ビアンコ22歳 魔物討伐依頼 pt.4
この魔族の巣のボスがやっときれいに消えた。
「か、勝った?」
「はぁぁぁぁ、いきなりこのレベルの魔族とか、聞いていないよ!本当に緊張した!」セシルは喚きながら座り込んだ。
「皆さん、休んでください。フィル、私がその腕を治します」パスカルはフィルに治癒魔法をかけた。
「腕・・・痛い・・・マジで・・」
「フィル、あんな瞬間にあんな距離でよく顔を庇ったんだな。すごかったよ、じゃなきゃ頭がつぶれていたかも。さすがだな」
「ビアンコ、怖いことを言わないで、怖いから・・・」フィルは横たわっていながら、パスカルに腕を治してもらっている。
「そうだね~フィルが瞬時で顔を庇ったおかげで、両腕だけ折れたもんね~すごいね~見直しちゃった~」
「アニー、怖いことを言わないで、怖いから・・・っていうか見直したって・・悲しい・・」フィルは涙目になりながら、パスカルに腕を治してもらっている。
「フィル、まだ生きてくれてありがとうね。うれしいわよ」
「セシル~~~~~」フィルは足をバタバタしながら、パスカルに腕を治してもらっている。
「あの魔族がアニーを侮ってくれたおかげだったな。アニー、攻撃魔法がマジでナイスタイミングだったよ」僕はアニーに機会があれば、攻撃魔法を使ってくれと事前に頼んでおいた。
「あの魔族が早かったから、不安だったけど、当たってよかったよ~」
「よし、フィルの治療と僕たちの回復が終わったら、次は分かれ道に戻って、魔族がいる右の森のほうに行こうか」
「「「おっ!」」」
「う、腕がまだ痛いんだけど・・・」フィルは涙目になりながら呟いた。
フィルの治療と僕たちの回復が終わった後、僕は4本の分かれ道の森の入り口に戻って、右の通路に入った。アニーが探索魔法で調べた通り、右の道の森には10体の魔族がいた。フィルはまだ養成が必要だから休んでもらい、代わりにアニーが攻撃魔法で手伝ってくれることになった。
僕とセシルは魔族を斬りかかり、アニーはタイミングを狙って攻撃魔法を放ち、僕たちはどんどん魔族を斬り倒して行って、そして10体の魔族を全滅させた。さっきのボスと戦ったからか、この10体の魔族は大したことないと感じてしまった。魔族が全部消えた後、僕たちはこの道を調べたが、特に何もなかった。
僕たちはまた4本の分かれ道に戻り、左から二つ目の道に入ってしばらく歩くと、洞窟が見つかり、その洞窟に入って中を見て回ると、檻が見つかった。
「洞窟の奥に檻があるんだけど、気味悪いね~」
「ね・・みんな・・・檻の中に人がたくさんいるんだけど・・」セシルは檻の前を回って中を見たら、怪訝な顔で知らせてくれた。
「「「「人?」」」」僕、アニー、パスカル、フィルも檻の方に歩いていって中を覗くと、男女の人間が檻の中に座っていたのが目に入った。全員で十三人だった。この人たちが僕たちを見ると、十三人ともお互い抱きついていてすごく怯えていた。今まで魔族とオークにひどい目に遭わされたんだなと思った。
セシルは檻の鍵を外そうとした。
「あれ?鍵がかかっていないわね」そしてセシルは扉を開けて、「みんな、私たちは冒険者パーティー『冬の精霊』です。もう大丈夫ですよ。魔族がもういないから出てきてください」と言いながら、この人たちを檻から出そうとした。でもこの人たちはすごく怯えていて、お互い抱きついたままで檻から出ようとしない。
(なるほどね。こんなに怯えていたら、檻の鍵なんかいらないよな)
「みなさん、怖がらないでください。僕たちは冒険者パーティー『冬の精霊』です。オーク討伐の依頼を受け、ここに来ました。オークも魔族も討伐しましたから、皆さんはもう安全ですよ。もう怖がらなくても大丈夫です。街に連れて帰りますから、安心してください。もう何もかも終わりましたよ」僕はいつも通り微笑んで、優しい言葉をかけて捕虜たちを安心させた。
「ほ、本当に?あの女の魔族も?」
「はい、あの女の魔族もです」
「よ、よかった」
「あ、ありがとうございます」
「これで全員ですか?他には?」
「わ、私の息子がどこかに連れて行かれたんです!
「お、俺の娘も!」
「そうですか。他にまだどこかにいるかもしれませんね。とりあえず皆さんはここを出ましょう」
僕たちは捕虜13人を檻から出して、また4本の分かれ道のところに戻った。
「パスカル、この人たちに回復魔法をお願い。もう1本の通路にまだ人間がいるかもしれないから、僕とアニーは行ってくる。セシル、パスカルたちをお願いね」
「はい、気をつけてください」
「了解」
そして僕とアニーがもう1本の通路に進むと、小さな泣き声が聞こえてきた。
「シクシク・・・おかあさん・・・シクシク・・・おかあさん・・・」
「おねえちゃん・・・たすけて・・シクシク・・」
「シクシク・・・シクシク・・・」
僕とアニーがその泣き声のほうに更に進むと、泣き声がだんだん大きくなった。道の突き当りまで歩いていくと、洞窟が見つかった。さっきの十三人の捕虜を見つけた洞窟ほどの大きさではなかった。洞窟の前に立つと、泣き声がこの洞窟からだとはっきりわかった
中に入ると、この洞窟は浅くて小さかった。洞窟の中には7人の子どもが地べたに座っていた。さっきの洞窟みたいに檻がない。魔族は相手がただの人間の子どもだから、何の力もなく逃げられることはないと思っていたんだろう。子どもたちが僕たちを見ると、魔族だと思ったのか、怯えていて更に泣きだした。
「うわーーん、おかあさん、おとうさん、たすけて・・」
「くずくず・・くずくず・・」
「うわーーーーん」
今まで本当にひどい目に遭ったんだな。僕が何を言えばいいか戸惑っているうちに、アニーが優しい笑みで子どもたちに少し近づき、子どもたちの近くでしゃがんで、子どもたちの頭を撫でながら、慰め始めた。
「よーしよーし、みんな〜もう大丈夫だよ~~、お姉ちゃんたちは冒険者だよ~~。よしよし、泣かないで~~お姉ちゃんたちが助けに来たんだよ~~」
「ぼ、ぼうけんしゃ?」
「そうだよ~~お姉ちゃんたちは冒険者なの〜だから怖がらないでね~みんなはもう安全だよ~お姉ちゃんたちは助にきたよ~」
「ほ、ほんとうに?お、おとうさんとおかあさんは?」
「おとうさんとおかあさんも大丈夫だよ~、いまおとうさんとおかあさんがみんなを外で待っているからね~だから、お姉ちゃんとこのお兄ちゃんと一緒にここを出ようね~」
「う、うん」
「シクシク・・・」
アニーがいて助かった。僕は何を言うべきかまったくわからなかった。僕はただずっと外面だけ微笑んで、アニーと子どもたちの会話を聞いただけだった。本当は老人も大人たちも子どもたちもどうでもよかった。そもそもここに『冬の精霊』のメンバーがいなかったら、僕はこの人たちを殺して快楽に浸っていたはずだった。
(オークと魔族に感謝しなきゃな〜。おかげで僕は今自分の欲求を制御できた)
アニーが子どもたちを連れてさっきの分かれ道に戻り、僕はアニーと子供たちの後ろについていった。子どもたちが4本の分かれ道につくと、泣きながら、自分の両親に抱きついた。自分の子どもがもういないのを知って、泣き崩れた人もいた。魔族はこんなことをして何をしたかったのだろうか。




