84.会社の岐路
ビリビリ魔石で世紀の大発明があった翌日。
出社すると、自席につく前に部長に呼ばれ、俺はカバンも持ったまま『社長室』へ連れて行かれた。
「失礼します」
「おう、来たか」
「あの~ 俺は、なんで呼ばれたんですか?」
「実は例の薬の件なのだが……」
例の薬って、【精力剤】の事か!?
「部長! 話しちゃったんですか!?」
「すまん、つい……」
確かに、口止めはしてなかったけど、よりによって社長に話してしまうとは……
「実は、大口の契約を結ぶ可能性のある会社の社長が、その薬にいたく興味を示していてね。事によっては、うちの会社のプロジェクトを、社内で後押ししても良いとおっしゃられて……」
公私混同も甚だしいが、アレの悩みはそれほど根深いものなのだろう。俺にはよく分からんが……
「それでだ、その例のアレを、定期的に手に入れて欲しいのだが、頼まれてくれるかね?」
「部長には週1本でお約束していますが、もう一本くらいなら」
「出来れば、週2本用意してもらえると助かるのだが」
「2本?」
「大事な取引先なので、事前にわし自身が実験台となってだな。いや! けっして自分のためにではなくてだな、我社のために我が身を犠牲にして、実験台にだ。勘違いしてもらっては困るぞ、わしは24時間いつも元気だからな!」
なんか、疲れてきた……
「わかりました、部長とは別に週に2本、なんとか調達してみます」
「おう、そうかそうか!」
社長は満面の笑みを浮かべていた。
「ただし、これ以上は他言無用に願いますね」
「分かっておる」
社長は、急に真剣な顔をして。
「……所で、今日何本か持ってきてたりは、しないのか?」
「ちょっと待ってください」
俺はカバンを探る振りをして、インベントリから【精力剤+3】と【体力回復薬+3】を3本ずつ取り出した。
「ほほう、これが例のアレで、こっちが体力を回復する奴か……」
「くれぐれも飲み過ぎには注意してくださいね」
「ああ、わかっとるよ」
社長は、そう返事しながら、何やら茶封筒を机から出し、俺に差し出した。
「これは、少ないが取っておいてくれ」
「どうも」
俺は何気なく受け取ってしまったが、受け取る瞬間、激しく嫌な予感がした。
俺と部長が社長室を退室すると、去り際に社長が何処かに電話をかけているのが見えた。奥さんだろうか。そういえば、社長は奥さんに先立たれて、若い人と再婚したんだっけか。まあ、俺には関係ないけど。
「いやあ、すまなかったね」
部長は、笑顔でそんなことを言いつつ、俺が渡した2本の瓶を、そそくさとスーツの内ポケットに仕舞いこんで、代わりにまた茶封筒を俺に渡してきた。
その後、一旦席に戻ってからトイレに行って、個室の中で2つの茶封筒の中身を確認してみたところ。
部長の封筒には、福澤諭吉が15名ほど居らっしゃり、社長の封筒には50名ほど居らっしゃった。
「わっ!?」
思わず変な声が出てしまった。いくらなんでも多すぎだよ!
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午後になり、仕事も落ち着いてきたので、日課となったアヤとエレナの覗きを行っていた。
エレナは、公園で小さい子供たちに囲まれて、遊んでいた。微笑ましい限りだ。
子供たちのお母さんがたも一緒にいて、エレナと何やら話をしている。
音声も聞いてみると、『アレルギー』とか『アトピー』とか『おまじない』とかの単語が聞こえてきた。
エレナは、子供たちを一人ずつ抱っこしては、何かをしている。絶対魔法を使ってるだろこれ。
まあ、見た目が急に変化するようなものじゃないから、大丈夫だとは思うが…‥
アヤは、空手道部の稽古場で、先輩方と話をしている。
どうやら、コスプレについての話をしているみたいだ。
「アヤちゃん、コスプレするの!?」
百合恵は、なぜだか凄く興奮している。
「家にエレナちゃんって子が、ホームステイしてるんですけど、その子がコスプレ大会に参加したいって言ってて」
「その子はどんな子なの?」
「写真、見ます?」
アヤはスマフォで撮ったエレナの写真を、先輩方に見せている。
「キャー! かわいい!! お人形さんみたい!」
「でしょー」
アヤは何故かドヤ顔だ。
「ぜひそのエレナちゃんに、お会いしたいです」
「じゃあ、今から家に来ます? 覗きが趣味の変態お兄ちゃんも居ますけど、実害はあんまりないので、大丈夫ですよ」
なんだと! 言い返せないのが悔しいけど。実害があんまりないって、どういう事だよ! まあ、実害があっても困るけど。
「行きます! 部長も一緒に行きましょ」
「アヤくんには、お兄さんが居るのか。それは会ってみたいな」
「じゃあ、決まりですね!」
そんなこんなで、空手道部の面々は、家に来ることになった。
しかたがないので、俺は帰宅時にスーパーによって、高級メロンを買って帰った。まあ、高額な臨時収入もあったしな。
実際にこんな薬があったら、いくらで売れるのだろう?
ご感想お待ちしております。




