ビアンコ22歳 魔物討伐依頼 pt.1
僕が22歳のとき、Sランクの冒険者パーティー『冬の精霊』は主に西方の街で活躍していた。その間の僕たちは危険な魔物の討伐の依頼ばかり受けていたり、魔族にもよく遭って退治していたり、野宿ばかりしていたりしたから、満足のいくまでの睡眠をとれていなかった。
あの頃、僕たちは西方の地のオリアンヌ街に辿り着いた。この街で特に何もせずに三日ぐらいゆっくり過ごそうとメンバーと話し合って決めていた。そして三日が経ち、他のメンバーがまだ休んでいる間に僕は一人で冒険者ギルドに行って依頼を探しに行った。昼ご飯は後でメンバーと一緒に食べることになった。
オリアンヌ街の冒険者ギルドのギルドマスターは僕たちがSランクの冒険者パーティーだから、テロウ山間部に棲みついているオークの群れの討伐依頼をしてきた。
「ギルドマスター、オークの群れって別にSランクパーティーじゃなくても行けるんじゃないですか?わざわざ僕たちに依頼しなくても・・」
「普通はそうなんだが、この依頼はBランクとCランクも依頼を受けたが、音信不通になったんだ。オークよりヤバいものも棲みついているかもしれない。冒険者ギルドの持っている情報だとオーク20匹だったけど、CランクもBランクも音信不通になったから、情報より数が多い可能性もある。だから俺は難易度が『中』ではなく、『高』にしてあるんだ。この依頼は一般公開せず、ランクの高いパーティーに直接依頼しているんだけど、前日Aランクパーティーに依頼してみたら、危険だと言われて受けてくれなかったんだ」
「Bランクも音信不通ですか?それはいつの話でした?」
「2週間から、Cランクは1ヵ月からだった」
「なるほど・・2週間以上前にBランクのパーティーが音信不通ですか・・」僕は何かいるのか調べてみたいし、溜まっている感情も発散したいし、受けてみてもいいと思うけど、危険度の高い依頼は自分本位で決められない。メンバーに何かあったら絶対に嫌だから、みんなと話し合ってから決めよう。
「メンバーと話してみます」
「あー結果知らせてくれ」
僕は、冒険者ギルドの依頼探しが終わった後、宿に向かって帰った。裏道の食堂でメンバーと落ち合う約束をしたから、その裏道を曲がって食堂に向かった。店に入るとすぐメンバーを見つけた。
「ビアンコ~こっち!」
「いっぱい頼んだから食べて食べて」
「何かいい依頼がありましたか?」
「ビアンコがご飯を食べてから聞いてよ、パスカル」
「あっすみません。はい、どうぞジュースを飲んでください」
「ありがとう。食べながら話すよ」僕はジュースを飲んで、ご飯を食べると、「ギルドマスターがテロウ山間部に棲みついたオークの群れの盗伐を僕たちに依頼した」
「オークの群れ?別にあたしたちじゃなくてもいいじゃないかな~」
「僕もそう言ったけどね。でもなんだか、一ヵ月前にCランクパーティーはその依頼を受け、音信不通になった。二週間前にBランクパーティーはその依頼を受け、また音信不通になったみたい。だから危険度が高い依頼とみて、一般公開せずにランクの高い冒険者パーティーに直接依頼しているそうだ。Aランクパーティーに依頼したけど、断られたみたい」
「オークの群れか~~」アニーはやる気がなさそうだった。
「CランクもBランクもダメな依頼ね・・」セシルも興味がなさそうだった。
「やってみますか?オークだったら、私たちが行けると思いますが」
「俺もパスカルに賛成だ。オークぐらい俺たちの敵じゃないしね~でもなんだか思った以上に危険な気がしなくもないけどね~」
「アニーとセシルは?」
「うーん、みんなが行くなら、あたしも行くよ!」
「そうね、行ってみないとわからないし。オークなら私たちは負けないはずだし」
「了解。じゃご飯を食べたら、また冒険者ギルドに行って、正式に依頼を受けるよ」
そして翌朝、僕たちはテロウ山間部に向かった。オリアンヌ街から二時間歩いたところにあった。山の周辺は外見では特に魔物が棲みついている様な気配はなかった。僕たちは油断せず、山のほうに更に進んだ。アニーは先に僕たちに防御魔法、魔力強化魔法、強化魔法をかけてくれた。しばらく進んで麓まで着くと2匹のオークが見つかった。セシルが素早くオークの後ろに回り、一瞬で2匹のオークの首を斬った。さすがすぎた。
僕は剣を抜き、更に麓の道を進むと、麓の森からオーク5匹が現れ、今度は僕とフィルも参戦して、オークの首を斬り落とした。オークはCランクの冒険者でも討伐できるから、僕たちSランク冒険者の敵ではない。でも音信不通になったBランクの冒険者とCランクの冒険者がいるから、油断禁物だった。もっと進むと、今度は20匹のオークの群れが見つかった。これは思ったより大変な依頼じゃないかと今更だけどその時気づいた。僕、フィルとセシルは20匹のオークに斬りかかり、一匹、また一匹を斬り殺していった。大変な依頼かもしれないけど、僕は久しぶりに黒い感情を発散できたから、気持ちのいい依頼とも言えた。
「ね〜これは思ったよりヤバい依頼じゃないかな〜」アニーは不安そうに言い出した。
「そうかもね。もっと前に進むととんでもない数のオークが出迎えてきそうな予感だわ」
「でも私たちはもう逃げられませんね」
「オークばかりいて、飽きちゃったけど・・」フィルだけは呑気だった。




