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俺らしいね。
玄関を開けたら笑顔の自分が立っていた。
正確に言うなら、そっくりそのまま俺の形をした人型の何かが、笑顔っぽい何かを浮かべていた。
とりあえず、一旦扉を閉め──ようとしたところで、生肉が隙間から飛びかかった。
生肉は聞いたこともない唸り声をあげている。
なんか知らんがめちゃくちゃに怒っている。
俺の形をした何かは、ずっと笑顔だった。
笑顔のまま食われている。特に抵抗もなかった。
膝を狙われて体勢を崩し、首元に噛みつかれて絶命(生きてんのか?)したそいつの上で、生肉は不満そうにたむたむと足を踏み鳴らしていた。
一旦戻らないと何かとても恐ろしいことになる。
そのはずだった。
モタモタしている間にバカがたこ焼き機を持ってきてしまったので、俺は仕方なく家に入った。
『何かいるんですか?』とビビられたが、無視した。
何もいねーよ。
たこ焼きはめちゃくちゃ美味かった。
途中で生肉焼きになったが。
おい。
お前さっき何食ってたか言ってみろ俺に。
まあ。
美味しいので、よかったと思う。




