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上司が三日ほど休んでいる。看護休暇だそうだ。
面倒が増えるし残業確定だが、心理的負担は下がるのでよしとしよう。
正直、看護のために休暇を取ったと聞いたとき、俺はかなりビビり散らかしてしまった。
上司が看病していることに――ではなく、うちの会社そういうのちゃんと守るんだ、の方向に、だ。
育休に関しては全力で阻止する空気を出していたのに。
いや、だからこそ、ということかもしれないが。
可愛い天使ちゃんは熱を出してしまっているんだそうだ。
特に問題はない。
いわゆる好転反応というやつである。
全てを産んだ子供に押しつけようとしたカスこと可愛いお嫁ちゃんも熱を出している筈である。
特に問題はない。
いわゆる因果応報というやつである。
返ってきた呪いというのは、初めにかけたものより剥がれにくい。
肌に焼き付いた布を引っ張れば皮膚まで剥がれるようなようなものである。
まあ、お嫁ちゃんには伝手があるので方法がないことはないだろうが。
恐らく向こうさんは、失敗した人間に割く余裕などない筈である。
前回の失敗から十年が経っている。
俺はあれ以降、あいつらが代わりの候補を見つけられたと聞いた試しはない。
精々が、繋がりを吸い上げて、騙し騙し持たせているだけである。
絶好の狩り場を逃したのだから、もう後はないだろう。
あんな惨状で十年持っただけでも、かなり頑張った方ではないだろうか。
まあ、全く褒めるべきことではないのだが。
褒めたくもないが。
何?
家族の絆を犠牲に頑張っていて偉いね!とか言えば良いの?
死ね。
真っ暗なオフィスで仕事を終えて、最後にガバすぎる施錠を済ませて会社を出る。
こういう最悪な気分の時に、酒を飲んで気を紛らわせられるのが大人のいいところである。
怒るやつもいねえし。
酒を飲むついでに全部ゲロっておきたい気分だった。
が、残念ながら俺には友達がいないので話しようがない。
酒を片手に歩いていたら、地蔵と目が合った。
繋げたはずの首がねじれて此方を向いている。
そういや最近、激辛ラーメンの新作出ましたね。
三分だけ聞いてくださいよ。
消えちゃうんでね。




