81.ゴブリン王子2
プリンスは大きな剣を抜いて、俺に襲いかかってきた。 流石、プリンスだけの事はある、スピードも早く、剣筋も鋭い。
俺は、なんとなくコイツと戦いたくなってしまった。
剣の腕は俺より上なので、じっくり観察し、剣筋を見極め、避けるのではなく、盾で受けるように心がけた。
何度か剣をまみえていると、プリンスは段々苛立ち、大ぶりになってきた。腕はいいのに、精神がそれに伴っていない感じで、激しく残念な奴だ。
「セイジ様、大丈夫ですか?」
どうやら向こう側は片付いたらしく、アヤとエレナが加勢に来た。
「コイツは、それなりに強いぞ」
俺が話をしていると、プリンスはいきり立って、無茶苦茶な攻撃をして来た。よそ見すると切れる女の子かよ!
プリンスの渾身の一撃を盾で受け止めると、体が少し浮いてしまった。
それを見ていたプリンスは、ニヤリと微笑を浮かべ、剣に力を込めて、浮いた俺の体を剣で投げ飛ばした。
「セイジ様!」
俺は吹き飛ばされ、木に激突しそうになったが、横向きに着地し、勢いを殺す事で衝突を免れた。
「悪い悪い、ちょっと油断した」
「兄ちゃん、そいつ、そんなに強いの?」
「それなりに」
俺達が会話していて、それがプリンスの理解できない言語な事が癇に障ったらしく―
『俺、無視、するな!』
ほんと、我儘なやつだな。きっと甘やかされて育ったんだろう。とうとうプリンスは、剣筋がデタラメになってきてしまった。
アヤとエレナは少し下がり、俺は、プリンスの剣を縄跳びのように躱して、注意を引きつけた。
『おのれ! 動くな!』
いい感じに俺に注意が向いている隙に、アヤとエレナは後方から水や氷で攻撃を加えているのだが、プリンスの着込んでいる鎧がそれなりにいいものらしく、魔法攻撃はあまり効いていない。
業を煮やしたアヤは、ナイフを構えて突っ込んできた。
ナイフの攻撃でも、プリンスの鎧にちょっと傷を付ける程度で、ダメージを与える程には効いていない。それでもアヤがしつこく攻撃をしていると―
いきなりプリンスが、アヤの方を向いて剣を振り下ろした!
ヤバイ!
アヤはナイフを捨てて『真剣白刃取り』をしようとしているが、タイミングが遅く、このままでは直撃を食らってしまう。
「バリア!」
バリンッ!
俺がアヤに掛けたバリアに阻まれ、剣の速度が一瞬遅れたことで。アヤの『真剣白刃取り』が間に合い、すんでの所で、プリンスの剣をアヤが『白刃取り』に捕らえた。
「危な! 死ぬかと思った!」
「無謀すぎだ、バカ!」
しかし、プリンスは諦めずに剣に力を乗せ、白刃取り状態の剣が、ズルズルと押し込まれて来ている。
「【電撃】!」
『グエェッ!!』
俺の電撃がプリンスの鎧を貫通すると、プリンスは体がしびれ、硬直した。アヤはその隙に、ナイフを拾って後ろに下がった。
『おまえ、魔法、何した!』
『ゴブリンに、秘密をバラすわけ無いだろ』
またもや俺とプリンスの睨み合いが続いていると、今度はエレナが突撃してきた。エレナまで! 一体何を考えているんだ!?
案の定、プリンスはエレナを狙い撃ちにしようと、剣を大きく振りかぶった。
バシャンッ!
その瞬間、プリンスの兜の顔の部分に、アヤが水の魔法をぶつけた! プリンスは、急な攻撃に面食らってたじろぐ。
ガキンッ!
その隙を突いて、エレナがプリンスのスネを【魔力のロッド】で、おもいっきりぶっ叩いた!
『ギャーッ!!』
エレナの攻撃で、鎧のスネ部分が大きく凹み、プリンスは悲鳴を上げながら、もんどり打ってぶっ倒れ、スネを押さえて転げまわっている。エレナはその隙に、攻撃されない位置までさっさと距離を取った。なんというナイスな連携攻撃。二人ともやるな!
プリンスが何とか立ち上がってきたが、アヤの水攻撃を連続で食らい、完全に視界を奪われている隙に、エレナの攻撃が再びスネに決まり、鎧のスネ部分は、壊れて外れてしまった。
それを見たアヤは、ここぞとばかりに突撃。エレナは水攻撃で、プリンスの視界を奪う役を買って出て、アヤのナイフはプリンスのスネを、スパッと切断した。
『グワァー!』
プリンスは雄叫びとともに前のめりにぶっ倒れ、顔面から地面に激突した。
エレナは追い打ちをかけるように、地面に激突したプリンスの後頭部に―
魔力のロッドをおもいっきり、振り下ろした。
何かが潰れるような鈍い音がして、ゴブリンプリンスは、完全に沈黙した……
「よく頑張ったな、二人共」
「にへへ」
アヤは変な笑い声を上げ、エレナはニッコリ微笑みながら、呼吸を整えるのが精一杯といった感じで、返事をすることが出来ないでいた。
ステータスを確認すると、俺はレベル29。アヤはレベル20、体術と短剣術がレベル4。エレナはレベル19、棒術がレベル3に、それぞれなっていた。
俺達は、ゴブリンをインベントリに仕舞いつつ、村に向かった。
プリンスがなんか変なキャラになってしまった。
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