ビアンコ14歳 大切なもの
僕は14歳のとき、実家の近くの街の冒険者ギルドに冒険者登録してFランクの冒険者になった。Fランクの冒険者が受けられる依頼が限られるから、その時の僕は一人で人探し、動物探し、植物探し、薬草探し、下級魔物討伐といった簡単な依頼を受けて随行していた。というかFランクの冒険者だから、そんな依頼しか受けられなかった。Fランクの冒険者は冒険者パーティーにとってただの邪魔者だし荷物持ち扱いにされるし、ろくに扱われないから、僕はランクが上がるまで一人でやっていくと決めた。そして僕は毎日家から街に行って、依頼を受けて一人で遂行していた。
この時、僕はやっと獲物と獲物じゃないものを判別できるようになった。10歳のときから弟を獲物としてしか見ていなかったけど、14歳の頃から僕は弟を弟として見られるようになった。弟は僕にとって大切な存在の一つになった。
「兄ちゃん、お帰り~今日の依頼はどうだった?」僕が今日の依頼随行を終えて、家に戻ったら、弟のブルーノは食卓で本を読んでいた。
「ちゃんと終わったよ。勉強しているのか?」
「珍しい植物の本を読んでいるんだ〜。この前お父さんが古本屋で見つかって買ってくれたんだ~」
「相変わらず植物が好きだね」
「そんなことより!兄ちゃんって一人で冒険者をやっているなんてすごいよね〜さすがだよ!僕なら絶対無理だ!」弟のブルーノは僕のスライム退治のとき以来、ずっと僕を英雄扱いをする。
「そんなに大したことないよ、ただの人探しとか、薬草探しとか、そんなもんばかりだよ」
「いや!だって魔物討伐とかもやっているでしょう!この前もアルミラージとかも狩っていたでしょう!」
「ははは、あの依頼が簡単すぎるし報酬も安すぎるし、誰もしたがらないから僕は受けただけだって」
「別に謙遜しなくても・・兄ちゃんは本当にすごいって」ブルーノは本当に僕を英雄扱いしてしまうんだよな。もちろん褒められて悪い気はしない。
「僕はランクが上がったら、冒険者パーティーに入ってこの街を出ることになると思う。ブルーノ、お父さんとお母さんをちゃんと守るんだぞ」
「もちろんよ!いつも兄ちゃんに剣術と魔法の使い方を教えてもらっているし、兄ちゃんみたいに強くないけど何とか自分のことを守れるようになったよ。これからもうまくなっていくからお父さんとお母さんのことを任せて!」
「頼もしいね。まあお父さんがBランクの冒険者だから、お父さんがいれば、何かあっても大丈夫か」
「なにそれ、僕が全く信頼されていないの?」ブルーノはちょっと拗ねた。本当にかわいい弟だった。
ブルーノは僕より2歳年下だ。僕は前からブルーノに剣術と魔法の使い方を教え始めた。父親はブルーノに護身術を教えてほしいと頼まれたから、最初は面倒だったけど断れなかったから仕方なく教えた。今になって、ブルーノに剣術と魔法を教えておいて本当によかったと思った。ブルーノは僕の大切な家族だから。ブルーノは優しくていい子だ。いつも明るくて元気で陽気で好奇心が強くてかわいい僕の弟。反対に僕はこんな残酷な人間・・・両親が同じなのに、なぜ僕とブルーノはこんな真逆な兄弟になったのか時々不思議に思った。ブルーノが僕の秘密を知ってしまったら、僕に幻滅するのだろうか?それとも僕を許してくれるのだろうか?
こんな僕は、14歳のときに大切なものは獲物にしないという僕なりのルールができた。僕は自分の大切なものを、大切な人を傷つけないし、僕の獲物にしないと決めた。そして僕の家族、お父さんとお母さんとブルーノは僕の大切なものだ。10歳の僕はブルーノを殺していなくて心底ほっとした。もしあの時の僕がブルーノを殺してしまったら、僕が今の僕よりもっと残酷な何かになってしまっていたかもしれない。
「ねえ兄ちゃん、僕も冒険者ギルドに登録しようと思うんだ~」
「うん?冒険者になりたいのか?魔物と戦うのが好きだったっけ?」初耳だった。ブルーノは戦いが好きな人じゃないと思っていたけど。
「うぅん、そうじゃなくて、ただ何か簡単な依頼を受けたら、ちょっと稼ぎもできるんじゃないかなって」
「あーなるほどな。うーん、そうだなー、ブルーノなら薬草探しとかできるんじゃないかな。植物がめちゃくちゃ詳しいから」
「そう!兄ちゃんがそういう依頼を受けたのを見て僕もそう思ったんだ~薬草探しは危なくないし、僕でもできるじゃないかと思ったんだ!」
「いっそ植物とか薬草とかの店を開いたらどうだ?」
「うーん、僕はまだそんなレベルじゃないというか・・とりあえずもっと植物のことを勉強してたくさん知っていきたいんだ〜。うーん、でも・・そうね・・店もいいね~じゃ僕は将来店を開くためにこれからたくさん仕事をしてお金を貯めるよ~」
「頑張ってね。お金のことは僕、もっと稼げるようになったら、僕も手伝うよ。でもその時までブルーノは冒険者になってお金を貯めるんだろう?植物探しの依頼しかやらなくても、探すときに魔物に襲われるかもしれないから、剣術も魔法もしっかりと練習するようにね」
「うん!わかった!」ブルーノは元気に答えた。僕はブルーノの頭を撫でた。




