攫われた姫君
暇ねん「途中まで第三者の視点です」
「セレナ姫も今月で学園を卒業ですね、そろそろ候補はお決まりになりましたか?」
それは昨日の出来事であった。
城内、それもセレナの自室でセレナと修二たち護衛隊、それに王妃様が集まり紅茶の入ったティーカップ片手に午後のお茶会をしていた。
紅茶を一口飲んでからメイはセレナに一番気になっている事をみんなの前で聞いてくるのであった。
「えっ、いや・・・・・その・・・・・・・」
その言葉に一瞬で顔をトマトのように真っ赤にし困ったような表情をするが、その表情には恥じらいを感じさせる。
「こらメイ!セレナちゃんを困らせないの」
「でも、お姉ちゃんも気になるでしょ?」
返ってきた返事にうっ、と押し黙りティーカップに口をつけて逃げる。
「私も気にるわね。で、誰なのセレナ?」
「お母様!?」
以外と言わんばかりのセレナの表情に王妃は心外だわ、と言いたそうな表情になる。
「たった一人の娘の結婚話なのよ、気になるのは当然だと思いますが?」
娘の恋愛に興味津々な王妃は面白そうにセレナの答えを待っている。
それは王妃だけでなく修二たちも同じである。しかし、候補に入っている八雲の親である修二は口出しをしない。シュドの方も一時期、同じ立場だったのでこちらも何も言わず、事の成り行きを見守っている。
と、言ってもセレナの正確を考えると修二たちはセレナの答えを予測・・・・いや、答えをすでに分かっている。
「えーっと・・・・あはは」
笑って誤魔化すセレナ。
やはり、と言いたそうに修二たちは笑っている本人を温かい目で見つめる。
セレナのことだから笑って誤魔化すと踏んでいたのだ。言い性格をしている。
しかし、そう思っているのは男性である修二とシュドだけであった。女性陣は答えるまで帰らないと言わんばかりの雰囲気である。というか勢いだ。
「笑っても無駄よセレナちゃん。ちゃーんと話してくれるまで私たち、帰りませんよ!」
ルミナがセレナの横でガッチリと肩を掴む。当然、それにビックリしたセレナは逆側に逃げようとしたが、そちらからは妹のメイが肩を掴んでいた。
「そーですねぇ、候補者は上からレーベル王子、サバナ王子、そして・・・・・」
「シュウジの息子のヤクモね。王妃様は誰が良いですか?」
姉妹があげる候補者の名前。面白そうだからとルミナは王妃にまで聞き始めた。
しかし、流石に王妃にそれを聞くか!?と言いたそうに修二とシュドは顔をこわばらせる。
王妃は、本人達とは会ったこと無いが写真やレポートで大体の事は知っている。挙句の果てにはセレナや修二たちから話を聞いていたのである。
「私ですか?そうですね・・・・・国の事を考えるとサバナ王子かレーベル王子ですが・・・・・・」
「・・・・・・・」
八雲の名前が出なかった事に少し虚しさを感じたせレナを見て、王妃は朗らかに笑みを浮かべた。
「修二の息子と言うだけあって八雲君には剣の才能も頭の良さも少しはあるようですし、将来は期待できる人ですねぇ」
「もったいないお言葉です」
横で頭を下げる修二。
セレナの方も満面の笑みを浮かべる。
「まぁ、決めるのはセレナですから」
「あぁ!逃げたぁ」
「こらメイ!馬鹿のことを言うな」
慌てて口をふさぐシュドに微笑む修二たち。
時間は日も沈んでいる時間帯となっていた。
結局、この後の夕食でもセレナは笑って誤魔化したり、話を逸らしたりして逃げ切った。
「むぅー、明日は絶対に教えてもらうからね!」
最後にそういってメイは食堂を後にする。
続いて修二たちと一緒に王妃と国王も部屋を後にする。
この城では召使いも全員で一緒に夕食をとる決まりとなっている。
一人、食堂で食後のティーを楽しんでいる。
程よい温かさのカップを両手で包むように持ち、口元に運んでいく。
(結婚相手、ねぇ・・・・・・たしかにこの国の将来を考えるとレーベルかサバナだって事は理解できるけど)
セレナは目を瞑ると脳裏に移るのはクリスマスの前に学園であった練習試合。
レーベルに勝るとも劣らない剣の才能を開花させた一年の生徒。
練習試合を見に行ったセレナだったが結局どちらにも話しかけることはできなかった。
次に映るのはクリスマスパーティーでの事。
久しぶりに“彼”と話をしたこと。それもとっても嬉しそうに笑う彼。
最後に映るのは修学旅行。
最終日で嬉しくて泣いてしまうほどの贈り物を私に贈ってくれた。
指輪は今も左薬指にはまっている。修学旅行から帰ってくると、分かっていた事だけどルミナやメイ、お母様に聞かれました。でも、一番驚いたのはお父様が興味津々で聞いてくることでした。
思い出を一通り思い起こしてセレナは目を開けた。
一番最初に映るのは両手で包んでいるカップ。次に指輪。
「八雲──────」
その声は無意識だったのだろうか、小さく、言った本人でさえ聞こえているか分からない程の物だった。
ここで問題がおきた。
食堂を後にしたセレナ姫が消えた。
食堂を出るところは召使いが見ている。だが、それ以降誰一人としてセレナを見たものがいなかった。
夜は警護のため、修二たちが見回りを交代性でしている。
その時はメイだったのだが、セレナの自室を覗いた時、そこにはセレナの姿が見えず薄暗く寒い部屋だった。慌てたメイは急いで修二や国王の下に駆けていった。
「つまり、セレナ姫が攫われたのは昨日の夜八時から十時までの間。さらに誰一人不審人物を見たものはいない」
親父が昨日の出来事をオレたちに話し終えたようで、一息つく。
その間にオレたちは互いの顔を見合し、意見交換をし始める。
「どーおもう?」
「まぁ、十中八九プロの攫い屋。それか、このセイクリッド王国を敵意している国、だな」
「ボクも同感だね、レーベル王子の言うとおり攫い屋か敵国の犯行。でもこの国に敵対する国なんて片手で数えられるほど。リスクが高すぎる」
流石は次期国王になられるお二方。
冷静に分析し、それを口に出す。と言っても結局は推論の域を出ない。
「・・・・・・」
二人の話を黙って聞いているオレに心配そうに視線を向ける気配を感じる。
気配の方に顔を向けると親友の二人が何ともいえない顔をしている。
なんつー顔してんだぁよこの二人は。そんな心配そうな顔するなよな
「大丈夫だって、カイウス、レグ。それより、その話しなんだが・・・・・」
「ん?」
「どうかしたか?八雲」
サバナとレーベルは二人だけの会議を中断して視線を向けてくる。
「その話だけどさぁ・・・・・・本当にその攫い屋ってプロの犯行か?敵国の犯行か?オレは違うと考えるがな」
「ほぉ・・・・・どうしてそう思えるか聞かせてもらおう八雲」
「ボクも聞かせてもらいたいね」
二人の真剣なまなざしが痛いく感じる。
まぁ、平和ボケの日本人が何を言う!と言われても文句言えねぇしな
「だってさぁ、不審人物がいなかったんだろ?それって、最初っからいなかったって事じゃないの?」
「バカを言え!プロなら誰にも見つかることなく攫うことができる。それが攫い屋だ!」
「ふーん」
「ふーんって・・・・・・・ヤクモ?」
「親父、この城に召使いなど全員合わせたら何人いる?」
顎に手をあて何かを思い出すように親父は視線を下に向ける。
「・・・・・・・・確か五百人はいるはずだ」
「「っ!?」」
その数に二人はハッと目を見開くのをオレは見た。
「その攫い屋ってのがもしいたとしてもこの数に見つからずにセレナを攫えると思える?それも声を出さずに。外から進入って線もあるが、見た限り中から外になら縄を使えば降りられるが、外から中に入るには無理だ。城の周りには何も無いからな。セレナの自室は二階だろ?親父」
「あ、あぁ。だが、何故それをお前が知っている?」
「だって、この客間に来るまでの部屋にはプレートが張ってあった。つまり、プレートがはってある場所は召使や親父たちが寝る自室だろ?王族の者が一階で、しかもプレートをつけて部屋にいるかよ」
「ふっ、正解だ。二階は国王や王妃様、それにセレナ姫の自室と謁見の間。他にも部屋はあるが武器庫だったり図書室だったりだな」
感心したような顔でオレを見るなよ。
てーか、何だお前達!オレの顔に何かついてるのか?まじまじと見つめやがって
「たしかに・・・・・・この城に入るためには二十四時間門番が立っている間を通ってこないといけない」
「しかも、夜の八時から十時までに入る奴も出て行く奴もいない」
「そーゆうこと。で、敵国って言うけどさぁ、相手が分かっているなら入れないでしょ?最低限身分保障がないと見学だってできないだろうし」
「だけどよぉ、身分保障なんていくらでも偽装できるぞ」
「言いとこに気が付いたなレグ。確かに偽装される可能性があるが忘れていないか、この城に見学に来る者は必ず召使いか親父達護衛隊の手の空いてる人を必ず二人つける。コレがこの城が安全の理由だろ?学園で習ったろ」
「あー・・・・・・」
忘れてるなこいつ
何故こんな事を学校で習ったかも良く分からないが役にたったぜ。学園に感謝感謝
と、学園に人生で最初で最後の感謝をして、オレは話を戻す。
「見張りも兼ねて二人もいるんだ。好き勝手できねぇよ、悪さを考えてる奴ならな」
「おお・・・・・」
「以外だね、ヤクモにこんな才能があったなんて」
「以外って言うか・・・・・まぁ、色々とな」
推理小説でこんなネタがあったような気がしただけなんだが、とは言えずにカイウスに曖昧に答える。
「では、八雲はどう考えているんだ?」
「んーそれなんだが、この二つが消えると残りは消去法でこの城にいるだれか」
「─────っ!!」
その場にいる全員が固まった。
予想はついていたがここまで場が固まるとは・・・・・・・
「って、ことで城内を隈なく調べさせてもらうよ」
「いや、それは俺たちもやったが・・・・・」
親父の声にゆっくりと顔を向ける。
なんか微妙に汗を掻いてないか?
「それでももう一回だ」
「───わかった。だが、少し待て!その事を国王に・・・・・」
「良かろう。話しは理解した・・・・・・・・」
その声は突然聞こえてきた。
オレたちは反応的に声のほうに向いていた。
今回の反省
暇ねん「やばい!ネタがない」
八雲「昨日も言ってた」
暇ねん「やばい!ストーリーがずれてきた」
八雲「は?何言ってるの?」
暇ねん「いや~最初に予定していた話とずれて進んでいるから困ってるのよ」
八雲「なんだそりゃ!?」
暇ねん「詳しいことはもう少し話が進んでから」
次回『ここは任せろ、いけっ!』です。




