80.ゴブリン王子
「兄ちゃんダメだ。ゴブリン達、警戒しちゃって、ちょっとでも手を出したら全部来ちゃいそう」
ホブゴブリンを1匹倒したあと、アヤが敵を連れてくることが出来ず、音を上げてしまった。
「そうか、それじゃあ仕方ないな。ちょっとみんなで、様子を見に行ってみよう」
仕方なく、3人一緒に村の様子を見に行ってみると、ゴブリンの数は残り50匹ほどになっていた。ゴブリンプリンスらしき個体は見当たらないが、ホブゴブリンが4匹も残っていて、周辺を厳しく警戒している。どうしたものか……
「仕方ない、残りは一気にやるか」
「セイジ様、流石にあの数は……」
「アヤも攻撃に参加してくれ。俺も参加する。それなら平気だろ?」
「了解!」「はい」
俺達が姿を表すと、いきり立ったゴブリン達は、全員で進軍してきた。村の中で戦うわけにはいかないので、森が開けた場所で待ち構えた。
「セイジ様、アレを見て下さい」
エレナが指差す先を見てみると、ホブゴブリンより更に大きい、鎧を着たゴブリンが1匹、最後尾につけていた。
「アレが、ゴブリンプリンスか」
「は、はい」
鑑定してみると、オークや黒オークよりも遥かに強い。オークたちが大人しく言うことを聞くわけだ。
ゴブリン達は、少し離れた位置で止まり、俺達と睨み合う様な状態になった。ゴブリン達の隊列は、先方が普通のゴブリン、ゴブリンプリンスは最後尾に居て、ホブゴブリン達はプリンスを守るような陣形をとっていた。
ゴブリンプリンスは、指示を出していたが、言っている意味は判らない。言語習得を使って見るか? MPをかなり使ってしまうが、和菓子があるから平気かな。
俺は思い切って【言語習得】を使用してみた。
┌─<言語習得>─
│【ゴブリン語】を習得します
│ 習得レベルを選択して下さい
│
│・レベル1(消費MP:50)
│ 片言で話が出来る
│
│・レベル2(消費MP:100)
│ 日常会話程度は話ができる
│
│・レベル3(消費MP:200)
│ スラスラと会話ができる
└─────────
あれ? レベル3までしか無い。そうか! ゴブリン語には『字』が無いのか。
俺は、MPを200消費して、レベル3【ゴブリン語】を習得した。
『あいつら、逃すな! ヘマした奴、死刑!』
「フゴッ!」
作戦とかを言っているわけじゃないのか…… あと、ゴブリン語を喋れるのはプリンスだけで、他のゴブリンは、ゴブリン語を理解することは出来ても、喋ることは出来ないみたいだ。
「アヤ、エレナ、俺がプリンスを分断して、足止めしておくから、普通のゴブリン達は、お前たちで片付けてくれ」
「おう!」「はい」
「行くぞ! 【瞬間移動】!」
俺は、プリンスの背後に移動して、普通のゴブリンとプリンス達との間に、物理攻撃と光、音を遮断するバリアを張って、分断した。
『こっちだ!』
プリンスとホブゴブリンは、背後に現れた人間が、自分たちの言葉で喋った事に驚いていた。
バリアの向こう側を【追跡】の魔法で確認してみると、アヤが発生させた竜巻で、ゴブリンたちがパニックに陥っていた。
『お前たち、人間を拐って何をしていたんだ!』
『お前、人間、なぜ、喋る?』
一応、ゴブリン語で話を聞いてみたのだが……
プリンスのくせに片言なのかよ。
『今さっき覚えたんだよ。それよりこっちの質問に答えろ』
『人間、ひみつ、喋らない』
『喋らないと痛い目にあわせてやるぞ』
『人間、弱い、おまえ、殺す』
ダメだ、これ以上は情報を引き出せそうにないな。
『お前たち、人間、殺せ!』
「ウゴーッ!」
プリンスが命令すると、4匹のホブゴブリンが同時に襲ってきた。俺は、インベントリから剣と盾を出して迎え撃つ。
4匹のホブゴブリンは、それぞれ別の武器を持っていた。斧、ハンマー、棍棒、槍、どれも重量感のある、でかい武器だ。
俺は4匹に取り囲まれ、4方向から攻撃をされているが、重量級武器だけに攻撃が遅く、簡単に避けれてしまう。
そうこうしている間に、バリアの向こう側では竜巻と雹が荒れ狂う、大荒れの天気になっていて、ゴブリンがバタバタ倒れていく。
「そろそろいいかな?」
俺は左手で、斧を振り下ろしてきたホブゴブリンの手を掴んで、【瞬間移動】でバリアの向こう側へ移動し、ホブゴブリンを置いて、直ぐに元の場所に戻った。その間実に1秒ほど。
『1匹、消えた、何した?』
プリンスも何が起こったか、あまり理解していないようだ。一瞬だったし、バリアの向こう側は見えないし、音もあまり聞こえてこない。
しばらくタイミングをうかがい、次はハンマーの奴を連れて行った。バリアの向こう側ではホブゴブリンを倒す速度が、だんだん早くなってきている様な気がする。
棍棒ホブゴブリンに続いて、最後の槍ホブゴブリンを送り届けると―
俺とプリンスは、二人きりになってしまった。
『さて、もうお前だけだぞ。観念して何を企んでいたのか白状しろ』
『言ったら、キングに、殺される』
『じゃあ、俺に殺されるか?』
『俺、お前、殺す』
やっぱりダメか、プリンスは大きな剣を抜いて、俺に襲いかかってきた。
とうとう王子様の登場です(・∀・)
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