82.魔石
2015/07/22 22:30 【魔石複製器】と【魔石】は、村から持ちだした物を受け取る様に変更しました。
2015/07/23 18:32 【魔石複製器】と【魔石】は、全部受け取った様に修正しました。
村には数匹のゴブリンが残っていたが、素早く片付けて、人が働かされていた場所へと向かった。
「助けに参りました、皆さん大丈夫ですか?」
3人で話し合い、今回に限って、エレナがリーダーということにしたのだ。
「え!? 助けに来たって…… ゴブリンは?」
「ゴブリンは、私達が全て倒しましたので、ご安心下さい」
「全て!?」
捕まっていた人たちに、もう安全である事をしらせ。エレナは、体力が弱っている人に【回復魔法】を掛けたり、食料や水を分け与えたりしていた。
「それじゃあ、もう、無理やり働かされることもないんですね?」
「ええ、もう大丈夫ですよ」
「「やったー!」」「「自由だ!」」「「ありがとうございます!」」
エレナは、みんなから口々にお礼を言われていた。
俺はみんなを一旦落ち着かせて、色々質問してみた。
「皆さんは何処から連れて来られたのですか?」
「私は、スガの街です」
「私は、イケブの街からです」
他の人も聞いてみたところ、5人程がスガの街から、残りの20人くらいは、イケブの街からだった。
「では、みなさんどの様に連れて来られたんですか?」
「私は、街の中で、急に後ろから襲われて、気がついたらオークに捕まっていました」
「私も、同じです」「私も」
どうやら、全員街の中で誘拐されたらしい。
前にも似たようなことがあったけど、街の中でどうやって拐われたんだ?
「みなさんは、ここで働かされていたようですが、何をするように言われていたんですか?」
「魔石を作らされていました」
「魔石? どのような魔石ですか?」
「よく知りません」
「作っていたのに、何の魔石だか知らないんですか?」
「魔石を作っていたというより、魔石を複製していた、という方が正しいと思います」
魔石の作り方を教えていた職人っぽい人が、答えてくれた。
「魔石の複製?」
「はい、ゴブリンがどこからか持ってきた【魔石複製器】と、とある【魔石】で、その【魔石】の複製をさせられていました」
「とある魔石とは?」
「私は鑑定が出来ませんので、なんの【魔石】かは、分かりませんが。これです」
渡された【魔石】を【鑑定】してみると―
┌─<鑑定>────
│【人化の魔石】
│持つ者を人の姿に変える魔石
│レア度:★★★★
└─────────
『人化』だと!
もしかして、オークにこれを持たせて街に忍び込ませ、それで人を拐っていたのか!? 状況から察するにそういうことなのだろう。
「最後に、この村の事をご存じの方は居ませんか?」
「私達は、他の街から連れて来られた者ばかりだから。魔王軍に滅ぼされた村としか……」
ここまで来て手がかりなしなのか……
「あ! 聞いた話ですが、この村の生き残りが数人、シンジュの街に居ると聞いたことがあります」
「生き残りが居たんですか!?」
「当初は全滅と聞いていたのですが。1ヶ月ほど経ったある日、この村の生き残りだという人達が、シンジュの街にひょっこり現れたそうです」
ここまでの話しを整理しておこう
・ゴブリン達は【人化の魔石】を作らせていた。
・【人化の魔石】を持ったオークやゴブリンが、街の中に潜んでいる可能性がある。
・シンジュの街に、スカベ村の生き残りが居る。
まずはゴブリンたちが【人化の魔石】を使って何を企んでいるのかだが。誘拐は、あくまでも【人化の魔石】を作らせる人族を増やすためであって、目的は別にあるはず。
街の中に【人化の魔石】を持ったオークやゴブリンが居るのなら、怪しい奴を片っ端から【鑑定】して見る必要がある。街の中にたまにいた『危険』を示す奴らは、犯罪者じゃなくて、『人化』したオークやゴブリンだったのかもしれない。プライバシーに配慮して、むやみに【鑑定】を使わないようにしていたのが、仇になってしまったな。
まず最初にすべきは、スガの街、イケブの街の、人化したオークやゴブリンの調査と、必要なら排除。
その次は、シンジュの街に行って、スカベ村の生き残りの調査と言った感じかな。
俺達は、捕まっていた人たちを、それぞれの街まで【瞬間移動】で輸送した。もちろん、他言しないように念を押してある。
~~~~~~~~~~
職人っぽい人は、捕まっていた人たちを代表してお礼がしたいと言うので、イケブの街にあるという、その人の魔石専門店に寄ることにした。
「どうぞ、ここです」
怪しげな店に入ると、中で年配の女性と若い女性が、暗い顔をして椅子に座っていた。
俺達が入ってくると、二人は急に立ち上がって。
「あなた!」「お父さん!」
職人っぽい人に駆け寄り、3人は抱き合って喜んでいた。
「無事でよかった」
「二人には心配を掛けてしまったな」
「お父さん、どこに行っていたの!」
「オークに拐われていた所を、この人達に助けられたんだ」
「そうでしたか、この度は夫を助けていただき、本当にありがとうございました」「ありがとうございました」
恐縮しっぱなしの親子に、魔石を色々と見せてもらうことになった。
店に置いてある魔石は以下のとおり。
┌─<鑑定>────
│【そよ風の魔石】
│周りにそよ風が吹く魔石
│魔力を込めると風が強くなる
│レア度:★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【湧き水の魔石】
│魔石から少しずつ水が溢れてくる
│魔力を込めると水の量が増す
│レア度:★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【冷やし魔石】
│周りがひんやり冷たくなる魔石
│魔力を込めると冷たさが増す
│レア度:★★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【微光の魔石】
│ぼんやりと光る魔石
│魔力を込めるとしばらく明るくなる
│レア度:★★★
└─────────
┌─<鑑定>────
│【着火の魔石】
│じんわり暖かい魔石
│魔力を込めると熱くなる
│レア度:★★★
└─────────
各属性の魔石があるのだが、土と闇の魔石は無いらしい。
「あれ? じゃあ、雷の魔石もあるんですか?」
「有ることにはあるのですが、使い道が無いので店には出していません」
┌─<鑑定>────
│【ビリビリ魔石】
│触るとビリビリする魔石
│魔力を込めるとビリビリが強くなる
│レア度:★★★
└─────────
「ビリビリするんですか?」
「ええ、ビリビリするだけで、何にも使い道がないんです」
「なるほど、では―
このビリビリ魔石をあるだけ、全部売って下さい!」
「え!? ビリビリ魔石をですか?」
これはいいものだ! いくらでも欲しい。
「わかりました、こんな物で良ければ幾らでも差し上げますよ」
俺は、大量の【ビリビリ魔石】を手に入れた。
「あと、魔石複製についても教えてもらえますか?」
「はい、分かりました」
職人さんは、とある【魔石】をカバンから取り出した。
「これは【ヌルポ魔石】という物です」
「ぬるぽ?」
「はい、【魔石】は『鉱山』や『ダンジョン』などで、見つかるのですが。『ダンジョン』では【特殊魔石】と【属性魔石】。『鉱山』では【属性魔石】と、この【ヌルポ魔石】が取れます」
職人さんは、【魔石複製器】を取り出し、【ヌルポ魔石】と【着火の魔石】をセットし、魔力を込め始めた。
しばらくすると、【ヌルポ魔石】が赤く変化して【着火の魔石】に変わった。
「このように【ヌルポ魔石】は、【魔石複製器】を使って、他の魔石に変化させることが出来ます」
「なるほど、こうやって複製するんですね」
「この【魔石複製器】と、【ヌルポ魔石】、あと、私達が作らされていた『ナゾの魔石』も、あの村から持ち出してきたものなので、助けて頂いたあなた方がお持ち下さい」
「いいんですか?」
「私達は、助けて頂いたのですから当然です」
「では、ありがたく頂きます」
【魔石複製器】と、【ヌルポ魔石】、【人化の魔石】をそれぞれ貰って、俺達は店を後にし、日本へと帰還した。
ガッ!
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