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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
戦争解決編
97/438

89.奴隷商


 エレナは唖然としていた。


「エレナおめでとう」

「あ、ありがとうございます」


 なんと、風に引き続き、【雷の魔法】もレベル1ながら習得できてしまったのだ。


「まだ信じられません。セイジ様とアヤさん以外では、今まで1人しか習得できなかった【雷の魔法】を、私が習得してしまうなんて……」

「エレナちゃんは、日本で電化製品に囲まれて生活してたからね~」

「それに、電気の勉強もしていたんだろ?」

「は、はい」


 これで闇以外は、参拝した所の魔法を全てゲット出来ているわけだ。このままコンプリートを目指しちゃうぜ!


~~~~~~~~~~


 俺達は、魔法を強化する装備を購入しに、ガムドさんの店にやって来た。


「こんにちは、ガムドさん」

「ようセイジ、よく来たな。酒は?」


「二言目に酒ですか」

「持ってきてるんだろ?」

「そりゃあまあ、持ってきてますけど」


 俺は、商店街の酒屋で買ってきた『ブランデー』をテーブルに置いた。


「ん? ウイスキーじゃないのか?」

「よくわかりましたね」

「香りが違う」


 流石、酒好き。


「原料が小麦じゃないので、違う酒ですが、これも美味しいですよ」

「ああ、ありがとよ。それで、今日は何が欲しいんだ?」

「やっと本題に入れますよ。今日は前に貰った【水のロッド】や【回復の髪飾り】みたいな、魔法を強化してくれる装備を、ひと通り揃えたくて来たんです」


「ん? ひと通り? どういう事だ? エレナの嬢ちゃんは水と回復じゃなかったか? もしかして、仲間を増やすのか?」

「違いますよ、他の魔法も新たに習得したんです」


「新たに習得!? 土か? それとも風か?」

「風です、土もきっと習得できるので、先に購入しておきたいんです」


「エレナの嬢ちゃん、すごい魔法使いだったんだな。ちょっと待ってな、髪飾りとロッドだったな」


 ガムドさんは奥から髪飾りとロッドを幾つか持ってきた。


「【風のロッド】【土のロッド】、【風の髪飾り】【水の髪飾り】【土の髪飾り】だ」

「あれ? 火は無いんですか?」

「そんな珍しいのは、ここには置いてないぞ。どうしても欲しいなら、スガの街の武器屋にでも行ってみるんだな」

「ありがとうございます。後で行ってみます」


「それで、この髪飾りとロッドは、どうする?」

「全部で、いくらになりますか?」

「一つ1000Gだから全部で5000G何だが、セイジには世話になってるから、3000Gでいいぞ」

「ありがとうございます」


 俺は3000Gを支払って、髪飾りとロッドを手に入れた。

 俺達はガムドさんの店を出て、スガの街の武器屋に向かった。


~~~~~~~~~~


「こんにちは」

「いらっしゃい、また家の庭を破壊しに来たのかい?」

「勘弁して下さい。買い物ですよ」

「なんだそうか。何を買いに来たんだ?」


「【火の髪飾り】と【火のロッド】は、ありますか?」

「えらく珍しいのを探してるんだな、あることはあるよ」

「それじゃあ、雷氷闇光なんかもあるんですか?」

「【闇のロッド】と、【氷のロッド】は、たしかあったはず。他のはいくらなんでも置いてないよ」


「作ったりは出来ないんですか?」

「材料があれば作れるけど、材料の【属性強化魔石】は、うちじゃ作れないぞ」


「それは何処で扱っている物なんですか?」

「イケブの街の魔石屋だ。ずっとゴブリンに捕まってて、最近救出されたらしい」


 あの人か。

 取り敢えず【火の髪飾り】、【火のロッド】、【氷のロッド】、【闇のロッド】を、合計12000Gで購入したのだが―



 店を出た所で、俺は変なことに気がついた。


 マップ上に『オーク』が表示されているのだ。


「オークが居る」

「え!? 何処に?」


「ずっとあっちの方の、森の中だ」

「え? 森の中ってそんな遠くの敵が分かるの?」

「前までは分からなかったんだが…… それに魔物の種類も、何故か分かるようになってる。どうしてだろう?」


「セイジ様、【風の魔法】を習得した影響なのでは?」

「あ、そうか! 【風の魔法】を習得して、臭いを感知出来るようになったんだ!」

「え! 臭い!?」


 アヤは何故か、股のあたりを押さえながら、俺を睨みつけている。『すかしっ屁』でもしたのか?


「魔物の臭いを嗅ぎ分けられるようになっただけで、『すかしっ屁』の臭いまでは、わからないよ」

「兄ちゃんのバカ! 死ね!」


 アヤの『すかしっ屁』は置いておいて、オークの数が気になる、森の中とはいえ、20匹ものオークがいるのだ。

 どうしようかと思案していると―



 20匹のオークのうち、1匹が街に向かって移動を始めた。


「オークが1匹、こっちに向かってきている!」

「セイジ様、1匹だけなんですか?」

「ああ、そうだ。一体何なんだろう?」


 俺達は、様子を見に、村の森側の出入口にやって来た。


 しばらくすると、一台の馬車が街の中に入ってきた。


「あれだ。あれにオークが乗ってる」


 俺達は、馬車を追った。


 馬車はしばらく街の中を進み、奴隷商の店の倉庫に入っていった。


「なるほど、あれがオークに手を貸してる奴のアジトか」

「オークに手を貸してる? 人間が手を貸してるの?」

「ああ、そうみたいだ」



 俺達は、奴隷商の店に、堂々と入っていった。


「申し訳ありません。ただいま奴隷は品切れでして……」

「品切れ? おかしいな、さっき馬車に乗せて、1(ひき)持ってきたのではないのか?」

「いえ、あの、あれは……」


「ああ、そうか、あれは奴隷ではなく、魔物でも連れてきたのか?」

「え!? いいえ、違います!」

「では、なんだ?」

「それは、その……」


「お前の口から言えないのなら、代わりに俺が言ってやろうか?」

「へ?」


「山賊のお前は、オークと手を組んで、【人化の魔石】を持ったオークを、奴隷と偽って街に入れ、オークが人を拐う手助けをしている。違うか?」

「……」


 【鑑定】で『職業:山賊』なのがバレバレなのだよ。

 奴隷商あらため山賊は、俺のことを睨みつけている。


「さあて、どうする? ちなみに俺達三人共、お前と1対1で戦っても、余裕で勝てるくらい強いぞ?」


「死ね!」


 だから言ったのに、急に襲ってきた山賊は、アヤのパンチ一発で気絶していた。


「オークは?」

「奥の部屋だ」


 奥の部屋に移動すると、イカ臭い男が睨みつけてきた。


「お前、なんだ?」

「オークを退治しに来た」

「!?」


 イカ臭い男がいきなり襲ってきたが、俺の【電撃拳】で気絶させた。


「兄ちゃん、そいつ殺さないの?」

「ああ、ちょっとした『余興』に使おうかと思って」

「余興ですか?」


「ああ。アヤ、さっきの山賊を運んでくれ。冒険者ギルドまで運ぶぞ」

「うん」


 俺はイカ臭い男を、アヤが山賊を、それぞれ頭の上に持ち上げて、冒険者ギルドまで運んだ。



「すいませーん!」

「はい…… って!? その気絶した男たちは何ですか!?」


 俺とアヤは、冒険者ギルドのフロアに、山賊とイカ臭い男を降ろした。


「そっちの男は山賊で、こっちのイカ臭い男は、人に化けたオークです」

「は? 何の冗談ですか?」

「冗談じゃありませんよ」


 周囲に冒険者やギルドの職員が集まってきた。


「それでは、このイカ臭い男を見ていて下さい。これからコイツの正体を、暴いてご覧に入れます!」


 俺は大声でそう宣言すると、イカ臭い男が持っていた【人化の魔石】を探し出し、みんなに見えるように掲げた。

 すると、イカ臭い男は、その姿を人間からオークに変化させていった。


「ほ、本当に、オークだ!?」


「オーク達は、この【人化の魔石】を使って人に化け、山賊と手を組んで、奴隷のふりをして街に忍び込んでいます。そっちの男は、奴隷商のふりをしていた山賊です」


 冒険者ギルドの中は、騒然としていた。


「あ、コイツは! 指名手配中の山賊の手下だ」


 ギルドの職員が、山賊の男の事を知っていたみたいだ。

 それから、ギルドで話し合いになり、山賊の討伐の為の部隊を結成する話になったのだが、俺達は別の用があると言って断った。

 これだけ大げさに騒いでおけば、オークに忍び込まれることも無いだろう。


 俺達は、スガの街を後にして、イケブの街へ向かった。


やっと奴隷関連の話が出てきました。


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― 新着の感想 ―
[一言] コメント控えるって言ったそばからなんですが、 オークってイカ臭いのに肉は人気なんですね。 よく食おうと思ったなぁこの世界の人間って。
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