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猫
六つ足の猫が歩いていた。
顔には大きな目玉がひとつついていて、通行人をじっと見つめている。
猫又ってやつかな、と思ったが、尻尾は一つだった。
しばらく眺めていると、目が合った。
目が合った。
たぶん目だろう。
もしかしたら穴かもしれないが。
猫はご機嫌な声で鳴いて、俺の足元で腹を見せた。
口がついていた。
ごろごろと喉を鳴らしているので、人慣れしているのだろう。
口が開いて、およそ成人男性のものと思しき歯が並んでいるのが見えたところで、特に撫でることなく帰った。
生肉に威嚇された。
なんでだよ。
撫でてもねえよ。
生肉は、その日ずっと拗ねていた。
寝たら忘れたみたいだった。単純な肉である。




