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それから、さらにあちこちを回って、いろんな施設を見せてもらった。
魚人の里の中でも、主要な加工工場なんかは中心に近かったから半日で周り切れてしまった。
海藻の養殖場なんかは里の外側にあるんだって。
海の輝石は管理が難しいので中心に近い場所で24時間体制で管理してるそうだ。
私が一番驚いたのは海の輝石や食品の加工工場だったけど、隊士さん達は他の貝殻の加工や細工の方にも驚いていて、とても興味を持ったみたいだった。
ヘビの一族の所で見せてもらった細かく砕いた貝殻を繋げたアクセサリーや、箱などに動物の形なんかを掘ったカメオみたいな小さな楕円形のレリーフをはめ込んだものなど、地上には無い技法がたくさんあって見るのは楽しかった。
箱の方なんて、楕円形の中にデザインするだけじゃなくて、もっと動物の形そのまま掘り出してはめ込んだりしても良さそうだけどなあ。
それに、もう少しキラキラした貝を使えば、螺鈿細工に似たものになって装飾性が高くなると思うけど。
でも、それは言わないでおくことにした。
真珠が貝から出来ないなら、螺鈿細工に向いたキラキラした貝も無いかもしれないから、危ない発言はしないにこしたことはないしね。すでに珊瑚でやらかしちゃったし。
この時も見せてもらっても良いのかと皆さん動揺してたけど、箱はルシェモモのものだし、材料の貝は加工済みで組み合わせるだけの場所なので構わないそうだ。
貝を糸に通したり、箱にはめ込むだけなら確かに見ただけでわかることだもんね。
貝の加工はシーマームが自宅で行うものらしく、専属の職人さんはいないのだとか。
内職みたいなものなんだろうか。観光地のお土産的な?
「綺麗ですね。石を細工したものとはまた違って、それに軽い。」
フェラリーデさんは貝のネックレスは初めて見たみたいで、持たせてもらってその軽さに驚いていた。
皆さんも貝の細工は気に入ったらしく、お土産に購入したいという話まで出て、その場で何点かお買い上げ。
何だろう。
交流のためにきたんだから問題ないと思うんだけど、何だか観光っぽくなってきてる。
まあ、最初より楽しそうだからいいか。
なんて思ってたら、私の首にも貝のネックレスが次々とかけられていく。
「ハルカにはこの方が、いや、もっと淡い方が。しかし…。」
クルビスさん。
いや、まあ、婚約者にネックレスを選んでいる隊士さんを見てて、こうなるかなあとは思いましたけどね?
とりあえず、真珠のネックレスもありますし、私の首にはこれ以上ネックレスはかけられないので、10個目はやめて下さい。
それに私、貝なら白っぽい方が貝っぽくて好きなので、そんな紫やら赤い貝はいいんですけど、聞いてます?




