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僕の中の悪魔を殺してください  作者: あまね
勇者の始まり
14/61

現在 ヴェリアナ街 pt.4

 そろぞろ祭りが開催されるから、僕とセシルは展望台を降りて、宿に向かった。アニー、パスカル、フィルはすでに宿の前で待っていた。


「みんな、早いわね。まだ約束の時間じゃないのに」


「お菓子を食べすぎて、もうお腹がいっぱいになっちゃったから、ちょっと前から宿に戻っていたよ~」


「私もずっと街の図書館で本を読んでいたら、眠くなってきたから宿に戻ってちょっと休んでいたんです」


「俺、ずっと1人だと寂しくなっちゃって戻ってきたんだ。ビアンコがいるだろうと思ったけどいなかったし・・パスカルが寝ていたし・・寂しかった・・アニーとセシルの部屋に行こうと思ったけど、レディの部屋でゴロゴロするのもよくないような気がしたし・・」


「意外とそんな常識もあるんだね、フィルって。ちょっと見直したかも」セシルは容赦なく言い放った。


「意外って何よ!意外って!」


「ははは、悪い悪い。展望台にいてさ、景色がきれいだったからずっとあそこでぼーっとしていたんだ」


「そんなにきれいだったの?見てみたいな~」


「じゃ明日出発の前にみんなで一緒に行かない?」


「セシルありがとう~行く~行ってみたい~」


「いいですね。では街を出る前にその展望台にみんなで行きましょう」


「みんなでいいね~さびしくない~」


 何百回も思っているけど、本当に呑気な冒険者パーティーだな。セシルは僕が心の底から楽しんでいないと言っていたけど、僕はみんなと一緒なら楽しいよ。


 僕は『冬の精霊』が好きだ。『冬の精霊』は僕の第三の家族だ。



 祭りはすごくにぎやかだった。店は百軒ぐらいあったんじゃないかな。人も肩が触れるぐらい多かった。俺たちは今朝冒険ギルドで受け取った報酬を使って、久しぶりに贅沢に食べ歩きをした。


「このお菓子、最高〜おいしすぎる〜幸せ〜」アニーは頬張ってお菓子をもくもく食べている。


「今日結構食べたんじゃないの、アニー?食べ過ぎると太っちゃうわよ~」


「えっ、そ、そんなに食べていないよ?午後はね、ケーキ二個とマフィン一個とアイス二個だけだよ?」


「それが多いというし、その前にご飯も食べたんじゃなかったかしら?」


「あ、あれは胃袋が違うというか、なんというか・・」


「人間に胃袋が一つしかないと思うけど?」


「うぅぅぅぅっ・・」


「ははは、まあまあセシル、今日は祭りだし、毎日こんな風に食べるわけじゃありませんから、アニーを弄らないであげてください」パスカルは仲裁に入った。


「そ、そうよね!そうだよね!さすがパスカル~」


「ねえねえ、あそこの遊びの屋台に行かない?楽しそうだよ!!」


「うん、行こう。本当に楽しそうだな」



 さっきまでアニーがお菓子で燥いでいたけど、今度はフィルが遊びの屋台で燥いでいる。ナイフ投げだったり、スライム釣りだったり、魔物の射的だったり、くじ引きだったり、僕たちは屋台の端から端まで歩いて遊んだ。これは魔族と戦うのと同じくらい疲れるな。今日はぐっすり眠れそうだ。


 僕たちが遊びの屋台でしばらく燥いでいると、みんながだんだん疲れてきて、ちょっと祭りの端っこのほうに移動して休憩した。そして、鐘の音が鳴り響いて、『ヒューーーーー』『ドーーーーーン』の轟音が続いて響き渡った。


「わぁぁぁ~花火だ~きれい~」


「本当に素敵ね~」


 花火が始まった。僕たちはその場で花火を見上げ、花火が終わるまで誰も何も話さず、静かに花火を眺めていた。とても居心地のいいひと時だった。


 花火が終わり、僕たちは宿に戻ることにした。みんなはあんなに燥いでいたから、かなり体力を使っていて、初日のガルーダ討伐と同じくへとへとになった。



「みんな、お休み〜またあしたね〜」アニーは今にも眠ってしまいそうだった。


「また明日です。おやすみなさい」


「またあしたね~」


「お休み」


「お休み〜」セシルもそう言って、アニーと一緒に部屋に入った。


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