1973年8月30日 火曜日 3:29
「――リリ……リリ……。起きて。リリ……」
「小母様、小母様。……リリ、死んじゃったのよ。……もう、居ないのよ」
「うん、うん……わかってるわ、アン。わかってる……」
「小母様、泣かないで。……泣かないで。……やだ、泣いちゃう、あたしも……」
「――ジェイク。いや……サムと呼ぶべきかな。……本当にありがとう。……君のお陰で、私たちはリリを看取る事が出来た」
「……勿体ない言葉です。僕には……。精一杯でした。……ただ、それだけです」
「感謝している。本当に……。……ああ、駄目だな。涙腺が弱くなった。年だな」
「こんな時くらい、泣いていいと思います。ロバート。……あなたの、娘です」
「……そうだな。――私の、可愛い……愛しいお姫様だ」
「御両親の自慢をしていたと……エミーに聞きました」
「……嬉しい。何て言っていたの? この子」
「ロバートの事は、格好良いいやり手だと。エリンの事は、美人で優しいと」
「ふふっ。……あなたの方が、格好良くて、美人で、優しいわ。……リリ」
「リリ……笑ってる……」
「……いい夢を見ているのかな」
「うん。きっと……」
「またね、リリ。……またね」




