えぇ、あれは実はぼったくりでしたってならないかしら?この街の人ってそんなに金持ちなの?金貨七枚の昼ごはんなんて聞いたことも見たこともないわよ」
「ねぇ~あれぐらいのご飯が金貨七枚なんて・・信じられないね~」
「そうですね。あの尋常じゃない金額もそうですが、屋台とか店とかも結構減った気がしますね」
「そうなのか?俺、来たことがないからこんなもんなのかなと思っちゃったよ」
「僕もパスカルたちと同感だ。なんだか気味が悪いよな。ね、この街に何かあったかもしれないから、僕たちは別々で情報を収集してみない?この街で特にやることがないし」
「いいね~賛成~」
「えぇ、いいと思うわ。こんなに変わるとさすがに気になるし、やることは本当にないし」
「では皆さんの情報収集の方向は別々にしますか。アニーがこの街の北側、セシルは西側、私は南側、フィルは東側、ビアンコは中央街、という感じで」
「さすがパスカル!いいじゃないか!俺、賛成」
「僕も賛成。この方法なら早く済みそうだね。じゃ今から開始して、ニ時間後に宿で集合しようか」
「「「「おっ!」」」」
他のメンバーと別れると、僕はまず中央街にある『アレクラス教会』に行くと決めた。この教会はこの街の二番目に大きい教会で、更にこの街の中央街に建てられたから、この街の人も観光客も、とにかくこの教会に人の出入りがとても多かったと記憶があった。教会にいる誰かにこの街のこと、教会のこと、神様のことを聞いてみれば、何か手掛かりが見つかるかもしれないと思った。万が一教会の魔法使いにも会えたら、『消滅魔法』のことも聞けるかもしれない。そうなったら、一石二鳥だ。
僕はそんなことを期待しながら、アレクラス教会に向かった。でも教会に着くと、場所を間違ったのかと一瞬思ってしまったぐらい人気がなくてとても静かだった。僕は一応場所を間違っていないかと確認するために教会の案内看板を探して確認した。でも案内看板にはちゃんと『アレクラス教会』と書かれてあった。僕が案内看板の近くにある教会の正門を通って、教会の扉まで歩き、扉を開けて中を見ると思った通りここは礼拝堂だった。やはりここには誰もいなかった。まさかアレクラス教会に街の人も司祭も教会の関係者も一人もいなかったとは想定外だった。
(おかしいな。いやな予感がする)




