88.闇風
「セイジ様、色々やることって何ですか?」
俺は、アヤとエレナに予定を伝えた。
1.食料を売却して『シンジュの街』の食糧事情を改善
2.『土の神殿』に参拝(ついでに『風の神殿』も)
3.魔法を強化する装備を購入
4.各街の様子を見てくる
「兄ちゃん、なんで魔法を強化する装備を買うの? コスプレ用?」
「実は気になることがあって、それの対策用に持っておきたいんだ」
「気になることって?」
「ゴブリンやオークは、人間と魔族に戦争をさせようとしている」
「うん」
「戦争している間に、あいつらは何をする気だ?」
「あ! 隙を突いて攻めてくる!?」
「ああ、その可能性は高い」
「その事と魔法を強化する装備に、どんな関係があるの?」
「ゴブリンの厄介な所は、とにかく数が多いことだ。プリンスが指揮していた部隊だけでもあの数だから、キングが指揮する部隊はもっと多いと考えるべきだろう」
「魔法攻撃で一網打尽にするんだね!」
「まあ、あくまで、もしもの時の為だけどね」
「じゃあ、各街の様子を見てくるって言うのも…」
「ゴブリンやオークがどこを狙うか分からない。しかも各街ともに、戦争に兵士を取られて手薄な状態だ」
「兄ちゃん、シンジュの街のスラム街も注意が必要だよ」
「そうか、あそこも危険か…… もし同時に攻めてきたりでもしたら、手が足りなくなるな」
作戦会議は置いておいて、他の予定を済ませてしまう事にした。俺達は、『シンジュの街』に戻り、商人ギルドへ向かった。
「食料であれば、何でも通常の三倍の金額で買い取ります!」
「三倍!? どうしてそんな高く買ってくれるんですか?」
「実は…… 各貴族軍の持ってきた食料が、何者かによって、かなりの量盗まれてしまったんです。それで、各部隊とも、街の食料を買いあさっておられる様子でして……」
これは、誰かによる『兵糧攻め』なのでは?
「小麦粉を、ある程度の量持ってきています。あとオークの肉って食べられるんですよね?」
「それはありがたい! オークの肉も兵士の方々には人気が高いです。品物はどちらに置いてありますか?」
「こちらで運びますので、納品する場所を教えてください」
「では、裏の倉庫の方にお願いします」
「わかりました」
裏の倉庫にまわると、空っぽの倉庫の前でマッチョマンが暇そうにしていた。
「何のようだい? 倉庫は空っぽで食料は無いよ」
「食料の納品に来たんですよ」
「マジか! 品物は何処にあるんだ?」
「魔法で運んできました」
「魔法だと!?」
王様から追われることもなくなったし、少しくらいなら能力をばらしても良いよね?
「ただし、ここで見たことは、他言無用でお願いしますね」
「ああ、もちろんだとも」
俺は、インベントリから【小麦粉】25kg×10袋、【オーク】×100匹を取り出し、倉庫に収めた。
「なんじゃこりゃーー!!」
結局、小麦粉は7500G×10袋で、75000G
オークは6000G×100匹で、600000G
合計675000Gにもなった。
日本円に換算すると6750万円。
流石のギルドにも、そこまでの金貨は無いので、この食料を貴族の各部隊に売りに行き、そのお金で後日支払ってもらうことになった。
商人ギルドは、大量の食料確保で活気を取り戻し、職員全員で『てんやわんや』の大騒ぎになっていた。
売りに行った貴族達の間では、【小麦粉】が特に喜ばれたらしい。なんせ『Sランク』の【小麦粉】だからな!
取り敢えず、売った【小麦粉】の袋の1つに、『追跡用ビーコン』を仕掛けておいた。人以外にビーコンをつけるのは初めてだが、問題なく機能していた。
その時に気づいたのだが、ビーコンを設置できる数が5個から6個に増えてた。どうやらゴブリンプリンスの時に増えていたみたいだ。
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次に俺達は『土の神殿』に来ていた。
「土のマナ結晶を参拝したいのですが、参拝料はいくらですか?」
「今は、一般の参拝は出来ないよ」
「え!?」
「今は、戦争に参加する人の参拝が優先なので、どうしても参拝したいのでしたら、冒険者ギルドで義勇兵を募集しているので、そちらに参加してみてはいかがですか?」
マジか! これは困った。
「アヤ、エレナ、どうする?」
「私はパス。どうせ、日曜日に帰らないといけないし」
「そうか、アヤは参加できないか」
「参加してしまうと、自由に行動できなくなりそうですね」
「それじゃあ、他の事を全部済ませてからまた来るか」
「はい」
「あのー、すいません」
立ち去ろうとしていた時、いきなり、受付の人が話しかけてきた。
「はい、なんでしょう?」
「『闇のマナ結晶』の方は、お一人10Gで普通に開放していますので、よろしかったら行ってみてはいかがですか?」
「あ、そうなんだ。じゃあ、行ってみます」
『闇のマナ結晶』の受付に移動し、30Gを支払って、3人で中に入る。
そこには、黒いマナ結晶が祀られていた。
「真っ黒だ」
「セイジ様、私、闇についての勉強をして来ませんでしたが、大丈夫なんでしょうか?」
「闇の魔法がどういう物なのか分からないから、しょうが無いよ。まあ、物は試しだ」
「はい」
俺達が『闇のマナ結晶』に触れると、うっすらと輝き、俺の体にだけ光が入っていった。
『【闇の魔法】を取得しました。
【闇の魔法】がレベル3になりました』
俺はレベル3か、やはりそのくらいか。
アヤとエレナを【鑑定】してみたが、【闇の魔法】は増えていなかった。
「アヤとエレナは、【闇の魔法】を覚えられなかったみたいだ」
「残念です」
「兄ちゃんは?」
「俺はレベル3だって」
「どんな魔法が使えるようになったの?」
「えーとだな」
闇の魔法の詳細について調べてみた。
┌─<闇の魔法>──
│【睡眠】(レア度:★)
│ ・自分自身または標的を眠らせる。
│
│【影コントロール】(レア度:★)
│ ・影をコントロール出来る。
│
│【夜目】(レア度:★★)
│ ・暗闇の中でも見ることが出来る。
│
│【夜陰】(レア度:★★)
│ ・夜間のみ姿を消すことが出来る。
│
│【腐敗】(レア度:★★★)
│ ・標的を腐敗させる。
└─────────
俺は、自分の影をコントロールして、影絵をしてみせた。
「うわ、兄ちゃんの影が動いてる!」
「セイジ様すごいです!」
「こんなのだけど、これ、何に使うんだろう?」
「他には?」
「あとは、【睡眠】【夜目】【夜陰】【腐敗】だって」
「兄ちゃん、女の子を眠らせて襲うきでしょう?」
「そんなことするか!」
「だって、【夜陰】に乗じて忍び込んで、【夜目】で暗くてもよく見えて、起きそうになったら【睡眠】で眠らせて。女の子を襲うためにあるようなものじゃない!」
「せ、セイジ様……」
「俺が選んだわけじゃないだろ!」
なんとか冤罪を晴らし、俺達は『風の神殿』へやって来た。
「風のマナ結晶の参拝をお願いします」
「お一人4500Gです」
「兄ちゃん、エレナちゃん、がんばってー」
9000Gを支払い、俺とエレナはマナ結晶へと進んだ。アヤは、もう【風の魔法】を覚えているので、外で留守番だ。
風のマナ結晶の所まで来たのだが、エレナが不安そうな顔をしている。
「エレナ、大丈夫だよ。風についての勉強をちゃんとしてきたんだろ?」
「は、はい。で、でも……」
「思い切って行こう!」
俺は、エレナの手を取り。
びっくりするエレナの手を、風のマナ結晶に押し付けた。
「あ!」
エレナは、思わず目をつぶってしまている。
そんな二人の体の中に、マナ結晶からの光が入り込んでいくのが見えた。
『【風の魔法】を取得しました。
【風の魔法】がレベル4になりました』
俺はレベル4か。
さっそく、エレナを【鑑定】してみた。
エレナの風の魔法のレベルは…… 3だった!
「エレナ、風の魔法のレベル、3だ!」
「ほんとですか!?」
風のマナ結晶の前で、俺とエレナは―
二人っきりで、抱き合って喜んだ。
歯が痛いせいか、食欲不振ぎみ……
ご感想お待ちしております。




