現在 ヴェリアナ街 pt.3
二日目のヴェリアナでは、夜の祭りまで自由行動だった。祭りには宿に集合して一緒に行くことになった。このメンバーと一緒なら絶対に楽しいから、僕は今夜の祭りのことを考えると、楽しくなってくる。
朝から、僕たちは冒険者ギルドに報酬をもらいに行き、報酬を分けた後、みんなはそれぞれどこかに去って行った。冒険者パーティー『冬の精霊』は四年間も一緒にいるけど、五人の趣味はそれぞれ全然違う。
アニーは、甘いもの、食べ物が大好き。この街のお菓子を全部食べに行く〜、と言って去って行った。
セシルは、観光が好き、というか知らない場所を知っておくことが好きと言ったほうがいいかな。この街の穴場を探してくるわね、と言ってアニーに続いて去って行った。
パスカルは、イメージ通り、大の本が好き。街の図書館に行きます、と言って続いて去って行った。
フィルは、あの童顔と子供っぽい性格と正反対に格闘試合を見るのが好き。だからこの街の格闘場に行って試合を見に行くね!、と言って続けて去って行った。
僕は、特に好きなものがない。
昔来た時と同じく目的もなくぶらぶらしていて、そして本屋に行った。別に読書が好きなわけじゃないけど、僕は最近「消滅魔法」という魔法を耳にしたから、どんな魔法なのか知りたくなった。『冬の精霊』のメンバーもその魔法を知らなかった。僕は魔導書で調べているうちに、魔導書を読むのがなんとなく習慣になった。特に興味をそそるようなものがなかったから、本屋を出た。
僕は六年ぶりにあの池に行ってみた。相変わらず観光客に人気がある場所で、人気がそれなりにある。今回は僕は願い事をせずにそのまま林の奥に入った。この公園の林も六年と同じく人気がなかった。六年もたったのにここは何一つ変わっていなくて、逆に安心してしまう。唯一変わったのは、あの時そこの地面にあったはずの土の箱が今はきれいさっぱりなくなったことだった。
僕は林を出て、街の辺境にある展望台に行った。ここは六年前に僕があの二人の男を燃やした次の日に、街を目的なくぶらぶら歩いていたときに見つけたところだった。ここはこの街の穴場だから、ここも六年前と同じく人気がない。すごく静かで穏やかで気持ちのいいところだった。僕はぼーっと景色を見ると、後ろから名前を呼ばれた。
「ビアンコ、どうしてこんなところにいるのよ?」セシルだった。
「セシルこそ、どうしてここに?」
「私はぶらぶら歩いたら、この展望台が見えたから、来てみたの。ここって景色がきれいな場所ね~こんなにきれいなのに、誰も来ないなんて、もったいないわね」
「そうだな。でもおかげで僕が静かに過ごせるけどね」
「相変わらず人混みがきらいだね。最初にあったときの印象が全然違うんだよね、ビアンコって」
「そうなの?どんなふうに?」
「最初に会ったとき、ニコニコして明るくて人懐こかった印象だったのに、知っていくと全然真逆だった感じ。1人で考えこんで、1人で悩んで、1人で行動してしまうから」
「そうなのか?全然そんな自覚なかったな」
「私は『冬の精霊』に入って何か月か経った頃にビアンコが何かにすごく悩んでいるってことに気づいたの。でもビアンコはその話をまったくしなかったから、気のせいかと思っていたけど」
「うん、本当に気のせいなんじゃないかな」
「でもやっぱ本当に何かに悩んでいると思う。だってビアンコの眼は笑ったことないんだもの」
「・・・・」
『眼は心の窓っていうじゃん?お前の眼は何か黒いものが隠れている、と俺はそんな感じがする』
僕は昔ミハイルさんに言われたことを思い出した。眼か・・・さすがに眼から出た感情を隠すことが僕にはできないようだ。
「眼が笑ってないって・・つまり僕が楽しんでいないってこと?」
「うーん、楽しんでいると思うけど、でもなんか心の底から楽しんでいるわけじゃない感じ。まあビアンコは勇者一行『冬の精霊』の大事なリーダーだからさ、何かあったらこのお姉さんに相談してよー。いつでも大丈夫だからね~」
「ふふ、セシル、ありがとう」また鋭い人に会ってしまった。ずっと前から気づかれていたのか。
そのあと僕とセシルは何も話さず、展望台で静かにずっと景色を眺めていた。




