085.第一回コスプレ会議
「ただいま~」
「セイジ様、おかえりなさいませ」
俺が家に帰ると、居たのはエレナだけで、アヤはまだ帰ってきていなかった。
買ってきた高級メロンを、わざと冷蔵庫に入れ。いつもとは違う、ダンディーな部屋着に着替えた。
「セイジ様、いつものお召し物じゃないのですね」
「ああ、今日はアヤの友達が遊びに来るから、それなりの格好で出迎えようと思ってね」
「まあ、それじゃあ私も、着替えてきます」
エレナは、着替えに行ってしまった。いま着ていた服でも十分なのに。
着替えて戻ってきたエレナは……
「エレナさんや、その服装はいったい……」
「セイジ様、なにか、おかしかったですか?」
エレナは、お姫様のドレスを着ていた。
何と言って説明しようかと考えていると―
「ただいまー」
アヤが帰ってきてしまった。
「はーい」
エレナは、その格好のまま玄関に。
「エレナちゃん! なんでそんな格好をしてるの!?」
「アヤさん、お帰りなさい」
「お邪魔するぞ」「お邪魔します」
アヤに続いて、舞衣さんと百合恵さんが顔を出した。
「いらっしゃいませ」
エレナはお客さん二人に対して、優雅な挨拶をした。スカートを摘んで、ちょっとだけ姿勢を低くする、例のアレだ。
「お姫様だ!」「お姫様がいます!」
舞衣さんは、少し驚いた程度だったが、百合恵さんは、大興奮してエレナに近づき、かぶりつきそうな勢いで、エレナの手の甲にキスをした。エレナも少し引いている。
「いらっしゃい。君たちが、アヤの部活の先輩だね。話は聞いてるよ」
「ああ、コイツが私の兄ちゃんだよ」
「ん!? こんばんは……」
俺が出迎えると、舞衣さんは何故か俺を少し警戒しながらジロジロ見てきた。百合恵さんはエレナに夢中で、俺にはほとんど見向きもしなかった。
二人をリビングに案内したのだが、百合恵さんはまだエレナの手を握っていて、挙句の果てに手の甲をキスするのではなく、ペロペロし始めた。流石のエレナも苦笑いしている。
「こら百合恵、いい加減にしないか。皆さんが引いてるぞ」
「あら、ごめんなさい。つい欲望が抑えきれなくなって」
ヤバイ人だとは知っていたが、ここまでとは……
「それではこれより、第一回コスプレ会議を行います!」
パチパチパチ
アヤが高らかに開会を宣言し、エレナが拍手をして、舞衣さんと百合恵さんは、小さい子供を見守るような表情でニッコリ微笑んでいた。
「まずは、兄ちゃん! 美味しいものを用意して」
「ああ、わかった」
まあ、アヤがこんな事を言い出す事ぐらい、お見通しなのだ。
わざわざ冷蔵庫で冷やしておいたメロンを取り出したが、入れたばかりであまり冷えていなかったので、【氷の魔法】でちょうどいい温度に冷やし、8等分に切り分け、4つの皿に、2つずつ乗せて、4人に出してあげた。
「「「ありがとうございます」」」
「あれ? 兄ちゃんの分は?」
「俺? 俺はいいよ」
「お客さんの前だからって、なに格好つけてるの。私のを半分あげようか?」
「半分って! お前が渡そうとしている方は、もう皮しか残ってないじゃないか!」
「兄ちゃん、皮好きでしょ?」
「それは、鮭の皮の話だろ!」
「そうだっけ?」
お客さんの前だっていうのに、なんで漫才しなくちゃいけないんだよ!
「ご兄妹で仲がいいんですね」
「「どこが!」」
アヤと被ってしまった。は、恥ずかしい……
「そんな事より、会議を進めなきゃ!」
アヤの進行により、会議は進み。件の『魔法少女・シィ』のDVDを、みんなで見てみる事になった。
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1話の内容はこんな感じだ。
1.大学に入学したシィは、魔法研究部に無理やり入れられてしまう。
2.一緒に入部したランとアプレと友達になる。
3.始めのうちは、魔法に対して空想科学的に検証するだけの部活だったのだが……
4.部長のシジルに河原に呼び出され、魔法を見せられる。
5.3人は部長のシジルから魔法のバトンを手渡され。
6.新入部員3人は、本当の魔法少女になってしまう。
しかし、1話を見終わった後、アヤは何故か6話を再生し始めた。
「アヤ、なんで1話の後が6話なんだ?」
「まあ、見てれば解るよ」
6話の内容は、こんな感じだ。
1.秋葉原に『バグ怪人ロリコーン』が出現。
2.バグ怪人を退治するため4人の魔法少女が出動。
3.火の魔法使い『ラン』が『バグ怪人ロリコーン』の『ロリロリ光線』を浴びてしまい、『ロリっ子』にされてしまう。
4.『バグ怪人ロリコーン』が一時撤退してしまい、『ラン』は『ロリっ子』から元に戻れない。
5.『ラン』は『ロリっ子』のまま、波瀾万丈の1日を過ごす。
6.『バグ怪人ロリコーン』が再び現れる。
7.散々辱めを受けた『ラン』が怒り狂って『バグ怪人ロリコーン』をボコボコにする。
8.『バグ怪人ロリコーン』を倒した事で『ラン』が元に戻るが、元に戻った事で、着ていた服が……
なにげに面白かった。特に最後が……
「あの、ちっちゃくなった『ランちゃん』、部長に似てるかも」
「百合恵、何言ってるんだ。ボクは、あんなにちっちゃくないよ!」
いやいや、凄く似てると思うぞ。
結局、『ロリっ子』にされた時の『ラン』を、舞衣さんがやることになり。
消去法で、土の魔法使いの『シジル』を、百合恵さんがやることになった。
俺はやっぱり、ゲーセン店員の男をやる事で決定らしい。まあ、かっこいい感じのキャラなので、よしとするか。
キャラの割振りが決まった後は、衣装をどうするかという話になった。
「はいはい! 衣装は私が作りますよ!」
「そういえば百合恵は、そういうの得意だったな」
「というわけで、体の寸法とかを色々測りまくっちゃうので、エレナちゃんから服を脱いでくらさい~」
なんか、百合恵さんが壊れてきた……
「おい、百合恵やめろ! エレナちゃんを脱がそうとするな!」
舞衣さんの必死の説得により、なんとか百合恵さんのセクハラを止めさせ、普通に採寸することになったのだが。
百合恵さんは、息をハアハアと乱しながら、みんなのサイズを測っていた。この人本当に大丈夫だろうか……
もちろん、俺はみんなのサイズを聞いたりなどは、していないよ?
「あら、エレナちゃんの髪飾り、すごく綺麗ね」
百合恵さんは、息を乱してエレナのサイズを測りながら、エレナが付けている【回復の髪飾り】に目をつけた。
「この髪飾り、まるで本当に魔法の力が宿ってるみたいに綺麗ね」
百合恵さん鋭い! まさにその通りでございます。
「変身した後の髪飾りにも似てるな」
「そういえば、そうね。色がちょっと違うけど」
各魔法少女の髪飾りの色は、シィが緑、ランが赤、アプレが青、シジルが黄だ。
「後は、魔法のバトンをどうするかだけど……」
「あ、バトンは似た感じのがあるから、ちょっと待って」
俺は、自分の部屋でインベントリから【水のロッド】を取り出し、リビングに戻ってみんなに見せた。
「凄い、重厚な作りですね。色はアプレちゃんの持ってる魔法のバトンにそっくり」
「もうちょっとハートマークとかが付いてれば、そっくりになるかも」
「髪飾りとバトンは、他の色も調達できるかどうか、俺の方であたってみるよ」
「ありがとうございます。じゃあ、私はそれ以外の衣装を、頑張って作ってきますね」
そんな感じで、第一回コスプレ会議は終了したのであった。
『魔法少女・シィ』は、以前に考えていてお蔵入りになった作品の再利用だったりします。(;´∀`)
ご感想お待ちしております。




